おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

探偵はBARにいる

2021-05-22 10:36:45 | 映画
「探偵はBARにいる」 2011年 日本


監督 橋本一
出演 大泉洋 松田龍平 小雪 西田敏行
   田口トモロヲ 波岡一喜 有薗芳記
   安藤玉恵 並樹史朗 竹下景子
   吉高由里子 カルメン・マキ
   石橋蓮司 松重豊 高嶋政伸

ストーリー
札幌・ススキノ。
この街の裏も表も知り尽くした“俺”(大泉洋)は、グータラな男・高田(松田龍平)を相棒に探偵稼業を営んでいる。
探偵は、いつものように行きつけのBAR“ケラーオオハタ”で相棒兼運転手の高田と酒を飲みながら、オセロに興じていた。
携帯電話を持たない彼との連絡手段は、もっぱら彼が入り浸るBARの黒電話。
ある夜、その黒電話に“コンドウキョウコ”と名乗る女からの奇妙な依頼が舞い込む。
職業柄、危険の匂いには敏感なはずが、簡単な依頼だと思い引き受け、翌日実行。
だがその直後に拉致され、雪に埋められ、半殺しの目に遭ってしまう。
怒りが収まらぬ探偵の元に、再び“コンドウキョウコ”から電話が入る。
その依頼を渋々こなし、自力での報復に動き出した探偵と高田は、知らず知らずのうちに事態の核心に触れていくことになる。
調べを進めていく探偵は、その過程で謎の美女沙織(小雪)と大物実業家・霧島(西田敏行)を巡る不可解な人間関係と陰謀の匂い渦巻く複数の事件に行き当たる。
そして、探偵は4つの殺人事件にぶつかる……。
果たして“コンドウキョウコ”は何を目論んでいるのか。
事件と事件のつながりは何なのか……。


寸評
映画が始まるといきなり主人公の探偵"俺"が逃亡しているシーン。
紙切れの札束で依頼された写真を買い取ろうとしたところ、それがバレてボコボコにされているのだ。
そこに突如、松田龍平の高田が助けにやってくるが、高田は滅茶苦茶強い。
冒頭のこのシーンは、主人公の探偵"俺"とその助手高田のキャラクターを強烈に印象付けるアクションシーンだ。
とにかくこの映画の面白さはこの二人、大泉洋演じる探偵と松田龍平演じる助手のキャラクターにつきる。
探偵はハードボイルドを気取っているが、どこか抜けていてハチャメチャな行動を繰り返す。
そのクセ、どうしても許せないことに対しては真剣に怒りをぶつける男だ。
相方の高田は北大農学部の助手でいながら空手道場の師範もやっているが、いつも眠ってばかりいる男である。
高田がクールで無口であるのに対し、探偵の方は饒舌でドジもするし、強そうな奴に追われると、ひたすら逃げまくるという人間くささを持っているという対比が魅力的だ。
そんな2人による絶妙な掛け合いが最大の見どころになっていて、思わず笑ってしまうやり取りが満載だ。
雪に埋められていた探偵が毛布を持ってきてくれと頼んだら、高田は畜産科のくさい牛の毛布を持ってくる。
探偵がそれをなじると「人間のものと言わなかったから」「そんなこと言わなくてもわかるだろ」・・・。
高田が運転するポンコツ車に、2人で優しく話しかけてエンジンをかけるシーンなども笑わせる。

アクションは本格的で、かなり壮絶なバイオレンスシーンもあるが、ミステリーとしての魅力には欠ける。
最後にどんでん返しがあるものの、事件の構図そのものはそれほど凝ったものではないし、探偵たちによる謎解きの過程もごく普通で、そのことが特別に印象的な作品ではない。
コンドウキョウコと名乗る女性が誰であるは最初から想像がつくし、その女性の目的もおおよその察しがつく。
ましてや導入部で、探偵のナレーションが「この電話はキョウコが死ぬまで続いた」と言っているから、そのへんがミステリーとしての弱さだと思うが、ハナからそんな路線は狙っていなかったのだろう。
滑稽さが表に出てきているが、案外とシリアスな場面をキッチリ描いているので、笑えるシーンとシリアスな場面のメリハリある展開が観客を引きつける。
そして前述のふたりのキャラとやり取りがスクリーンを覆い尽くすというのがこの映画の魅力になっていると思う。
それに納得すれば、この映画は十分に楽しめる内容だ。
こういう探偵ものは好みである。
脇役も魅力的で安藤玉恵のエロ全開なウェイトレスには大笑いしてしまう。

ラストはドンデン返しというほどのものではないが、スタイリッシュかつ哀愁漂う銃撃シーンで盛り上がりはある。
ラストに流れるカルメン・マキの歌が印象的で、「時には母のない子のように」のカルメン・マキを劇中で本当に久方ぶりに見ることができて懐かしかった。
懐かしさに浸っていたら、もひとつオマケシーンが・・・。
大泉洋はこんな役がよく似合う。
彼が示す偽名刺の名前が一瞬写り “桑畑三十郎” となっていたが、これは黒澤の「用心棒」の主人公の名前なので、探偵は依頼人を守るということの一種の表現だったのかな。
そうだとすれば、やけに楽屋落ち的なお遊びだなあ。