おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

大空港

2021-05-11 07:45:33 | 映画
「大空港」 1970年 アメリカ


監督 ジョージ・シートン
出演 バート・ランカスター
   ディーン・マーティン
   ジーン・セバーグ
   ジャクリーン・ビセット
   ジョージ・ケネディ
   ヘレン・ヘイズ

ストーリー
アメリカ中西部地方を襲った30年来の猛吹雪のため、リンカーン国際空港は痛烈な打撃をうけていた。
空港のジェネラル・マネージャーのベーカースフェルド(バート・ランカスター)は、トランス・グローバル航空旅客係のタニア(ジーン・セバーグ)の援助をうけ、空港の機能維持のため狂奔していた。
このとき着陸に失敗した大型ジェット旅客機が主要滑走路に胴体を横たえてしまった。
ベーカースフェルドは、事故の処理を航空会社の保安係主任パトローニ(ジョージ・ケネディ)に依頼した。
このような事件の過程で、ベーカースフェルドは、派手好きな妻シンディ(ダナ・ウィンター)のいる冷たい家庭からの慰めをタニアに求めるようになっていた。
一方、この空港からいましもボーイング707 機が飛び立とうとしていた。
機長のデマレスト(ディーン・マーティン)と副機長のハリス(バリー・ネルソン)は、ともにベテランのパイロットだったが、主要滑走路がふさがれていることを非常に心配していた。
デマレストはベーカースフェルドとは義理の兄弟であったが、強情な2人はそれぞれの立場を譲らず、事故機の処理について激しく言い合うのだった。
このデマレストには妻のサラ(バーバラ・ヘイル)がいるにもかかわらず、スチュワーデスのグエン(ジャクリーン・ビセット)と恋仲になり、彼女に子供までできてしまっていた。
そうこうしているうちに、いよいよローマ行きボーイング707 機が離陸することになった。
このとき、ベーカースフェルドとタニアが気づいたにもかかわらず、密航常習の老婦人クオンセット(ヘレン・ヘイズ)が、まんまとこれに乗り込んでしまった。
吹雪をついて機が離陸したあと、大変な問題が明るみに出た。


寸評
事故に巻き込まれた飛行機が問題を抱える空港に着陸を試みるというパニック映画でもあるのだが、空港で働く人々に起きる様々な人間模様を描いた作品である。
ここまでてんこ盛りにするかというぐらい色々な話が盛り込まれていて飽きることはない。
そうなってくると取り上げられるまず第一の話題が男女関係であることは言うまでもない。
空港のジェネラル・マネージャーのベーカースフェルドは仕事を理解しない妻と上手くいっていない。
ベーカースフェルドは緊急事態が発生すると家庭第一にはなれない対場にいて、そんな夫に妻は家庭を顧みないと不満を漏らすという日常でもよくあるパターンだ。
夫は仕事を理解する同僚の女性に癒しを覚え、妻は不満を癒してくれる男性に心が移るという夫婦関係は目新しいものではない。
男の僕から見ればジーン・セバーグのタニアはいい女で、ダナ・ウィンターのシンディは嫌な女ということになるということで、当然いい女役をやっているジーン・セバーグは得な役回となっている。

一方、ベーカースフェルドと義兄弟のデマレストもCAのグエンと出来ているのだが、妻のサラは夫を信頼しているし、デマレストも妻を簡単に捨てきれない気持ちを持っているというのが複雑なところだ。
グエンが妊娠していることを知って自分の気持ちの整理をつけるのだが、可愛そうなのは妻のサラだ。
事故機から出てきた乗務員を心配そうに迎えるサラに突き付けられた残酷な光景に対する結末は描かれていないのだが、シンディと違っていい奥さんだったと思われるサラの気持ちを考えると辛いものがある。
本当は残酷な場面なのにハッピーに描いているのは男目線過ぎると思ってしまう結末である。

色恋沙汰に反して骨太な男の奮闘を描くのが保安主任のパトローニの活躍である。
雪に車輪を埋まらせ身動きが出来ず滑走路をふさいでしまっている旅客機を何とか動かそうと活躍する。
荒くれ者だが根性と指導力、知識に富んだ頼れる男だ。
旅客機の構造にも詳しく、機長とやりあっても一歩も引かない豪快な男である。
最後は自ら操縦して脱出を果たすが、話の展開として成功するのは分かっていてもハラハラさせる。

滑稽シーンを持ち込んでいるのがクオンセットという密航常習者の老婦人だ。
彼女のとぼけた態度が観客の笑いを誘う。
やり手のタニアとの対決(?)は愉快で、思わず老婦人に肩入れをしてしまいそうになる。
彼女にかかれば、若い社員などは赤子の手をひねるようなもので、見事に密航を果たすことになる。
事前に披露していた手口でやり遂げるのは、映画としては王道的な描き方だ。
彼女が協力して犯行者のカバンを取り上げることに一度は成功するが、彼女が演じた演技が上手すぎて彼女に味方する乗客のために失敗してしまう。
そのあたりのやり取りも楽しませてくれる。
最後に無事旅客機が着陸できるかというスリルを持ち込んでいるのだが、これは当然の成り行きとなる。
ここに至って、群像劇とは言え物語は一杯あったなあという気持ちが湧いてくる。
なんともサービス精神旺盛な作品である。