おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

チャップリンの黄金狂時代

2021-05-31 08:15:57 | 映画
チャップリンの映画を3本ほど。

「チャップリンの黄金狂時代」 1925年 アメリカ


監督 チャールズ・チャップリン
出演 チャールズ・チャップリン
   ジョージア・ヘイル
   マック・スウェイン
   トム・マーレイ
   ヘンリー・バーグマン
   マルコム・ウェイト

ストーリー
アラスカの金鉱が発見されて人々が潮の様に金堀に赴いた頃の一挿話である。
一人ぼっちのチャーリーは吹雪に遭って小屋に駆け込む。
金を掘り当てたビッグ・ジムも避難する。
小屋にいたお尋ね者は食物を探しに出て役人に出会い、役人2人を殺してジムの金鉱を掘った。
吹雪がやんで帰って来たジムがお尋ね者に頭を殴られ記憶を失った。
金を奪ったお尋ね者は谷底に落ちて自然の裁きを受けた。
チャーリーはとある町にやって来て、酒場の踊り子ジョージアに一目惚れをしてしまう。
彼はカーティスの小屋の留守番を頼まれた。
彼は自分が町中での笑い者にされている事に気付かず、ジョージアが彼に好意を持っていると信じて大晦日の晩餐に彼女を招く約束をしたが、ジョージアは彼の事を忘れ酒場で騒いでいた。
ビッグ・ジムがこの町にさ迷って来て、小屋へ連れていってくれれば自分の金山へ行けると言ったが気狂いと思った人々は相手にしない。
チャーリーは彼に遭って小屋へ連れていってくれと言われジムを伴って小屋に行った。
金鉱を発見し千万長者になったジムとチャーリーは帰りの船に乗った。
チャーリーは船上でジョージアに邂逅した。悦び。


寸評
この映画には一般上映用のサイレント版など種々の版があるようなのだが、僕が見たのは音楽とナレーション的に音声が入っているもので、サイレント版とは受ける印象が違うかもしれない。
原題が「ゴールドラッシュ」、邦題が「チャップリンの黄金狂時代」なので、金に群がる人々の醜さを滑稽に描いた作品かと思っていたら、中身は大分違った。
チャプリンは雪山にもかかわらず、山高帽に窮屈な上着、だぶだぶのズボンにドタ靴、ちょび髭にステッキというトレードマークとなったおよそ雪山にはそぐわない扮装で登場するが、その姿を可笑しいと思わない。
それがチャプリンだと思って見ているからだ。
そこからいくつかのエピソードをつないで物語を進めているが、演じられているのはギャグのようなアクションで、無声映画では喜ばれたであろう喜劇映画としてうまく構成されている。

最初に描かれるのは金鉱を掘り当てようとしているビッグ・ジムとお尋ね者を交えたドタバタである。
ここでは、飢えに襲われながらも黄金を求めて狂奔する人々をチャップリンならではのギャグで面白おかしく描いている。
冒頭のチルクート峠を越える大勢の探掘者を映し出したシーンのエキストラはすごいと思わせる。
コンピューター処理が出来ず、人力に頼った時代のことで、あれだけの人数を動員するのは容易なことではなかったと思われる。
空腹のあまり、チャップリンが履いていた片方のドタ靴をゆでてかじりつき、靴ひもをスパゲティのように食べる愉快なシーンなども用意されている。
極度の飢餓感からチャプリンが鶏に見えてしまうシーンも可笑しいが、チャプリンが隠した筈のナイフが場面転換後に再び机の上に置かれている編集ミスも今となってはおかしく思える。。
お尋ね者はビッグ・ジョンの金を奪うが、天罰が下って谷底に落ちてしまうのはチャプリンの正義感だろう。

チャプリンが町の酒場にやって来てジョージアに巡り合うのだが、これが第2幕といった感じで描かれる。
ヒロインの登場で、金の話はどこへ行ったのかと言う展開である。
留守番を頼まれた山小屋にジョージアが訪ねてきて、そこでの食事シーンがあるのだが、チャプリンはロールパンにフォークを刺して足に見立てたダンスを披露する。
これが見事なフォーク裁きで、チャプリンの芸達者を垣間見た気がする。
それらの食事シーンを見ると、金の亡者を描いているより、飢えと言うものに焦点を当てているように感じる。

第3幕と言えるのがビッグ・ジョンと共に、発見していた金鉱場所を探しに行くパートである。
ここでの見せ場は、風吹に吹き飛ばされた山小屋が崖下におちそうなところで、辛うじて踏みとどまっている場面で繰り広げられるチャプリンとビッグ・ジョンのドタバタである。
チャプリン映画のドタバタは、今見るとそれほど楽しめるものではないが、サイレント映画時代では大いに楽しめたものだっただろうことは想像に難くない。
最後にハッピーエンドになり、バンザイ、バンザイで終わるのがチャプリン映画なのだろう。
ギャグ映画の古典として歴史的価値のある作品となっていると思う。