おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

地上最大のショウ

2021-05-26 08:03:31 | 映画
「地上最大のショウ」 1952年 アメリカ


監督 セシル・B・デミル
出演 チャールトン・ヘストン
   ベティ・ハットン
   ジェームズ・スチュワート
   コーネル・ワイルド
   ドロシー・ラムーア
   グロリア・グレアム

ストーリー
世界最大のサーカスとして知られているリングリング・ブラザース=バーナム・アンド・ベイリー一座に、新しく空中曲芸の名人セバスティアンが加わることになった。
この一座にはもともとホリーという空中曲芸のスターが人気を集めており、ホリーはやがて来るセバスティアンに中央のリングを譲ることを快く思わなかった。
ホリーを愛している座長のブラッドにしても同じ気持ちなのだが、サーカスのためには仕方のないことだった。
負けん気のホリーは芸の力でセバスティアンに勝とうと激しい稽古に励んだが、彼女の姿をいつも心配そうに見つめているのは道化師のバトンズだった。
彼は普段も扮装をおとしたことがなく謎の人物であった。
一座に加わったセバスティアンは芸にかけても女にかけても相当の腕前で、踊り子のフィリスなどは彼の関心を買おうとつとめた。
リングのホリーとセバスティアンの芸争いは1日ごとに激しくなり、とうとう無暴な芸を試みたセバスティアンは負傷してしまい、ホリーはまた中央のリングに返り咲いた。
この頃からホリーはセバスティアンに同情をよせるようになり、ブラッドから遠ざかった。
この様子を見た象使いの女エンジェルはかねてからの想いを果たそうとブラッドに言いよったが、これを嫉妬した象使いのクラウスは、ある日彼女を象に踏みつぶさせようとして、その場でクビになった。
恨みに思たクラウスによってサーカス列車は衝突事故を起こして多数の死傷者を出し、猛獣が逃げ出した。


寸評
これぞ娯楽作と叫びたくなるような作品で、ミュージカルを髣髴させる演出があったと思えば、スペクタクルあり、ロマンス有りで、2時間半という上映時間を堪能出来る。
僕が知るサーカス団と言えば、子供のころから存在している「木下大サーカス」で、今でも近くの緑地公園で時々1か月公演にやってきているのだが、この映画で描かれたようなスケールのものではない。
作品中のサーカス団はまるで遊園地のような遊戯施設も併設できるような規模を持った組織であるようだ。
1000人以上の人員を擁し、彼らが会場を設営していく様子はドキュメンタリー番組を見ているようで、映画のストーリーと離れて興味津々で見ることができるシーンとなっている。
出し物の紹介として描かれるショーの映像も楽しむことができ、サーカスとはこのようなものなのかという臨場感を生み出していて、これまたストーリーと離れて楽しめるシーンとして挿入されている。
小気味よい編集で本筋を上手い具合に補完している。

本筋はサーカスの花形である空中ブランコのトップを巡るホリーとセバスティアンの争いに加え、持て男のセバスティアンを巡る恋模様だ。
中央リングを巡る争いは文字通りの主軸だが、それを補う男女の絡みが色物として趣向を凝らして描かれる。
ホリーと座長のブラッドとは恋仲なのだが、ブラッドはサーカス団のことで頭がいっぱいでホリーにのめり込むことはなく、その事にホリーは不満である。
最後でこの立場が逆転する描き方は、常道的と言えばそれまでなのだがスカッとする描き方で面白い。

以前にセバスティアンと関係があったと思われる女性団員は何人かいて、象使いのエンジェルもその一人の様なのだが、ホリーに冷静なアドバイスを与える姿には嫉妬のようなものは感じ取れない。
登場する女性の中では、至極まともな女性に見える。
それに比べれば、この映画のヒロインともいえるホリーは、一時はセバスティアンになびくような所があってちょっと意外な描き方である。
まともと思えたエンジェルもブラッドに言い寄る一面が描かれ、この一団の男女関係は乱れているんじゃないのかと思ってしまう。
これにエンジェルに一方的な思いを寄せる象使いの男クラウスなども絡んで、ホリーとセバスティアンのトップ争いと違い、男女の関係を描いたパートは入り組んでいて、展開があっちへ行ったりこっちへ行ったりだ。
もともと男女の関係はそのようなものなのかもしれない。

そしてもう一つ、欲張り的に描かれるのがジェームズ・スチュアートの道化師を巡る物語である。
早い時期に彼の母親との対面場面が描かれ、母親によって彼が警察に追われている身であることが明かされる。
センチメンタルな描き方で締めくくられるが、彼が追われていると言う緊迫感は出ていない。
盛り込み過ぎるような演出からすれば、サスペンス要素としてもっと描き込んでも良かったのかもしれない。
クラウスが列車を襲う話も緊迫感は薄いから、サスペンス要素は意図的に削いでいるのかもしれない。
制作された時代を考慮すると、よくできた作品だと思うし、今では作られることのないだろうなと思わせる雰囲気を持った懐かしさを感じさせる作品となっている。