おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

小さな恋のメロディ

2021-05-25 07:25:02 | 映画
「小さな恋のメロディ」 1971年 イギリス


監督 ワリス・フセイン
出演 マーク・レスター
   ジャック・ワイルド
   トレイシー・ハイド
   シーラ・スティーフェル
   ジェームズ・コシンズ
   ロイ・キニア

ストーリー
舞台はイギリス。
伝統的な価値観を受け継ぐパブリック・スクールで、ささやかな対立がはじまっていた。
厳格な教えを説く教師たちや子供に干渉する親たちと、それらに従うことなくそれぞれの目的や楽しみを見つけようとする子供たち。
どちらかと言えば気の弱い11歳のダニエルもそんな生徒の一人だったが、同じ学校に通うメロディという少女と出会う。
二人はいつしか互いに惹かれあい、悩みを打ち明け、はじめて心を許す相手を見つけたと感じた。
純粋ゆえに恐れを知らない恋の激しさはやがて騒動を巻き起こし、旧弊な大人を狼狽させる。
事情を聴くこともなく押さえつけようとする大人たちに対し、二人は一つの望みを口にする。
それは「結婚したい」という驚くべきものだった。
「どうして結婚できないのか」と問うが当然親も教師もとりあわない。
ある日、教師が授業を始めようとすると教室はほとんどもぬけらの空であった。
自分達の手で2人の結婚式を挙げようと同級生らが集団でエスケープしたのである。


寸評
高校生や大学生の恋模様を描いた作品は数多くあるが、これはもっと若い小学生の淡い恋心を描いている。
マーク・レスターは白人特有の真っ白な肌と、愛くるしい顔立ちが可愛く日本でも大人気となり、チョコレートのテレビコマーシャルが評判だった。
ダニエルのマーク・レスター、メロディのトレイシー・ハイド、トムのジャック・ワイルドはその後の作品にも恵まれず役者をやめていったが、やめてからも友人としてずっと交流を持ち続けたということを聞き及ぶと何だかうれしくなってくる。
マーク・レスターはこの前にキャロル・リードの「オリバー!」を初め何本かの作品に出ていているのだが、あえて言えばこれ1本という感じ。
「小さな恋のメロディ」は映画史に燦然と輝く作品ではないが、ザ・ビー・ジーズの歌声と共に僕たちの世代の者にとっては何故か記憶に残る作品となっている。
僕はビートルズ世代だが、ビー・ジーズもまた青春時代のグループだった。

少年たちはイタズラ好きで、少女たちは何処の国でもそうなのだろうが男の子より少しおませである。
そろそろ異性を意識し始める年代で、誰にでもあった少年少女の頃を瑞々しく描いていて微笑ましい。
彼等の純真さを際立たせるように、登場する大人たちは少々だらしない。
ダニエル一家が食事する場面では、大人たちは卑猥な会話や税金をごまかす話などをしているし、ダニエルの母親は福祉活動をしているが訪問した家庭を誹謗中傷しているといった具合だ。
ダニエルは気の弱い11歳の男の子だが、メロディに恋い焦がれてしまう。
彼にとってはメロディは初恋の相手だ。
ちなみに僕の初恋の相手は小学4年生の時のクラスメイトのⅠさんだった。
この頃に子供たちは初恋を経験しているのかもしれない。
宿題をやってこなくてお仕置きを受けたダニエルが泣きべそで出てきた後、友達のトムを振り切ってメロディと初デートに出かける。
メロディが好きだと言いまくっているダニエルのときめきが伝わってくるし、好きだと言うのを人づてに最後に聞くのは嫌で直接最初に聞きたいというメロディの大人びた言葉に胸キュンとなってしまう。
二人は学校をさぼって遊園地や海岸で遊ぶが、見ている僕たちは完全に二人に乗り移ってしまっていて、あの頃の自分を重ね合わせている。
僕もこんな思い出を作っておけばよかったと・・・。

二人にとっての結婚とはずっと一緒に居たいということなのだが、大人たちに諭されても「適齢期まで待っているとつまらない大人になってしまう」と言う。
そして分からず屋で気取っているだけの大人たちへの子供たちの反乱が始まる。
子供たちの中でなぜ一人だけ教室に残っていて、正直に皆が集まっている場所を告げてしまうのか疑問に思うけれど、彼の作った爆弾が子供たちの勝利を宣言する。
二人が漕ぎ出すトロッコは草むらを突っ走っていくが、二人がこれから迎えるであろう社会の荒波を表しているように思えてくるので、思わず「いつまでも仲良く、頑張れよ!」と声をかけたくなる。