ゆうやの記憶力

ゆうやはレコーダーのように過去の記憶が残っています。
その時の状況が、詳細まで記憶に残っているようです。
その場でいた人の様子、髪型、服装、会話などかなり細かい部分まで覚えています。

その記憶力に驚くことが度々あります。
１０年以上前のことを言い出したこともありました。
「お母さん、Mさんのところでイチゴを出してもらったとき、どうしてミルクをいらないって言ったの？僕はミルクが欲しかったのに。」
突然、ゆうやはそのような話を始めたのですが、Mさんのマンションでイチゴを出して頂いたのはいつだったか～。
Mさんがマンションで住んでおられたのは１０年以上前のことです。

その頃のゆうやは、思ったことをすぐに言葉にできませんでした。
本当はミルクが欲しかったことを、１０年経過してやっと伝えることができたのです。

私たち大人が忘れている様々な事柄を、思い出しては話します。
せっかくゆうやが話をしても、残念ながら覚えていないので「ごめんね、忘れてしまったわ。」と返事するしかありません。
そんな時、ゆうやはとても残念そうな表情をします。
「どうして忘れてしまったの？」

幼いころ自分の思いを伝えられなかったことがずっと心に残っていたのでしょう。
赤ちゃんのころからの記憶が残っていたのですが（お腹の中にいたころの話もしていました）、最近になって言葉で表現していくとだんだん忘れてきているようです。
今では、３歳頃までのことは殆ど忘れています。

学校での勉強では、その記憶力は全く発揮できていません。
先生がおっしゃったダジャレや、ギャグは一言ももらさず覚えて帰ってきます。
でも、勉強したことはすっかり忘れているのです。
きれいに選別されています。
親としては、その記憶力が勉強で発揮できることを望んでいるのですが、なかなかそうはいかないようです。

癌の手術後、私の記憶力は非常に低下したように感じます。
全身麻酔の影響なのでしょうか。
すぐに忘れてしまうので、ゆうやに「覚えていてね。」とお願いしています。

「家の鍵をかけたかな？」
「お母さんは鍵をかけていたよ。」

「何を探していたかな？」
「手袋だよ。」

「あの人のお名前は？」
「山田さんだよ。」

学校の勉強には発揮できていないけれど、近頃、私には頼もしいゆうやの記憶力です。


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