蟋蟀庵便り

山野草、旅、昆虫、日常のつれづれなどに関するミニエッセイ。

周章蝋梅?!

2015年12月27日 | 季節の便り・花篇

 今年最後の「四字熟語辞典」をひもどく。
 
 夫婦で漢字パズルにハマり、もう15年以上我が家のテーブルからこの種の雑誌が消えたことがない。いろいろ試してきたが、一番のお気に入りは難問満載の「ナンパラ・スペシャル」と「超特大版漢字ナンクロ」。最初の頃は解答を送り商品をゲットすることを楽しんでいたが、全問正解で米沢牛の鋤焼肉をもらっ以来気持ちも吹っ切れ、今は脳の老化防止の為のチャレンジと割り切って暇潰ししている。
 解答の基本は四字熟語にある。元々漢語や漢詩が好きで、四字熟語は、それなりに知っているつもりでいた。会社時代には年頭の本部長挨拶に必ず四字熟語をまぶして、現場の所長達を狼狽えさせるのを楽しみにしていた。ささやかな悪戯である。
 しかし、漢字パズルにハマり、四字熟語辞典」なるものの存在を知って早速買い求め、自信は一気に崩壊した。収録されている数、実に5,600項目余り!僅か100項目やそこら知っているくらいでは、「四字熟語に詳しい」なんて言っていられない恐るべき数だった。還暦過ぎて浅学菲才・無知蒙昧を思い知らされた、貴重な愛蔵辞書である。
 愛読書のひとつに、有川浩(「ひろ」と呼んで、実は自衛隊オタクの女流作家)の「空飛ぶ広報室」に、自衛隊を譬える愉快な四字熟語がある。寸借して紹介すると「勇猛果敢・支離滅裂」(航空自衛隊)、「用意周到・動脈硬化」(陸上自衛隊)、「伝統墨守・唯我独尊」(海上自衛隊)、「高位高官・権限皆無」(統幕)、「優柔不断・本末転倒」(内局)……。
 笑っていられるうちはいいが、さて安倍政権が目論む「戦争が出来る国」の行方は如何?…肌が寒くなる現実である。

 閑話休題(それはさておき)。

 昨年より24日も早く、庭の蝋梅が綻んだ。師走終わり近いクリスマスの開花である。暖冬、此処に極まった。大慌てで開花を急いだ蝋梅に、思わず苦笑いする。
 例年になく師走感が乏しい年の納めである。この分では、初詣の雪の心配もなさそうだし、一番喜んでいるのは、三が日で200万人の参詣を待ち望む太宰府天満宮かもしれない。
 大渋滞と交通規制により、実は地元住民にとっては外出もままならぬ一番厄介な三日間なのだ。通常であれば、九州道太宰府インターから15分で着く天満宮が、この三が日は5時間掛かりの大旅行となる。朝早く車で出たら、暗くなるまで我が家に帰れないし、タクシーも救急車もこの時期には来てくれない。病に倒れないように、じっと「炬燵猫」を決め込んで、お節とお屠蘇とテレビと読書と転寝で、三が日が過ぎるのをひたすら耐えて待つしかないのだ。

 「周章狼狽」を「周章蝋梅」とふざけて、「四字熟語辞典」を引いた。
 ≪大いにあわてること。非常にあわててうろたえること。」「周章」「狼狽」はともにあわてる意。「狼」「狽」はともに伝説上の獣で、「狼」は前足が長くて後足が極端に短く。「狽」は前足が極端に短くて後足が長い。「狽」が「狼」の後ろに乗るようにして二頭は常に一緒に行動するとされ、離れると動けず倒れてしまうことから、うまくいかない意。慌てふためく意に用いる。「周章」に「狼狽」を添えて意味を強調する。
 類義語:右往左往、心慌意乱  対義語:意気自如、意気自若、神色自若、泰然自若≫

 この解説だけでも、知らない四字熟語が4つも現れる。言葉の世界は、実に深く広い。

 家内の治療の総仕上げの為に帰省を断ったから、娘たちも孫たちも帰ってこないジジババだけの三が日の「炬燵猫」。また漢字パズルで「閑中有閑」の日々を重ねることだろう。
 
 それもまた良し。メジロも庭先に訪れ始めたし、長閑な越年である。
                 (2015年12月:写真:綻び始めた蝋梅)