フジ(マメ科)つる性落葉木本
昨日、長年手入れしていない山に入り、旺盛な繁殖力で勢力を広げ、木々をなぎ倒しているフジの根元切りをしました。
腿の太さほどもあるフジ
何年の歳月が流れているのでしょうか?年輪を刻まないフジの切り口からは年数は分かりませんが推定20~30年は経っているものと思われます。
高木を左巻きに絡んで生長するフジ。
高木のイヌシデよりもフジが太くなり、左巻きに絡んでシデの樹冠を覆っています。このまま放置すれば間もなくイヌシデは引き倒されてしまうでしょう。
このフジの周りの赤松4本は、全て倒木となり朽ちかかっていました。アカマツに絡まって生長したフジがマツの樹冠を覆い枯らし、アカマツと一緒に共倒れしたものの地を這い、次の赤松に移って再びよじ登り生長して絞め殺すという戦略で、この地では4本の赤松が倒され大きなギャップができていました。
コナラに巻きついたフジ
身体をくゆらせ自由自在に回転しながら高木に絡んで生長す様は自然の芸術でもあり、切るか切らないで残すか悩むところです。曲線美がいいですね。
広葉樹の森やスギ植林地との境目、山の境界地にはフジが多く、繁殖を広げていました。山仕事師には、本来ならツル植物は敵と言う考えでツル切りをするのでしょうが、林業経営が成り立たない現状では、ツル植物が造りだす芸術性を楽しみながら、山仕事をしようと思いました。
モズ
柿の木に止まり「キィーキィー キチキチキチ」と甲高い鳴き声で縄張り宣言をしていたモズ。
賑やかなモズの高鳴きに移りゆく季節を感じた秋も終わり、小雪ちらつく初冬を迎えました。
木々の間から北風に吹かれて葉が散る様に見とれていると、落葉した庭木の枝先に異様な物が目に入りました。
モズがアマガエルを木の枝に刺した、モズのはやにえ
片方の足がとれてミイラ化したカエルの干物がぶら下がっている様はなんとも奇妙ですが、冬枯れ木に見られる冬の風物詩です。
*モズのはやにえとは、モズが捕えた獲物を木の枝に突き刺して保存することで、冬の食糧確保のためとか、縄張り宣言の役割とか言われていますが、はっきりしたことは分からず、本能に基づいた行為であるということが一般的な見解のようです。
師走入りしてから、朝の冷え込みは一段と厳しく、ため桶には薄氷が張り、アキアカネがその中で短い一生を終えていました。秋に交尾、産卵と子孫を残す仕事を終え、水の中で翅が宝石のように光り、最後の命の輝きを見せてくれた冬のアキアカネです。アキアカネの尾にはハエが止まり、命を共にしたようです。
夏、山で暮らしたアキアカネが里に下りてきて大空を舞い、モズはうるさいほど甲高い声で縄張りを主張していた秋に終わりを告げ、生き物たちにも厳しい冬がやってきました。
ケヤマウコギ(ウコギ科)
師走を迎えた今朝、氏神様を参拝し、坂を下る帰り道の山際で黒光りする物が目に入りました。目を凝らすとケヤマウコギの実でした。
何度も行き来した道なのに、これまでどうして目に入らなかったのだろうと見渡すと野原はすっかり冬枯れ、木々は落葉し、周りは見通しがよくなっていました。
ボタンヅルの葉が巻きついたケヤマウコギの実
5~6mmのやや扁平な果実が、球状に集まり黒紫色に輝いていました。一粒口に含むとウコギ科の独特の香りと甘みが強く、完熟していて酸味はほとんどありませんでした。ケヤマウコギの実を果実酒にすると薬効があるようです。
ケヤマウコギの写真を撮っていた足元では、野生のホオズキが間をおいて5本ほど自生していました。栽培ホウズキは、今では萼が脈だけになって透けていますが、野生種はしっかりオレンジ色の萼に包まれ、枯草の中で一際目だっていました。
栽培種のホウズキに比べると野生種は小さめですが、中の実は、はちきれんばかりの大きさでした。遊びに来た子どもたちが栽培ホオズキを美味しいと食べていた時のことを思いだし、一つ口にしてみました。苦みが強くとても食べられません。これぞ昔遊んだホオズキの味、タイムスリップした瞬間でした。
これらの植物の自生地は、荒廃地を2年前に整備したところですが、継続して草刈りなどの手入れが進まず、約1年間野放し状態でした。道のすぐ側とはいえ、鬱蒼とした茂みの中ではケヤマウコギの花もホオズキの花も見ることはできませんでしたが、師走に入り、冬枯れに映えていた草木の実との出会いに心躍りました。