大小迫 つむぎの家

よみがえれ!大小迫の里山。 人と人、人と自然をつなぎ、つむぐ「つむぎの家」

冬越しの木々 ~冬芽と葉痕~  その14

2012年02月24日 | 樹木

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オオカメノキの冬芽と葉痕

冬芽は、裸芽で毛が密生し、花芽は球形で両手をあげているのは葉芽、葉脈がはっきり見えます。葉痕は三角形であどけない顔に見えますね。オオカメノキのこんな姿に出会うととても幸せな気分になります。

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オオカメノキ(スイカズラ科)

オオカメノキは、葉の形が亀の甲羅に似ていることから名がついたそうです。ムシカリの別名もあり葉が虫に食われる「虫喰われ」ことが多いことに由来するとか。早春に咲く白い花は、まもなく雑木林を明るく華やかにしてくれることでしょう。

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ツノハシバミの冬芽

ツノハシバミの冬芽は、赤みを帯びた水滴形でつやがあり美しく、冬枯れにひときわ目立っています。

網目模様の雄花の基部には小さな雌花があり、小さいながらも真っ赤に咲く花が待ちどおしいですね。

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ツノハシバミ(カバノキ科)

ツノハシバミは、ハシバミの仲間で果実に角があるのでこの名があります。9月ごろに熟した果実は、ヘーゼルナッツのような味わいで、そのまま食べることができ、学校帰りの道草で友達とよく食べたことを思い出します。

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オノオレカンバの冬芽と葉痕

冬芽は、長だ円形で先がとがり、細かい毛が密生しています。葉痕は半円形でおとなしい顔に見えますね。

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オノオレカンバ(カバノキ科)

オノオレカンバの名は、斧が折れてしまうくらい硬い木であることに由来します。

樹皮が華々しくはがれ、まっすぐに伸びる樹形はよく目立ちます。やせ地に生育する木だそうですが、つむぎの家の裏山の一角10m四方の約3分の1がオノオレカンバという森がありました。

写真の木は胸高直径約60㎝ほどです。

昨日は久しぶりに雨らしい雨が降り、木々も大地もしっとりと生き生きしていました。冬木立に命の息吹を感じます。


冬越しの木々 ~冬芽と葉痕~  その13

2012年02月22日 | 樹木

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シナノキの冬芽と葉痕

冬芽は、ややいびつな形で2枚の芽鱗に包まれ、葉痕は、半円形で3個の維管束痕があります。

赤茶色の枝には、縦長の皮目が目立ちますね。

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シナノキ(シナノキ科)

シナノキの樹皮は、縦に浅く裂け「シナ皮」と呼ばれ、繊維が強く主にロープの材料とされてきました。また古くは、木の皮の繊維で布を織り衣類なども作られたそうです。

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シナノキの小枝

小枝を折ると樹皮がつながってはがれ、強靭な「シナ皮」を実感、はがした樹皮の下には、白い木肌が見えました。

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ヤマハンノキの冬芽と葉痕

ヤマハンノキの冬芽(葉芽)は、卵形で柄があり、枝から離れるようにつき、葉痕は、輪郭がはっきりしていて目玉があり、凛々しい顔つきですね。

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ヤマハンノキ(カバノキ科)

高木のため、昨年の果実や雌花序・雄花序がたくさんついていますが写真に撮ることができませんでした。

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マンサクの冬芽と葉痕

中心は、葉芽で柄があり、たくさんの毛でおおわれ、両側に球状の花芽があり、黄色い顔をのぞかせています。花芽の付け根に黒ずんだ小さな葉痕が見えます。

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マンサクの実

大きな口を開いたあんぐり表情は、昨年のマンサクの実です。その中には光沢のある黒い種が見えますね。種も温かな春を待っているのでしょうか?

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マンサク(マンサク科)

早春に山で一番早く花を咲かせて春の訪れを告げる木のために「まず咲く」がマンサクになったと言われています。

枝先には強風にも飛ばされず、いくつかのマンサクの実が残っています。

三寒四温の言葉には遠く、寒い毎日ですが、黄色い花芽をのぞかせているマンサクに、芽吹きの春を思い描いています。


綾里峠(九十九曲峠)-その2-

2012年02月21日 | 綾里の自然

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綾里と赤崎を隔てている峠付近はなだらかで、電波反射板からも尾根を通って峠にたどることができます。

写真下の雪筋が街道で、ここで合流し、峠に続きます。

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峠の頂上(429m)に標識が建っていました。平成8年の道の日に建立されたもので、根元が何やらカジられて窪んでいました。よく見ると、歯形が残っており、クマがかじった後でした。でも、この歯型はだいぶ古いようでした。

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標識のすぐ近くに、老杉の大木が立っていました。標識のなかった時代、旅人は峠のこの杉の根元で一休みしたものと思われますが、私たちが峠で間近に目にしたものは、樹皮が無残にも引き剥がされた状態の老杉でした。

不審に思ってよく観察してみると、根元のところが大きく削り取られていました。蜂蜜の大好きなクマの仕業と思われます。真新しい傷で、この老杉の根元にミツバチが巣を作り、その巣を襲い蜜をほじくりだしたクマの痕跡が残っていました。

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根元は、写真のように丸裸にされており、上のほうにはクマが登った爪痕もありました。環境省自然保護官(レンジャー)の久保井さんは、「クマは蜂蜜が大好物で、またここにミツバチが巣を作れば、やってくるでしょう」ということで、人の往来が途絶えているとはいえ、昨年の大震災後、道路が津波で遮断された時には、何人もの人がこの峠を通って大船渡の街に行き来したことを考えると、何らかの方策を立てる必要があると痛感しました。

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峠を赤崎側に下るところです。途中まで灌木の林の山腹をなだらかに横切っていきます。

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灌木の間からは、大船渡湾を隔てて氷上山が垣間見えます。

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雪の残る山肌を下りてくると、すぐに大きく曲がりくねった九十九折の路になりますが、昔日の人々が踏みしめた古道に落ち葉が積もり、柔らかく歩きやすい路でした。

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灌木の林から、30分ほど下ると杉の植林帯になります。途中、林道が走っており、その林道を横切って、また杉の植林帯に入りますが、その林道脇に、なにやら花が咲いたような樹がありました。

調べてみたら「シンジュ(神樹)の木」で、花のように見えたのは果実のかたまりでした。シンジュは中国原産で、かつて街路樹や養蚕用に植えられたそうで、天に届くほど背が高くなることから、天国の木→神樹と名付けられたそうですが、生育力が旺盛で野生化して各地に繁殖しているそうです。ニワウルシ(庭漆)の別名がありますが、ウルシ科ではないのでかぶれません。

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杉林を30分ほど下ってくると、赤崎側の大洞の登り口に着きます。ここには、標識がありました。ただ、舗装道路から少し入った所にあり、気を付けないと見過ごしてしまいそうです。

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大洞の登り口のすぐ近くには、国指定遺跡の大洞貝塚があります。標高31mの丘を中心に約20,000㎡が指定されております。この遺跡から200mほどの所まで、今回は津波が押し寄せ、近くの赤崎小学校が波に飲み込まれました。復興計画では、この遺跡の近く(南リアス線の線路を挟んだ山側)に、学校を再建する計画がでていますが、遺跡との折り合いでまだ決定されていないようです。

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大洞口から綾里に帰る途中、合足(あったり)という小さな入り江の集落があります。ここも、今回の津波で海岸の漁業施設が壊滅状態になりました(ただ、人的被害はありませんでした)。

この入江の西隣に、太平洋の東方に向いた小さな浜があります。波打ち際まで杉が植林されていますが、この杉林の中、海岸から30mの場所に、波で削られたように岩の先端が丸くすべすべした巨石(高さ1.2m、横幅1.2m、長さ3mほど)があります。明治三陸大津波で海底から運ばれてきた「津波石」だそうです。

今回の津波でも、この杉林の奥まで津波が押し寄せ、植林され育ったこれらの杉も、枝は枯れて赤くなっていました。

地元に帰ってきて、間もなく丸2年になろうとしていますが、まだまだ知らないことがいっぱいです。地域の文化や伝統を「まもり」自然と人、人と人を「つなぎ」・「つむいで」いこうということで「大小迫つむぎの家」を立ち上げ、進めてきていますが、もう少し地域の文化・生活について学んでいかなければとの思いを強くしています。


綾里街道(九十九曲峠) その1

2012年02月20日 | 綾里の自然

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綾里小学校裏手の橋のたもとに立て看板が立っています。昔、ここから川をさかのぼり不動滝路の途中から、九十九曲の峠を越えて隣村の赤崎村に至る唯一の陸路で、平泉藤原氏の時代には塩を運んだ街道であっことが記されています。

綾里側の入り口(不動滝神社:拝殿)から赤崎口(縄文遺跡で有名な大洞貝塚)までの約8kmの山路で、大正7年に就航した「綾里丸」や昭和8年に開通した県道ができるまで、この峠を越えて往来した古道です。

綾里に住みながら一度も通ったことが無かった路を、今回初めて歩いてみました。

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綾里側からの峠への上り口ですが、今では標識もなく、知らないと通り過ぎてしまいます。

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登り口から30分ほど荒れ果てた九十九曲の路を上ってくると、大きな老松が路の脇にそびえています。おそらくここで一休みし、これからの険路に気を引き締め、また、赤崎側から峠を越えてきてもう少しで綾里に着くという安堵の目印だったろうと、過日の旅人達の思いに浸りました。

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老松から10分ほど上ると、林道にぶつかり、その林道を100mほど進むと標識が立っていました。平成8年に「道の日(8月10日)が制定され、それを記念して平成12年に、この古道がここから整備されたそうです。

不動滝の鳥居脇から林道が造られており、今では車でこの登り口まで来れるようになっていることが分かりました。

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登り口からは、路が整備された跡がうかがえ、落葉した灌木越しに冬の日差しが心地よく背中を押してくれました。

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灌木の間からは、綾里の最高峰の大股山(614m)や眼下に綾里川ダムの堰堤が望めました。

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街道には雪も残っていましたが、尾根筋の古道は、かつての人や牛馬の往来の頻繁さを物語るかのように、広くなだらかに窪んでいます。

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林道登り口から15分も歩き振り返ると、樹木の間から綾里の街並みが展望できます。

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そして、古道南側、すぐ隣の山の峰の姿に見覚えがあり、「つむぎの家」の里山の峰が繋がっていたことに驚きました。

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「つむぎの家」の峰と「峠峰」の中間峰に東北電力の電波反射板があり、峠路の途中から行くことができたので寄ってみました。道は雪に覆われており、ところどころ鹿やテン、タヌキの足跡がついていましたが、反射板の近くは風が強く、私たちの足跡のみでした。

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でも、反射板からの眺望は絶景で、大船渡湾が一望でき、湾の向こうには、氷上山(875m)の秀麗が迎えてくれていました。この氷上山は陸前高田の町のシンボルで、震災で消滅した高田松原から眺めた姿と、ここから見る姿がダブって思わず手を合わせて祈りました。

強い北西の風が吹き付けていましたが、復興に向けて歩んでいる大船渡の街を見おろし、春が間近に来ていることを自然が知らせているようでした。


冬の不動滝

2012年02月19日 | 綾里の自然

綾里には「不動滝」という名瀑・名水があります。岩手名水20選にも指定されています。

今回、厳冬の滝を訪れてみました。

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不動滝は、雌滝、雄滝の二つの滝があり、二つの滝に挟まれた中央の岩窟に不動尊が祀られた祠(ほこら)があります。

滝に至る途中は、老木が鬱蒼としており、あたかも仙郷に入るがごとき趣きがあります。

上の写真は、途中の小さな滝ですが、あたかも左上の大木(樹齢300年以上のトチノキ)の根元から湧き出しているかの如くです。

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滝にたどり着いてまず目飛び込んできたのが、全面結氷した雄滝でした。

高さ15mの滝ですが、厳冬にはこのように凍てつき、白い柱の芸術を見せてくれます。

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一方、こちらは雌滝で、すぐ上の老杉(樹齢300年以上)の根元から湧き出しています。この湧き出している清水が、岩手の名水20選に指定されており、私たちもこの清水を汲んできてお茶やコーヒーに愛用しています。

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雌滝の湧水は枯れることなくこんこんと流れ出ていますが、この寒さで岩から浸み出た水が、大きな氷柱となって一面に垂れ下がっていました。

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中央の祠に、いつの時代からか、不動尊が祀ってあります。昔は、元朝参りや旧の端午の節句には参詣人で賑わったそうですが、今は、元朝参りに訪れる人も少なく、この厳冬の時期にはタヌキやテンなどの動物の足跡だけがうっすらと積もった雪道の参道に残っていました。

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それでも、綾里九十九曲峠の入り口近くの鳥居から不動滝までの参道は、石畳で整備されており、落ち葉の敷き詰められた渓谷の小道は、厳寒の季節にもかかわらず温かさがありました。

この不動滝は、海岸から4kmの近さにありますが、幽玄・仙郷の趣きがあり、四季折々の景観と美味しい名水を私たちに与えてくれています。