大小迫 つむぎの家

よみがえれ!大小迫の里山。 人と人、人と自然をつなぎ、つむぐ「つむぎの家」

復興祈願祭り「綾里魂」を開催

2014年03月05日 | 震災と復興

3月2日、被災地の復興や防災の伝承を目的に、復興祈願祭り「綾里魂」が綾姫ホールで開かれ、会場いっぱいの約500人の観客で埋め尽くされました。

まず初めに、綾里小の5・6年生が、詩の朗読を通して、未来の人々に津波の恐ろしさを伝え、かけがいのない命とふるさとを守り続けることを誓いました。そして、現在小学校にある大津波の被災を乗り越えてきた半鐘「忘れずの鐘」を児童一人ひとりが打ち鳴らし、震災の教訓を伝えました。

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その後、綾里中の生徒たちが、震災時の作文を披露し、「津波を決して忘れずに、理想の綾里を作り出したい!」と復興の担い手としての意気込みを力強く語ってくれました。

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綾里こども園の園児たちは、「おおふなトン」や「さんてつくん」などのマスコットキヤラクターと一緒にダンスを披露し、会場を盛り上げました。

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その他、地域の伝統芸能「野方七福神」の舞や、婦人会の舞踊、子どもたちによる大漁歌い込み等、地元の伝統芸能なども披露され賑やかな復興祭りになりました。


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後半は、被災地の復興支援として、新潟県佐渡市の「鼓動」や「鬼太鼓(おんでこ)」が特別出演され、素晴らしい演奏をご披露、郷土の芸能を通して互いに交流を深めました。

最後は、「日本一大きな、綾里大権現」が、ホールの駐車場で迫力のある舞を披露し、復興祈願祭が締めくくられました。

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「綾里魂」 未来の星を見つめて友とゆかん

この幟幡は、綾里中学校の生徒が、体育祭で掲げたスローガンだそうです。

東日本大震災からまもなく3年、まだ道半ばの復興ですが、「綾里魂」を胸に、住民が一丸となり、地域の活性化を目指し、復興に向けて歩んでいくことを確認しあった復興祈願祭りでした。


みちのく潮風トレイル ー綾里コースの検討ー

2014年02月26日 | 震災と復興

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前回(2/6)の大船渡地域の「みちのく潮風トレイル」のワークショップに続いて、24日に、綾里地区のルートを検討するためのワークショップを行い、地区の公民館長や有識者、地域住民が集い活発な話し合いがなされました。

「綾里峠九十九曲り」ルートはほぼ承認されたのですが、もうひとつ捨てがたい「綾里崎灯台」をルートに加えたいが、半島を一周すると長距離コースになり、見所を押さえた短縮ルートをどのようにとるか等の課題が残りました。

そこで、話し合ったルートを、実地検証するために昨日、環境省の自然保護官と有志で綾里灯台コースを歩いてみました。(上の写真は、出発前の確認をしているところです。)

綾里崎を周回する林道はおよそ22kmほどあり、2ヶ所の短縮コースを通れば、8kmほど短くなります。

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まず、第一のコース「垂水(たるみず)コース」を歩いてみました。

このコースは、かつて”垂水地区”に住んでいた人たちが歩いた生活道路でしたが、30年ほど前に無人化になり、通る人も殆んど無いとのことでした。コースの入口は、木材の搬出等で舗装されていましたが、100mほど入るとすぐに山道になっています。


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その山道を少し入ったところに祠がありました。こんもりと盛られた塚の上に、松の大木と夫婦杉の間にたたずんでいました。

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祠から、山道はなだらかに続いておりましたが、途中には倒木が横たわっていました。しかし、人が通れるように伐採されており、尾根道の峠までは、楽に辿ることができました。

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尾根から振り返ると、綾里の港や街の風景が飛び込んできました。

木の切り株に腰を下ろし、しばし絶景に見とれていました。

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目を転じると、綾里富士や大股山も一望できました。

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しかし、尾根から垂水側へ下り始めると杉木立となり、倒木が道を塞いでいる箇所が2~3ヶ所ありました。

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でも、杉木立を200mほど下ると、もう林道に出ました。1kmほどの山道でしたが、倒木を整理すれば、トレイルコースとしてお薦めできるのではないかと思いました。

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次は、立石山の尾根コースからの、気象庁大気観測所(旧ロケット観測所)分岐点の確認です。

分岐点から、ほんのちょっと下ると突然視界が開け、観測所の敷地に出ます。そこからの絶景に、一同しばし見とれていました。

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春の陽気で、やや視界が霞んでいますが、碁石岬や広田半島、そして唐桑半島までがはっきりと見渡せ、視界が良ければ牡鹿半島や金華山までもが一望できます。

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もう一方の短縮コースとして、野々前地区から立石山頂へ辿る直登路を調べてみたのですが、50年に渡って杉林の中で利用されておらず、杉の伐採後、道跡はかすかに残るものの、藪に遮られてしまって、尾根道にたどり着くことはできませんでした。

二つの短縮路コースを歩いてみて、綾里崎灯台から立石山尾根を辿り、垂水コースを通って綾里峠に向かうルートは、潮風トレイルの有望なコースとして推薦できるのではないかと思いました。


地域のシンボル”不動滝”

2014年02月08日 | 震災と復興

地域のシンボルとして、心のよりどころにもなっている”不動滝”が、長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」のルートに組み入れられることを願って、引き続き、不動滝の見どころを掘り下げてご紹介します。

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杉の木の根元から湧き出す女滝。

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沢沿いを流れ落ちる男滝。

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女滝と男滝からの水が集まる溪谷に掛かる、太鼓橋の風景。

天を射るようにそびえ立つ杉の間から見える太鼓橋は、真新しい時は、鮮やかな朱色に違和感を持ちましたが、今では自然に溶け合って桃源郷への橋渡しをしているようです。


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岩の上に根を張るトチノキの大木とその根元を流れる清らかな水。

長い間、風雨に耐え、威風堂々とたたずむトチノキの大木は、ご神木ともいえる威厳に満ちています。

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トチノキの巨木を支える大地や黒々とした岩肌、針葉樹の緑に紅葉したままのチドリノキ、冬の不動滝は、白い雪が、よりいっそう幽玄な世界へと誘ってくれます。

不動滝は、神秘に満ち溢れ、自然への畏敬の念を抱かせてくれる綾里地域のシンボル的存在です。


「みちのく潮風トレイル」の現地調査(綾里ルート)

2014年02月07日 | 震災と復興

青森から福島までの長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」の大船渡市内の候補路線について、住民を交えた現地調査が行われています。

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参加者は、ルートを歩き、地域の自然や歴史などの魅力を体感しながらワークショップを開き、路線決定に協力しています。

昨日は、綾里ルートの中で、昔の人たちの生活ルート「綾里峠」の調査に「つむぎの家」も参加しました。総勢15人の人たちが、三鉄の綾里駅に集まりミーティングのあと、峠を目指して出発しました。

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その中で、オプショナルルートとして「つむぎの家」の里山を案内しました。

参加者は、海岸から身近なところに「里山風景」が広がっていることに驚きの様子でした。

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「綾里峠」は赤崎町までのおよそ12kmの九十九折(つづらおり)の山道で、九十九曲峠と言われています。

峠の登り口の近くに「不動滝」があります。滝の祠(ほこら)に不動明王が祀(まつ)られており、立ち寄って参拝することにしました。

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入口の鳥居から、石畳を50mほど進むと、トチノキの大樹の根元に小滝がありました。海岸から直線距離にして2.5kmほどの所に、神秘的な溪谷が広がっています。

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さらに50mほど入ると、突然視界が広がり、トチノキと杉の大木の間から二つの滝が現れます。写真で指差している右側には高さ15m余りの男滝、そして中央から流れ落ちる女滝があります。この女滝のすぐ上に3本の杉の大木があり、その杉の根元からこんこんと清水が湧き出し、滝になっています(この清水が岩手名水20選の一つになっています)。

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不動滝をあとに、林道を1kmほど登ると、綾里峠九十九曲がりの入口があります。

昭和20年代まで利用されていた路は、牛馬が通れる広さで、人が二列になってもまだ余裕がありそうでした。

この峠路は、伊達藩13代藩主慶邦候が気仙巡視をしたとき通ったことでも知られています。


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途中、慶邦候の同行絵師が、伊達絵巻に描いた綾里村と綾里湾が見渡せるビューポイントらしき所に着きました。

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眼下に広がる綾里地区の街と綾里湾は、まさに絵巻に描かれた風景どおりで、200年の時代を経ても変わらぬ風情に一同感動しながら峠を目指して進みました。

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不動滝から1時間半ほどで、ようやく峠に到着。200年前の慶邦候巡視の時は、この峠から大船渡湾と綾里湾の双方が見渡せたそうですが、綾里側は杉林になっており視界は遮られていましたが、大船渡側は雑木林で、眼下に大船渡湾が広がっていました。

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赤崎側は、足首まで浸かる落ち葉のジュウタンを踏みしめての下り道が続いており、真冬の寒さと疲れを軽減してくれた調査歩行でした。

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4時間半に渡る峠越えのあと、赤崎町の漁村センターに到着し、各自感想を述べ合いました。

気仙の綾里地区には、まだまだ見所があり、それを地図上に示しながら、トレイルルートとしてどのコースを推薦していくかは、もう少し検討の余地がありますが、いにしえの綾里峠は、昔の人たちが踏みしめた跡がしっかり残っており、「みちのく潮風トレイル」のコースとして候補に挙げられるのではないかという感想が、参加した人たちから述べられていました。


京大生の聞き取り調査 ~里山暮らしと震災~

2013年08月10日 | 震災と復興

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昨日、環境省自然保護官の久保井さんと共に、京大准教授の深町さん、農学部学生の大崎さんと山本さんがつむぎの家にきました。

二人の学生は京大の4年生で深町准教授の研究室で環境デザイン学を学んでおり、卒論に三陸復興公園の環境を取り上げ、今秋に開催されるアジア国立公園会議で”みちのく潮風トレイル”や”震災と里山”をテーマに発表をするとのことで、その聞き取り調査と資料収集でつむぎの家にやってきました。

早速、母屋の囲炉裏を囲んで、震災時のことや震災後の里山での生活などについて、話を聞いています。

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聞き取り調査が一段落したところで、朝から降り続いていた雨も上がり、里地・里山の現地見学ということで、まず、外に出て、母屋とその周囲を見て回りました。


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穀長屋に入って、昔の人たちの食糧貯蔵の創意・工夫に感心しています。

「この”キッツ”の中にモミを貯蔵し、必要に応じて食べる分だけ精米しています」、「また、精米した保存米もこの”キッツ”で保管すれば長持ちします」。「お蔭で、あの大震災の時も食糧は不自由しませんでした。」との説明に、熱心に耳を傾け、里山での自然生活が災害にも強いことを感じ取っていました。


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里山見学では、「水は、上流から沢水をホースで引いて田や畑に使用しています。」

「このきれいな沢水が、震災時は地域の方々の飲料水として大変役立ちました。」との説明に、大崎さんが沢水に手を差し出し、「ワー、つめたい!」と驚いていました。


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整備された氏神コースを歩きながら、「ちょうどこの辺りが震災前に整備した所です。この里山が、地域の方々の避難場所としてとても役立ちました。」

「想像できないかもしれませんが、ここは、震災前は荒れ放題で歩ける状態ではありませんでした。」、「今は、地域の子どもたちの虫取りや自然観察の遊び場にもなっています」。「田んぼにはホタルが飛び交い、クワガタやカナブンなどの昆虫もたくさん見られますよ」

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氏神コースを歩きながら、足元の生き物に興味を示していた大崎さんが、とっさに捕まえたヤマアカガエル。

若い女性が、巧みに飛び跳ねるカエルを捕まえ、優しく握りしめるしぐさを見て嬉しく思いました。


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こちらには「キヌガサタケ」も顔を出していました。キノコの女王と言われるキヌガサタケを見るのは初めてのようで、皆さん興味津々でカメラを向けています。


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その後、氏神様前の高台にやってきて、街を見下ろしています。

震災時には、ここまで地域の人々が避難してきたこと、大津波で破壊された家屋の粉じんが、赤い煙となって火事のように迫ってきたことなど、当時の状況を真剣に聞き取っていました。

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里山にはいろいろな自然の恵みもいっぱいで、北限のお茶やツバキの木があちこちに見られます。

「お茶の木を見るのは初めて」と新芽を口に含み味わっている学生と久保井さん。


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今冬整備した杉山や、グリーンウェーブで子どもたちが植樹した山々の様子など、ざっと里山を一巡して見て回り母屋近くに戻ってきました。

短い時間での聞き取り調査と見聞でしたが、里山の大切さを感じたようです。今後、若い学生の二人がどのようにまとめてくれるのでしょうか。これからが楽しみです。