キシタバ(ヤガ科)
足音を避けるように草むらから飛出し、庭木に止まったキシタバ。
全体的には茶褐色ですが、後翅は黄色と暗褐色の鮮やかな模様があり、飛ぶと目立ちかざぐるまが回っているような動きに見えます。
カメラを向けると危険を感じたのか、電線の高さほどに舞い上がり、スズメと鉢合わせになりスズメの餌に・・・・。
と思ったら、後翅の一部を食われたようでスズメからのがれ道端に急降下してきました。
その後、前翅を飛行機の翼のように広げ、バランスをとりながら歩いて足早に茂みの中に消えていきました。
成虫で越冬したチョウが、春先に翅をぼろぼろにしながら命をつないでいる姿をよく見かけますが、後翅が欠損したこのキシタバも無事に生き延びてくれるでしょう。
昼間、チョウのように舞いあがり、人目には存在感を主張するように目につく模様のキシタバの翅、天敵の鳥たちにはどのように映るのでしょうか。
シロスジアオヨトウ(ヤガ科)
ビニールハウスの中で、収穫の終えたスイカ蔓の後片付けをしていると、ひとまとめにした蔓の間からひらりと飛び出してきた蛾、シロスジアオヨトウです。
名前のごとく、暗紫色の翅に緑の苔斑があり、中央には白い筋が走っている蛾です。
透明感のある翅に緑色の斑紋が生え、その美しさに見とれました。
身動きせずにジッとしていたので、手を伸べると上がってきました。でも不思議なことに、突然翅の色が一変し暗褐色に変わりました。
透明感のある始めの色は羽化したばかりだったのか?それとも周りの環境に合わせて色を変えたのか?身の危険を感じて変身したのか?一瞬の色変わりに驚きました。
正面から見ると恐い人面のようです。
幼虫は、タデ科の植物を好んで食べ、農作物にとっては害虫ですが、美しいものは美しいと農作業をしながら翅の神秘に瞑想した一時でした。
ミズカマキリ(タイコウチ科)
長屋で片付けをしていると、板戸に大きさが10㎝前後の生きものがいました。ナナフシ?いやミズカマキリに似ているがどうしてこんなところにと、疑問でした。
その後に分かったことですが、ミズカマキリは、天気の良い日には水中から飛び出していくこともあり、その飛行能力は、水生カメムシ類の中でも最も高く飛ぶことができると言うことです。水生昆虫の体は、水中での暮らしに適応した作りになっていて、水中での呼吸は、尾についている長い2本の鞘が呼吸管の役割をしているようです。
陸上では、体と同じくらい長い鞘を引きずって歩くさまは、少々不格好に見えます。
ミズカマキリは、カマキリと体型も顔つきもそっくりで、鎌の形をした前脚で獲物を待ち伏せして狩りをする姿は、まるでカマキリのようですが、水陸両方で暮らし、獲物(昆虫や小魚などの狩る肉食性)をとることができるとはすごい生きものですね。
細長い体に張り付くようについた翅が開き、体長10㎝もあるミズカマキリが飛翔する姿をぜひ目にしたいものです。
ルリボシカミキリ(カミキリムシ科)
散歩中、草むらから鮮やかな青が眼に飛び込んできました。澄んだ青色に黒紋のある美しいルリボシカミキリです。見慣れたカミキリムシですが、美しい色合いに息をのみ、心奪われた瞬間です。
手を差し出すと指に上ってきました。顔は思いのほか、強面で咬みつきそうですが、ゆっくりと歩き出しました。
今回、手にとって初めて気づいたのですが、触角の黒い節は、ブラシ状に毛が密生していました。
美しい昆虫の多くは、金属光沢の輝きが特徴でしたが、ルリボシカミキリは、微毛がびっしりと生えていて光沢は全くありません。
カミキリムシの多くは、生木を食害する害虫ですが、ルリボシカミキリは、幼虫・成虫ともブナやクルミなどの朽木を好んで食べるようです。
水の青さや空の青さにも負けない青い虫、ルリボシカミキリは、日本を代表する甲虫(日本固有種)にふさわしいカミキリムシです。出会って得をした気分にさせてくれました。