著者 : キム・ホヨン
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バスに乗って一人で帰る途中、ヨム女史はコンビニの店員達を思い浮かべた。うんざりするほど話を聞かない息子と抜け目なく賢い娘よりも最近は一緒に働く店員達が家族のようで気楽だ。このように言うと、娘はまた店員達に家族のように接したら、悪徳営業主とか正しくないとか問いただすだろうが、事実、それをどのように言うのだろうか。店員達に私を家族のように思ってくれということも、私が店員達を家族のように思って無理な仕事を頼むこともない。ヨム女史は今近くで頼りにすることができる人がコンビニの店員達なのでそう思うのだと自分を慰めた。
午前にコンビニを担当するオ女史は町で20年付き合いのある友達であり同じ教会の信徒でもある。実際彼女はヨム女史を実の姉のようになついていて、過去に一緒に苦楽を分かち合わなかっただろうか。午後のシヒョンは娘と同じでもあり、姪と同じでもあるのでいつも世話をしたくなる。働き始めて1年あまりになったけれど、時々計算を間違えることを除いては面倒一つ起こしたことがない。何よりも頻繁に人が入って辞めるコンビニのアルバイトを、1年間してくれたことだけでもありがたいほどだ。そんな点でオープン時期からコンビニの夜を担当するソンピルさんも彼女には一等功臣だ。50代半ばのソンピルさんは、2年前コンビニをオープンしてから常に辞める夜間アルバイトのせいで頭が痛かった時に、自ら現れた小さな福の塊だった。コンビニの近くの半地下に住んでいる、二人の子供を持つ家長の彼はいろいろタバコを買いに行っていた町の小父さんだった。そんな彼が夜間アルバイトの求人チラシを張るや否や、自分も働けるかと訊ねてきた。彼はちょうど失業状態で再就職が難しい状態なので夜間アルバイトでもして生活費を稼がなければならないと強調した。ヨム女史は家庭の切実さが感じられる彼に、既存の時給に500ウォンを上乗せしてやった。ちょうど新しく成立した政府が急に最低時給を上げたので、ソンピルさんは200万ウォンを超える月給を受け取ることができた。それから1年半、昼と夜が切り替わって一番大変なコンビニの夜間アルバイトの職責を彼が守ってくれた。
家族と同じだという感じはこんなことだ。社長の立場であれば、彼らがコンビニで働き続けることを望むのが正しい。それでも、就職準備生のシヒョンと再就職が目標のソンピルさんが意思を叶える機会を得たら、ヨム女史は喜んで彼らを送ろうと決心していた。それにもましてシヒョンには良い職を紹介してやったこともあった。彼女が一日も我慢できずに戻ってきて良かったものの。コンビニに戻ってきて「まだ社会人になる準備ができていないようです」と言いながら、再び働きたいと言っていたシヒョンの姿が鮮明だ。
週末のアルバイトは淑大の学生が埋めてくれて、週日の穴があく時間は教会の青年会の学生を投入した。短く一日二日小遣いを稼ぐことを選好するアルバイトの人力プールができると、ヨム女史が埋める仕事が減って、人を使う仕事が一番大変だという自営業者の悩みから一息つくことができるようになった。家族のような決まった店員達とまだ手垢がついていない大学生のアルバイトがヨム女史を社長と呼んでコンビニを守ってくれることが彼女はいつも不思議でありがたかった。
だから問題は一つだけだった。商売がダメなこと。
ヨム女史は教師の年金で自分の身一つは守って生きることができた。コンビニを作ったのは夫の遺産をどう整理するか悩んでいた時にコンビニを三つ運営している弟の助言を受け入れたからだった。弟は、コンビニでお金を稼ごうとしたら、売り場が最小3つにしなければならないと言いながら、拡張し続けることを強調したけれど、ヨム女史はここ一つだけ運営するので十分だった。自分は年金で生活し、売り場でコンビニの家族達の生計が解決されればそれで満足だ。初めからそうするすべを知らなかったけれど、今オ女史とソンピルさんはこのコンビニでなければ生計が成り立たない状況で、シヒョンも公務員試験準備に入るお金をここで作っているからだった。そのように生涯社長や自営業とは距離が遠かったヨム女史がコンビニ経営に神経を使うようになったのは、この事業の場が自分一人だけのためではなく、店員達の生活がかかった問題だということを悟ったからだった。
初めは案外商売がうまくいっていたが、6か月後に100メートルも離れない場所にそれぞれ違うブランドのコンビニが二つできて、その2か所が狂ったように競争し始めた。両方で互いに消えてなくなる勢いで攻撃的なイベントを仕掛け続けると、相対的に静かなヨム女史のコンビニは取り残されるように売り上げが減り今に至った。
ヨム女史はコンビニでお金をたくさん稼ぎたいという考えはなかった。ただ売り上げが減ってつぶれれば、店員達が行く所がなくなるのが心配になるだけだ。しかし、これほどまでに競争が激しいのに気づかず、いつまで持ちこたえることができるかもわからなかった。
翌日、ヨム女史は弁当の廃棄時間に合わせてコンビニに出てきてホームレスの男が屋外のテーブルを清掃している姿を目撃した。秋の夕方の肌寒さが感じられる間、男は頭を垂れたままタバコの吸い殻と紙コップ、ビール缶を一つ一つ拾っていた。鈍い動きで摘まんで持ち上げたゴミを分離収集箱に持っていって、慎重に調べてから分ける姿はかなり恰好良く見えた。その時シヒョンが弁当を持って出てきて屋外のテーブルに置いて男に合図した。振り返った男は無愛想に黙礼し、シヒョンも黙礼して戻ろうとして見守っているヨム女史とぴたっと目と目が合った。
「あらまあ、いらっしゃいました?」
「弁当を準備してあげるの?」
「ええ、清掃もあの方が手伝ってくださるから・・・ありがたいじゃないですか。」
シヒョンがにこっと笑ってコンビニの中に入っていき、ホームレスの男がヨム女史の視線に再び入ってきた。ホームレスの男も彼女を見てぺこっと挨拶してから弁当の蓋を開けた。ヨム女史は無言で彼の前に行って向き合って座った。弁当は電子レンジで温めたのか湯気が上がっていて、男はヨム女史が気になるようでしばらく間をおいていたが、彼女が手で食事をしなさいという仕草をするや箸を割った。そうしてジャンパーのポケットから緑色の瓶をとりだすのではないか。
焼酎が半分ぐらい入った緑色の瓶の蓋を取った男は片づけていて残った紙コップに酒を注いだ。ヨム女史はあえて制止せず、彼が晩酌と一緒に弁当を食べてしまうのを眺めた。たちまち、彼は彼女に遠慮せず食事に熱中した。
男が弁当と焼酎をことごとく平らげしまう頃、ヨム女史はコンビニに入って缶コーヒー二つをもって出てきた。再び向かい側に座って缶コーヒーを手渡すと男が非常に喜んだ。頭を下げてコーヒーを開けはちみつ水を飲むように飲み干した。ヨム女史も飲んだ。晩秋の冷たい気配が温かい缶コーヒーに溶ける気分だった。夏にはビールを飲んでいるお客が騒いだりタバコをやたらに吸ったり、苦情も入ってきてゴミもむやみに捨てて管理が大変だけれど、コンビニの屋外テーブルは確実に町の憩いの場であり、小さいゆとりのある場所だ。彼女が苦情や店員達の不平にもここをなくさない理由だった。
「天気が・・・寒いでしょう?」
幽霊が横で口笛でも吹いたようでヨム女史は驚いて男を見つめた。食事中一言もないので彼が会話をしたがらないことを感じた彼女は、名前を聞くことも諦めたところだった。しかし安否を聞いてやると再び興味が湧いた。