『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想177  二都物語

2015-07-27 00:51:51 | 小説(海外)

読書感想177  二都物語

著者      チャールズ・J.H.ディケンズ

生没年     1812年~1870年

出身地     英国ポーツマス

出版年     1859年

翻訳者     中野好夫

邦訳出版社   (株)新潮社  新潮文庫

邦訳出版年   1967年

 

感想

 小学校時代にダイジェスト版の「二都物語」を読んだことがあり、愛する人のためにその夫の身代わりに断頭台の露に消える男の物語に衝撃を受けた記憶がある。それで今回いい機会なので全部読んでみた。いろいろな人やいろいろな事件がどう関連していくのかわからないまま引っ張られ、最後で集中していろいろな謎が解き明かされていく。ダイジェスト版のほうがスピード感があり、主要人物に的が絞られていて一気に読ませる。

時代はフランス革命で、バスチーユの監獄に18年間囚われていた医師のマネット老人と、その娘のルーシーはイギリスで暮らしている。そしてフランスの侯爵でありながら家名を捨ててイギリスで自活しているチャールズ・ダーニーとルーシーは結婚する。もう一人ルーシーに想いを寄せる放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン。フランス革命のさなか、チャールズは侯爵家の家宰を救うために、フランスへ戻り、そこで父や叔父の過去の悪事によって告発される。チャールズとシドニーは他人の空似でよく似た容貌の持ち主だった。シドニーはルーシーのためにチャールズの身代わりとなって断頭台の露となる。

 シドニーとルーシーの関係がシドニーに命を投げ出させるほどのものかと思ってしまう。二人の関係はずいぶん淡々としているし、シドニーがルーシーのどこに惹かれているのかが、よくわからないからだ。あまりにも通俗的な美しい美貌と父親にたいする献身では、シドニーの失恋の痛手は軽くルーシーの代わりが見つかりそうに思える。シドニーが放蕩でダメな人間だと自分で言っているだけで、実際は有能な弁護士であることが随所にでてくる。シドニーの自己犠牲的な騎士道精神の根拠がわからない。たとえばスコットの「アイバンホー」だったら、騎士の名誉にかけて恩義のある女性のために戦うというのは騎士道精神ゆえだと納得できる。しかし、シドニーの自己犠牲は理解しがたい。小学校時代から持ち越した、シドニーという人物に対してもシドニーとルーシーとの関係も絵空事という印象だ。今回も気味が悪かったのが復讐の鬼と化している革命派の女が編み物にギロチンで殺される貴族の記録を編み込んでいく姿だ。復讐に燃える民衆も、革命という大義名分を得た狂乱の渦に飲み込まれている。

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読書感想176  あなただけは許せない

2015-07-25 17:36:52 | 小説(海外)

読書感想176  あなただけは許せない

著者      リチャード・パリッシュ

現住      アメリカ合衆国アリゾナ州ツーソン

職業      元検察官で現在は被告側弁護を担当する弁護士。

        本業の傍らリーガル・サスペンスを執筆。

出版年     1906年

出版社     (株)新潮社 新潮文庫

翻訳者     平田敬

 

☆感想☆☆

 アメリカの法律では、犯人を割り出す過程でほんの些細な捜査上の不備によって、犯人だとわかっている人物を起訴できず釈放せざるをえない。では被害者の母親は法律の制裁を逃れた加害者に復讐するのは是か非か。アメリカでは犯行現場で被害者の母親が加害者を射殺するのは正当防衛として扱われる。しかし、釈放された加害者に銃を向けるのは殺人罪に問われる。誰もが銃を持つことが許され、正当防衛で人を撃つことが許されるアメリカ社会だからこそ、こうしたテーマが出てくるのだろう。

 事件はアリゾナ州のソコッツデールの高級住宅地で起きた。離婚してボストンから移ってきたケイトは3歳の娘ジェニファーと、インデイアン居住地から引き取って養育者になっている16歳のドナと一緒に住んでいた。ドナは麻薬と売春でぼろぼろになっていた世界からケイトが救ったのだ。ケイトが若い弁護士のマイクとデートで留守にしているときに事件は起きた。ドナのヒモだったビッグ・ガン・ピートが二人の客を連れて忍び込んできたのだ。麻薬を打たれたドナは抵抗できずに強姦され、隣の部屋にいたジェニファーも強姦された。さらにジェニファーはHIVに感染した。犯人を割り出すためにドナの協力が不可欠だったが、ドナは恐れてビッグ・ガン・ピートの名前を出さない。事件後に養育者としての立場を放棄してドナとの関係を断ったケイトだが、犯人の名前を聞き出すためにドナに会い、修羅場の果てに聞き出すことができた。そして二人の強姦犯人も割り出したが、いざ裁判になると、養育者でないケイトが警察の協力者としてドナから聞き出した行為が違法とされ、犯人たちは無罪放免になってしまった。

 事件が始まる前はあまり面白くなかったが、事件が起きてからはぐいぐい引き込まれる展開だった。アメリカの法律は権力を持つ警察にタガをはめ、人権侵害を起こさないようにしている一方、犯罪者には抜け道が多く有利な点が多い。制度のもつ欠陥や特徴がよくわかっておもしろい小説だった。 

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四季折々648  梅雨の晴れ間の日和田山3

2015-07-21 20:03:21 | まち歩き

日和田山の麓に広がる巾着田。自然を楽しめる工夫が随所に見られる。

昔風の水車。がたこと動いている。

馬が2頭。おとなしい。

睡蓮の池。

「日脚がぼうとひろがれば

 つめたい西の風も吹き

 黒くいでたつむすめが二人

 接骨木藪をまはってくる

 けらを着 縄で胸をしぼって

 睡蓮の花のやうにわらひながら

 ふたりがこっちへあるいてくる」(宮沢賢治1896年~1933年)

「けら」は東北方言で蓑のこと。岩手の農婦をウクライナの舞手にたとえた作品とか。

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四季折々647  梅雨の晴れ間の日和田山2

2015-07-19 07:45:39 | まち歩き

日和田山から下って、ふもとの巾着田を歩く。

高麗川の流れ。

巾着田の案内板。

用水路。

手の入っていない田んぼと紫陽花。

まだ紫陽花が咲いている。

蓮と紫陽花。

「こころをばなににたとへん

 こころはあじさゐの花 

 ももいろに咲く日あれど

 うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて」(萩原朔太郎1886年~1942年)

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四季折々646  梅雨の晴れ間の日和田山1

2015-07-15 23:29:19 | まち歩き

7月初旬、梅雨の晴れ間に埼玉県日高市の日和田山に登る。

 

日高市ふるさとの森を歩く。

まず見晴らしの丘へ。

見晴らしの丘。丸太のベンチ。

あいにく夏の木々で視界が遮られる。

日和田山の頂上近くの神社。

霧の中の下界。

日和田山の頂上。

なにか宝塔のようなものがある。

雨が降り始めたのですぐ下山。

「夏山や一足づつに海見ゆる」(一茶1763年~1827年)

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