読書感想156 ゼルプの欺瞞
著者 ベルンハルト・シュリンク
出身地 ドイツ
出版年 1992年
本書受賞 ドイツ・ミステリ大賞受賞
邦訳出版年月 2002年10月
出版社 小学館
訳者 平野卿子
★感想★
私立探偵のゼルプは、行方不明の娘を探してほしいという依頼を受ける。その依頼主の父親は娘にも周りの人間にも気づかれないように探してほしいというので、ゼルブはいったん断るが、翌日5千マルクの金額が送られてきた。連絡方法はメッセージ電話だけで依頼主のザルガーの住所も、娘レオノーレ・ザルガーの住所もわからない。ゼルブはレオノーレが通っているハイデルベルク大学に向かい、交友関係を調べ始めるが、レオノーレの行方はわからない。とうとうゼルプはハイデルベルクの郊外にある州立精神病院に行くことにする。そこでレオノーレが3ヶ月前に入院し、先週4階から飛び降り自殺したと医師ヴェントから告げられる。しかし偶然出会った看護士によれば先週自殺事件はなかったという。
初めて写真を見たときのゼルプの「そうだ、おれはこんな娘が欲しかったんだ」という言葉に、行方不明の娘レオノーレに対する好意が溢れている。彼女を守ろうという動機が一つの軸になってゼルプを動かしていく。事件そのものは大掛かりな仕掛けのわりには犯人が詐欺的で卑小で殺された人たちが気の毒になる。いろいろな本筋と関係のないエピソードが盛沢山なので煩雑な印象だ。