『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳(韓国語→日本語)  不便なコンビニ(5)

2023-12-31 19:35:28 | 翻訳

不便なコンビニの画像

勉強目的に翻訳しているものです。営利目的はありません。

著者:キム・ホヨン

5)

 その晩、家でTVを見てうつらうつら寝ていたヨム女史は電話の音で目覚めた。液晶を見ると「息子」という単語が浮かんでいて時間は夜中の12時を過ぎたばかりだった。その2種類の組み合わせが与える負担に腹の中で虫唾が走る感じで電話を取った。やはり酒気むんむんの声が携帯の向こうから聞こえてきた。息子は彼女が釜山に行ってきたことも知らず、彼女の誕生日が明日であることも知らなかった。それにもかかわらず、ヨム女史を愛している、愛していても孝行ができず申し訳ないと言った。繰り返されたレパートリーの結末はやはり「コンビニの状態」についての存在論的な質問だった。ヨム女史はお前が口出しするなと言った。息子の答えはいつも、そのように商売がうまくいかないコンビニを整理して自分の事業に必要な資金を出せば、お母さんがもっと余裕ができ平穏に暮らせるという、浮き雲を捕まえる話だった。我慢できなくなったヨム女史は強く投げ飛ばした。

 「ミンシクや、家族に詐欺を働くんじゃない。」

 「お母さん。お母さんはなぜ僕を信じられないのですか?息子が本当にそんな人間なのか?」

 「歴史教師として定年になった私が一言言うと、国家であれ人であれ、したことを持って評価を受けるものなのよ。お前がしてきたことを思い浮かべて見なさい。お前はお前自身を信じることができるかい?」

 「お母さん、僕孤独だ。お姉さんもお母さんも、なぜ僕を孤独にするんだ?家族?一体なぜ?」

 「絡むなら電話切れ。」

 「お母さん。・・・」

 電話を切ってヨム女史は台所に向かった。心臓が油を跳ねる鉄板に上がったように苦しかった。痛みがじりじりする音を出して胸全体を圧迫してきた。彼女は冷蔵庫を開けて缶ビールを取ってごくごくあおった。胸の火を、心臓の苦痛を消すから気勢で飲んでごほごほ吐いた。酒に酔った息子の大ぼらを忘れるために酒を飲む自分の姿が情けなかった。

 どうしたらいいか本当にわからない。

 明瞭な判断力と決断力で今まで人生を無難に過ごしてきたと思った。しかしいつも壊れた秤が彼女に問題を引き起こした。コンビニを整理して息子の奴の事業か詐欺かを助けるとすれば、失うと予想する。それで何かが続くか?それは恐らく残った唯一の財産であるこの部屋二つマンションだろう。青坡洞の丘に20年間色あせたまま建っている古いマンションの3層。ヨム女史の最後の基盤まで吸い取って息子は失敗を止めるかもしれない。

 認めるのは嫌だが息子は馬鹿者に加えて詐欺師まがいだ。嫁もそれを知るようになったのか結婚後2年ぐらいであたふたと離婚して、その時は嫁の薄情な決定に怒ったけれど…結局過ちは大部分息子にあるということを認めざるを得なかった。離婚後3年間息子は残った財産までも全部はたいてみすぼらしい様になった。この時唯一助けることのできる母である私は、私は何をしているのだろうか?ソウル駅のホームレスの食事を心配しながら、家を出て酒に酔って苦労している息子のことは何故面倒を見ることができないのだろうか?

 ヨム女史はビールを全部空けた後、食卓ですぐに祈り始めた。できることは祈りと切に求めることだけだった。

 誕生日を迎えてヨム女史は娘と婿、そして限りなく幸福な孫娘ジュンヒと一緒だった。今回は娘一家が青坡洞へ来ず自分たちの町の住宅商業複合建物内の韓牛店に彼女を招待した。娘の東部二村洞ハイエコマンションとヨム女史の青坡洞のマンションは同じ龍山区にあるけれど、天と地ほどの隔たりがある。龍山区が今やソウルで江南3区の次に不動産が高い町になっているけれど、ヨム女史の青坡洞は依然として丘の小さいマンションと大学の下宿村がある庶民の町だ。娘と婿はいつも銀行が大家だと言って話をそらすけれど、抜け目なくお金を集めてジョンヒが中学校に行く頃になれば、江南のえり抜きの土地へ進軍することを目標にしている。ヨム女史は自分の保守的な経済観念とは違った、攻撃的で野心に満ちた財テクと生活が見えるのが、娘の能力なのか婿の才能なのか時々気がかりだったが、そのすべてが二人にシナジー効果として作用していることを理解するようになった。結婚した後で娘はだんだん娘のようでなく見え婿は更に姻戚のように見えた。幸いといえば、息子のように喧嘩して離婚するよりは、気が合って仲良く暮らす娘家族が、それだけで少なくとも心配にならないことだ。しかし、ヨム女史は会話の方向や肌合い、すべてが違った娘との関係が龍山から江南へ移る頃なら、その物理的距離でも更に遠くなるということをぼんやり感じていた。

 そんな渦中に韓牛なんて、高い店として評判のここを母の誕生日で、義母の誕生日だとこのように招くとは・・・率直に感動よりは負担が先立つのが事実だ。久しく娘家族はいつも淑大入口の豚カルビ店でヨム女史の誕生日を準備してきたからだ。遠慮がちに座っていたヨム女史は孫娘ジュンヒを見て笑みを浮かべた。勿論ジュンヒはスマートホンでユーチューブを見ようと、祖母の視線に神経をつかわないけれど、それでも良いのだ。婿と娘は自分たちなりに積立式とか保証式とか金融商品の話をしているので理解する方法がなく、早く韓牛が出てきて食べ物だけに集中したかった。今日は私の誕生日。楽しむ資格があるのは自分だけだと彼女は思った。

 食べ物が出てきた。ヨム女史は婿が焼いてくれる肉を自分の口に運ぶのに力を注いだ。娘はジョンヒの世話をして婿はせっせと肉を焼いた。とうとう娘がビールを注いだ後に乾杯してから待っていたように口を開いた。

 「お母さん、ジュンヒ、今回テコンドー教室に通うことにしたんですよ。」

 「女の子がテコンドーまで何でまた・・・。」

 「ええっ、学のある方がどうしてこうなのかしら?お母さん、テコンドーを習うのに男女の差がどこにあるの?ジュンヒはこの間男の子にぶたれて帰ってきたの。テコンドーを習って勝手に振る舞う野郎どもに立ち向かうとジュンヒがまず言ったの。」

 娘の言葉が正しい。ヨム女史は旧態依然とした自分の考えがきまり悪くて、どうしようもなく表情が固まった。婿が気を遣う間に娘がビールのコップを空けた。ヨム女史は急いでジュンヒを顧みて表情を緩めた。

 「ジュンヒ、テコンドー習いたいの?」

 「うん。」

 ジュンヒはユーチューブから目を離さずに答えた。

 「それでなんで、お母さんの町に良いテコンドー場があるそうよ。師範がとても良いらしいの。国家代表常備軍の経歴に若くて、気持ちも良くて・・・。ここ東村マムカフェでとても評判になっていたのよ。」

 「東村マムカフェ?」

 「東部二村洞の母親の集まり。インターネットにある。」

 「それで その師範はめちゃくちゃじゃないの?お金になる東部二村洞に道場を移すべき、青坡洞の横町で我慢していてどうするの。」

 「その師範もそうしようとするよ。ところがここが少し高くない。とにかくこの町に入ってくるのを待つことができなくて、ジュンヒをそこに送らなければならなくて、お母さんの助けが少し必要なようなの。」

 柔らかくて極まりない韓牛が突然歯にひっかかったようによく噛めなかった。ヨム女史は勿論ジョンヒと一緒の時間が嫌ではない。しかし、その時間を自分が選択できないという点が気にかかった。

 娘はテコンドー場とバイオリン教室の間の空いたジュンヒの2時間をヨム女史が世話してくれたらと望んだ。更に付け加えると教室のシャトルバスがはっきりしないのでバイオリン教室はヨム女史が直接バスに乗せて連れて行ってやらなければならなかった。引退した老人で哀れにも日課がなく見える祖母が孫娘の2時間あまりを世話してやるのが難しいことではない。しかしヨム女史にも日課がある。コンビニもいつでも点検しなければならず、教会の奉仕もしなければならず、痴呆予防のための英単語を毎日必死で勉強しなければならない。しかし、そんなヨム女史の日課は娘や婿の日課とかち合ったら後回しにされるのは当然のことになってしまう。

 ヨム女史は娘の頼みを引き受けざるを得なかった。謝礼の言及はなかったけれど、婿と娘がわかって処理してくれるだろうと信頼したまま二言もなく承諾した。


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四季折々1073  師走の相模原公園

2023-12-21 19:30:25 | まち歩き

日本列島に寒波が襲来している今日この頃、まだ神奈川県相模原市は小春日和。相模原公園も春の花が咲いている。

 

チューリップ。

パンジー、ビオラ。

宿根ネメシア。

メタセコイアの並木。

 

パンジー、ビオラ。

「玉の如き小春日和を授かりし」(松本たかし 1906年~1958年)

 
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読書感想335  また会う日まで

2023-12-15 20:19:40 | 小説(海外)

ジョン・アーヴィング John Irving: 最新の百科事典、ニュース ...の画像ジョン・アーヴィング

読書感想335  また会う日まで

著者   : ジョン・アーヴィング

生年   : 1942年

出身地  : アメリカ、ニューハンプシャー州

出版年  : 2004年

邦訳出版年: 2007年

邦訳出版社: (株)新潮社

訳者   : 小川高義

☆☆感想☆☆☆

幼いジャックは母のアリスに連れられて、アリスとジャックを捨てて逃げた父のウィリアムを追ってトロントから北欧の町々を巡る。ウィリアムは教会のオルガニストで、アリスは腕のいい刺青師。ウィリアムの体にはその土地の刺青師によってバッハやヘンデルの楽譜が彫り込まれている。父を追いかけることをあきらめたアリスはトロントに落ち着き、ジャックは父が働いていた元の女子校の小学校に入学する。父と恋人関係だった先生もいる。アリスはいろいろな人の助けで住まいを得て刺青の店を開き、ジャックも教育を受けることができている。ジャックはその女子校で演劇に目覚め、女装役を演じる。次の全寮制の男子中学校レディングではレスリングを始める。そのレスリングチームについてつぎのように述べている。

――劣等であることが、このチームの強みだった。劣等意識が熱っぽい努力と結びついて、チームの根性が出来上がっている。 このチームは負けをこわがらない。――

含蓄のある言葉だ。

30年後ジャックは再び父を探そうとかつて巡った北欧の町を訪れる。

母の言葉と幼児の記憶を確かめる旅になる。

自分のルーツ、父親は何年たっても大きな影を作っているからこそ、明らかにしたくなる気持ちは共感できる。それを子供の一生に課すのは周りが悪い。不思議な物語だが、学生時代の話が生き生きしていて面白い。


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映画雑感51 (2023年11月)

2023-12-06 11:54:55 | 映画

クレイジークルーズ

1)クレイジークルーズ

面白さ: ☆☆☆☆

制作: 2023年 日本       主演: 宮崎あおい   吉沢亮

コメント:地中海に向かう豪華客船が舞台。接客係のバトラーと売れない女優の乗客が殺人事件の犯人を捜すことになる。目撃者は彼ら以外にも5名いたのに無関係を装う。だいたい結末の予想がついて残酷なシーンがないことがわかるので楽しく見られる。

2)バッド・アンド・クレイジー

面白さ: ☆☆☆☆ 

制作: 2022年 韓国       主演: イ・ドンウク

コメント:出世とお金にしか関心のない刑事に謎の正義感に燃える男が攻撃してくる。謎の男は刑事以外には見えない。2重人格でまっとうな自分が駄目な自分を糺していく話。着想が面白かった。

3)毒戦

面白さ: ☆☆☆☆

制作: 2018年 韓国          主演: チョ・ジヌン

コメント:イ先生と名乗る麻薬王を捕えようとする刑事と、麻薬工場の爆破で生き延びた青年が協力するが・・・。わびしさが漂うドラマになっている。謎解きも面白い。

4)毒戦 believer2

面白さ:☆☆

制作: 2023年 韓国            主演:チョ・ジヌン

コメント:2018年の毒戦の続編。前作で完結しているのに、無理に作っている感じがする。刑事は同じ俳優だが、爆破で生き延びた青年は別な俳優になっている。すごみと哀愁が不足して異常な殺人と暴力で補おうとしている。


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欧米・アジア・日本のドラマ備忘録35 (2023年11月)

2023-12-06 11:11:56 | テレビドラマ

「飛狐外伝」キービジュアル

1)マン・ツー・マン 君だけのボディガード

面白さ: ☆☆☆

制作: 2017年韓国        主演: パク・ヘジン

コメント: 国情院の中の白蛇団と悪徳議員、財閥の癒着の証拠の仏像を探すために諜報員がアクション俳優のボディガードになり、モスクワへ。ソウルのアジトに敵も味方も集まってしまう。諜報員の秘密が暴かれそうでハラハラドキドキ。

2)さまよう刃

面白さ: ☆☆☆

制作: 2009年 日本      主演: 竹野内豊

コメント: 東野圭吾原作。未成年の殺人が情状酌量になる現状を告発した作品。一人娘がレイプされ殺された。殺したのは17歳の少年たち。父親は少年たちを一人残らず殺して復讐しようとする。未成年の殺人鬼が同情の余地が全くなく描かれている。

3)元カレは天才詐欺師ー38師機動隊ー

面白さ: ☆☆☆

制作: 2018年 韓国     主演: ソ・イングク

コメント: 悪徳税金滞納者から税金を取り立てるために、公務員が詐欺師と組む。いろいろな詐欺が展開する。

4)飛狐外伝  レガシーオブヒーロー

面白さ: ☆☆☆☆

制作: 2023年中国      主演: チン・ジュンジェ

コメント: 金庸の武侠小説が原作。毒を塗った剣で両親を失った赤ん坊は天下第一の剣客が親の仇と教えられて成長する。清の皇子の恋や子供など、いくつもの物語が絡まって来る。荒唐無稽なドラマなので見ていて疲れない。


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