『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想336  ①12番目のカード ②魔術師 ③影に潜む ④ビューティフル・ファミリー

2024-01-29 12:30:35 | 小説(海外)

ビューティフル・ファミリー12番目のカードの画像影に潜むの画像

①12番目のカード

著者       : ジェフリー・ディヴァー

生年       : 1950年

出身地      : アメリカ、シカゴ

出版年      : 2005年

邦訳出版年    : 2006年

邦訳出版社    : (株)文藝春秋

訳者       : 池田真紀子

コメント:

リンカーン・ライム・シリーズの第6作目にあたる。今回は単純な強姦未遂事件と考えられた事件が、実はアメリカの歴史をも揺るがす大事件に結びついているというスケールの大きい話になっている。ことの発端は博物館で先祖の解放奴隷チャールズ・シングルトンのことを調べていた、ハーレム高校に通うジェニーヴァが襲われそうになったことだ。機転をきかせて難を逃れたジェニーヴァはリンカーン・ライムやアメリア・サックスのチームの庇護下に入るが、以後も命を狙われ続ける。思いもつかない動機とアメリカの法律の有効性にびっくりした。

②魔術師

著者       : ジェフリー・ディヴァー

生年       : 1950年

出身地      : アメリカ、シカゴ

出版年      : 2003年

邦訳出版年    : 2004年

邦訳出版社    : (株)文藝春秋

訳者       : 池田真紀子

コメント:

リンカーン・ライム・シリーズの第5作目にあたる。大都市ニューヨークのあちこちで数時間おきに連続殺人事件が発生する。犯人は観客の目の前で脱出パフォーマンスを演じるかのように消えてしまう。ニューヨーク市警の顧問の科学捜査専門家のリンカーン・ライムと鑑識捜査官のアメリア・サックスのチームはプロのマジシャンの犯行と推測する。プロのマジシャン、イリュージョニスト(魔術師)を目指すカーラの協力を得ながら犯人を捜す。火を使うマジックを得意としていたエリック・ウィアーにたどり着く。しかし火がもとで妻を亡くしたエリックは何年も前から姿を消していた。2回3回とどんでん返しがあって犯人と動機にたどりつく。いつも思うが動機が俗っぽいお金目当てに落ち着くので犯罪者は犯罪者に過ぎないという著者の哲学が貫かれていると思う。

③影に潜む

著者      : ロバート・B・パーカー

生年      : 1932年

出身地     : アメリカ

出版年     : 2003年

邦訳出版年   : 2004年

邦訳出版社   : (株)早川書房

訳者      : 菊池光

コメント:

ジェッシイ・ストーン・シリーズの第4作にあたる。ジェッシイはパラダイスという町の警察署長。動機もつながりもない連続射殺事件が起こる。ジェッシイの恋人のアビイも犠牲になる。犯人たちの会話や行動とジェッシイたちの会話や行動が交互に出てくる。最初から読者には犯人が分かっている。その犯人にどうたどり着くかが犯人と捜査チームの頭脳戦である。ゆきずりの快楽殺人犯という設定になっている。どろどろした因縁はでてこないので意外とさっぱりしている。

④ビューティフル・ファミリー

著者     : トニー・パーソンズ

生年     : 1955年

出身地    : イギリス

出版年    : 2002年

邦訳出版年  : 2003年

邦訳出版社  : (株)河出書房新社

訳者     : 小田島恒志 小田島則子

コメント:

本書は「ビューティフル・ボーイ」の続編とか。「ビューティフル・ボーイ」は世界35か国で出版され、180万部を超えるベストセラーになっているという。本書で著者の作品を初めて読んだが、子供に対する愛情があふれているのに驚いた。離婚して子連れで再婚し、新しい家庭を作る大変さが描かれているが、一貫して離婚して離れ離れになった子供への配慮が第一に置かれている。実際には子供というのは二の次にされ、新しい配偶者が第一にされるのが通常だ。本書で描かれている父親は理想だし、なかなかいないからこそ、本書が人気があるのかもしれない。また日本人が出てくるが、礼儀正しいとかべた褒め状態でこれも驚いた。著者が現在日本人の女性と結婚しているそうだから、それも影響しているのかもしれない。


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読書感想335  また会う日まで

2023-12-15 20:19:40 | 小説(海外)

ジョン・アーヴィング John Irving: 最新の百科事典、ニュース ...の画像ジョン・アーヴィング

読書感想335  また会う日まで

著者   : ジョン・アーヴィング

生年   : 1942年

出身地  : アメリカ、ニューハンプシャー州

出版年  : 2004年

邦訳出版年: 2007年

邦訳出版社: (株)新潮社

訳者   : 小川高義

☆☆感想☆☆☆

幼いジャックは母のアリスに連れられて、アリスとジャックを捨てて逃げた父のウィリアムを追ってトロントから北欧の町々を巡る。ウィリアムは教会のオルガニストで、アリスは腕のいい刺青師。ウィリアムの体にはその土地の刺青師によってバッハやヘンデルの楽譜が彫り込まれている。父を追いかけることをあきらめたアリスはトロントに落ち着き、ジャックは父が働いていた元の女子校の小学校に入学する。父と恋人関係だった先生もいる。アリスはいろいろな人の助けで住まいを得て刺青の店を開き、ジャックも教育を受けることができている。ジャックはその女子校で演劇に目覚め、女装役を演じる。次の全寮制の男子中学校レディングではレスリングを始める。そのレスリングチームについてつぎのように述べている。

――劣等であることが、このチームの強みだった。劣等意識が熱っぽい努力と結びついて、チームの根性が出来上がっている。 このチームは負けをこわがらない。――

含蓄のある言葉だ。

30年後ジャックは再び父を探そうとかつて巡った北欧の町を訪れる。

母の言葉と幼児の記憶を確かめる旅になる。

自分のルーツ、父親は何年たっても大きな影を作っているからこそ、明らかにしたくなる気持ちは共感できる。それを子供の一生に課すのは周りが悪い。不思議な物語だが、学生時代の話が生き生きしていて面白い。


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読書感想331  英国のスパイ

2023-09-21 21:22:32 | 小説(海外)



読書感想331  英国のスパイ

著者       : ダニエル・シルヴァ

生年       : 1960年

出身地      : アメリカ、ミシガン州、カリフォルニア州

出版年      : 2015年

邦訳出版年    : 2016年

邦訳出版社    : (株)ハーパーコリンズ・ジャパン

訳者       : 山本やよい

☆☆☆感想☆

カリブ海でイギリスの元皇太子妃が乗るヨットのオーロラ号が爆破され、元皇太子妃は亡くなった。爆破される直前にボートに乗ってヨットから離れた男は、出航する間際にやとわれたシェフだった。男は1か月ほど前にカリブ海の島に来てそこの小さいレストランで働き始めたばかりだった。腕のいい男の評判はすぐに島中に広がった。そこで予定していたシェフが行方不明になったオーロラ号は男を雇ったのだ。元皇太子妃の暗殺した男を探すためにイギリスの情報機関M16の長官グレアム・シーモアはイスラエルの諜報機関「オフィス」の工作員ガブリエル・アロンに白羽の矢をたてた。アロンは美術修復師としての顔ももつ。シーモアはアロンを助けるパートナーとして英国特殊空挺部隊(SAS)の元隊員で今はコルシカ島のマフィアの部下になっているクリストファー・ケラーをつけることにする。ケラーは味方からの誤爆を受けてSASを止めた経歴が持っている。元皇太子妃を爆破した男はエイモン・クイン。次々と爆弾テロをくりかえすプロの殺し屋。

ロンドン、イタリア、コルシカ島、北アイルランド、ポルトガル、ドイツなどヨーロッパ中が舞台になってアロンとケラーはクインと爆弾テロをおっていく。

いろいろな紛争も登場人物の過去、現在の経歴として出てくるので、単純にスパイ小説としてスリルを楽しむというより、気が重くなる展開だった。


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読書感想330  ブラック&ホワイト

2023-09-15 20:40:26 | 小説(海外)

ジョージア州地図 - 旅行のとも、ZenTech

読書感想330  ブラック&ホワイト

著者      : カリン・スローター

生年      : 1971年

出身地     : アメリカ、ジョージア州

分野      : 推理小説

出版年     : 2013年

邦訳出版年   : 2019年

邦訳出版社   : (株)ハーパーコリンズ・ジャパン

訳者      : 鈴木美朋

☆☆☆感想☆☆

ジョージア州を舞台にした代表的なシリーズが二つある。ジョージア州の架空の郡グラント郡を舞台にしたグラント郡シリーズとトレント(アトランタ)シリーズ。前者は医師のサラ・リントンを主人公とするもので、後者はジョージア州捜査局特別捜査官ウィル・トレントを主人公とするものである。本作はアトランタ・シリーズに属している。しかし、サラ・リントンもウィル・トレントの恋人として出てきて両シリーズは舞台も登場人物も重なり合っている。

本書ではメイコン警察の刑事レナ・アダムスとその夫の白バイ警官のジャレド・ロングが自宅で襲われることから始まる。ウィル・トレントは麻薬のボスを突き止める潜入捜査でメイコンへ行っていてその事件に遭遇。サラの前夫は捜査中にパートナーのレナを助けるために命を落としている。ジャレドはその前夫の一人息子。サラのレナに向ける眼差しは厳しい。ウィルは潜入捜査のためにニセの経歴を作って前科もちの男になり、犯罪者たちに信用させ、麻薬のボスにたどりつこうとする。

やり手のレナは犯罪者たちの標的になる恐れはあるが、誰が何の目的かがわからない。地元のメイコン警察とジョージア州捜査局との捜査権を巡る縄張り争いもある。

ここでは女性の活躍が目につく。レナは勿論優秀な刑事だが、ウィルのパートナー、フェイス・ミッチェル、ウィルの上司のアマンダ・ワグナー、メイコン警察の警視デニーズ・ブランソンといった警察関係にサラや看護婦のカイラ・マーティンなど。

白人や黒人、ヒスパニックが入り混じっているのだろうが、何人か刑事が黒人とわかる描写があるが、ウィルもサラもレナも白人なのかよくわからない。わかれば一層面白くなっただろう。


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読書感想327  罪責の神々(上)(下)

2023-05-28 21:53:42 | 小説(海外)

undefinedの画像「リンカーン弁護士」の映画から。

著者     :  マイケル・コナリー

生年     :  1956年

出身地    :  アメリカ、フィアデルフィア

出版年    :  2013年

邦訳出版年  :  2017年

邦訳出版社  :  (株)講談社

訳者     :  古沢嘉道

 

★☆感想☆☆☆

映画にもテレビ・ドラマにもなっているリンカーン弁護士・シリーズの第5作。この作品はまだ映画にもドラマにもなっていない。

弁護士マイケル(ミッキー)・ハラーはアール・ブリックスの運転する高級車リンカーンの後部座席を事務所代わりにしている。アールは母親の住宅差し押さえ問題でうまく解決したハラーの弁護料の代わりに運転手として働いている。2番目の妻のローナ・テイラーはハラーのマネージャーで、ハラーの調査員のシスコと結婚している。3人の関係は非常に良好で固い絆で結ばれている。1番目の妻はマギーは文書整理担当検事補。2人の間の娘16歳のヘイリーは、飲酒運転癖のある依頼人をハラーが無罪にした直後に、ヘイリーの友人とその母親をまた飲酒運転で撥ねて殺してしまったことから、父親と絶縁してしまった。ハラーはヘイリーがサッカーをする姿を丘の上から双眼鏡で眺めるしかない。また、亡きハラーの父親の弁護士事務所の共同経営者だったリーガル・シーゲルは今は老人ホームにいるが、ハラーの相談相手である。リーガルが「罪責の神々」について語り、ハラーがそれに答える場面である。

 

 「きみの父親は、陪審員たちのことをいつも、『罪責の神々』と呼んでいた。おぼえているかね?」

 「ああ。連中が有罪か無罪かを決めるからだ。なにが言いたいんだ、リーガル?」

 「言いたいのは、われわれの暮らしのなかでの毎日を、そしてわれわれがするすべての動きに対して批判する人がおおぜいいるということだ。罪責の神々はおおぜいいるのだ。それをわざわざ増やす必要はない」

 わたしはうなずいたが、どうしても返事をせずにはおれなかった。

 「サンディ・パターソンと彼女の娘のケイティ」

 リーガルはわたしの返事に困惑している様子だった。彼はその名前に聞き覚えがなかった。わたしは、当然ながら、一生忘れないだろう。

 「ギャラガーが殺した母と娘だ。そのふたりがおれの罪責の神々だ」

 

「ミッキー。もしあなたが望むなら、殺人事件を手に入れられる」というローナからの電話でジゼル・デリンジャー殺人事件の容疑者アンドレ・ラコースの依頼を受けることにしたハマーは、ラコースがハマーを選んだ理由に驚く。殺されたジゼルが最高の弁護士として推薦していたのだ。ジゼルの写真を見たハマーはかつての依頼人の売春婦グロリア・デイトンであることに気づく。7年前にグロリアは売春婦から足を洗ってハワイに引っ越したはずだった。デジタル・ポン引きのラコースは無罪を主張し、グロリアには何者かの尾行がついていたこともわかってくる。グロリアとの最後の案件で麻薬密売人モイア逮捕にグロリアが一役買ったことを思い出していた。

善と悪の物語ではなく、悪の弁護をする弁護士も大変だ。ハラーの考えがうかがえる場面だ。

 

 殺人事件を頭に浮かべると、さまざまな理由で血のなかにスパークを起こしうる。第一にそしてなによりも、法の上で最悪の犯罪であり、それとともに弁護士という仕事の上で最高の褒美がやってくる。殺人事件容疑者の弁護をするためには刑事弁護というゲームのなかで最上位にいなければならない。殺人案件を手に入れるには、ゲームの最上位にいるというそれなりの評判を保っていなければならない。そしてそういうことすべてに加えて、金が存在する。殺人事件の弁護はー事件が裁判になろうとなるまいとにかかわらずー金がかかる。とても時間がかかるものだからだ。必要な金を払ってくれる顧客つきの殺人事件を手に入れれば、一年分の事務所維持費を稼げるようなものだ。

 


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