『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳(韓国語→日本語)不便なコンビニ(クレーマーの中のクレーマー)2-10

2024-03-31 10:54:43 | 翻訳

韓国語学習のための翻訳で営利目的はありません。

著者:キム・ホヨン

(10)

 新しい雇用主は10日後に新しいコンビニをオープンするから急いでくれと言った。新年を新しい職場で始めるのだ。シヒョンは心配半分、申し訳なさ半分で社長さんが来るのを待った。夕方の時間には、まるで退勤するように立ち寄って彼女に一日の状況を確認する社長さんが、これからはシヒョンではなく別の人に報告を受けなければならないだろう。それも申し訳なく感じている最中に社長さんが白い袋を持って入ってきた。

 「たい焼きを買って来たので一緒に食べよう。」

 シヒョンは白い袋の中に可愛く並んでいるたい焼きを一つ取った。社長さんの温かい心のようなたい焼きを思い切って頭からちぎって食べた。そして社長さんに一部始終を説明した。社長さんはたい焼きを食べないでただシヒョンの話を聞いた。全部聞いてしまった彼女はシヒョンを見ながらたい焼きをぼりぼりかじった。

 「よかったね。」

 「申し訳ありません。急に辞めると言って・・・。」

 「いいえ。あなたはとても長く働いているから、私が最後まで責任を持たなければならないのかと心配していたの。良かった、本当に。」

 「無理ににそう言われるのがわかっています。」

 「そう聞こえたの?」

 「はい。」

 「じゃ、本当のことを話す。そうでなければあなたを解雇しようと思った。あなたも知っているとおり、売り上げが思わしくないし。その上、オ女史やドッコさんも仕事をもっとしたいと言うので・・・あなたの業務時間を私やオ女史、ドッコさんが分担して給与支出を減らそうと思ったのよ。」

 「え?」

 「売り上げが減れば人を減らさなければならないので、オ女史もドッコさんもこれが唯一の生計手段なので。解雇することができないじゃない。それで、あなたはいずれにしても家で食べさせてもらっているし、試験も少し残っているじゃない。これで勉強に集中しなさいという口実で解雇できると思ったの。」

 「え・冗談ですよね?」

 「本当よ。」

 「冗談だとおっしゃってください。そうでなくても寂しいから。」

 「寂しくて悲しくても後も振り返らずに出ていくでしょう。出て行って別の所に行ってみてここが懐かしくなるでしょう。懐かしくて有難さも増すでしょう。そうじゃない?」

 「今もう有難いです!」

 シヒョンは目が潤むのを感じた。老練な社長さんは笑いながら、またたい焼きをぼりぼりかじった。シヒョンも涙をこらえて、たい焼きをかじった。甘い小豆の食感が彼女の舌をくすぐった。


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読書感想338 アリとニノ ユダの季節 世界地図の下書き 堤未果のショック・ドクトリン

2024-03-26 12:13:21 | 小説(日本)

アリとニノの画像世界地図の下書きユダの季節 (双葉文庫)Amazon.co.jp: 堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい ...の画像

①アリとニノ                               面白さ:☆☆☆☆

 著者:クルバン・サイード(エーレンフェルス  ヌッシムバウム)  

 生年・出身地:エルフリーデ・フォン・エーレンフェルス 1894年 オーストリア 

        レフ・ヌッシムバウム 1905年 アゼルバイジャンのバクー   

 出版年:1937年    邦訳出版年:2001年   邦訳出版社:(株)河出書房新社

 コメント:本書はウィーンで出版されベストセラーとなった。1971年にイギリス人がベルリンの古本屋で見つけてアメリカで出版、2000

      年に再度アメリカとドイツで復刻された。舞台は第一次世界大戦前後のカスピ海沿岸のアゼルバイジャンのバクー。そこには

      イスラム教徒やギリシャ正教徒のグルジア人やアルメニア人が暮らしている。グルジア人の豪商の娘ニノとイランの貴族でも

      あるアリとの純愛物語である。二人はロシアの支配下でロシアの学校に通い、近代的な教養を持っていた。戦争とロシア革命

      にザカフカス地方の民族は翻弄されていく。ロシアからトルコ、そして独立、またソビエトの下に。グルジアの踊りとか、イ

      ランのハーレムの暮らしとか、興味深い場面が多い。著者の一人のヌッシムバウムはイスラム教に改宗したユダヤ人でベルリ

      ンで学業を終えたジャーナリストだ。もう一人のエーレンフェルスはイスラム教に改宗した夫がいる、オリエント趣味の男爵

      夫人である。

②世界地図の下書き                           面白さ:☆☆☆

 著者:朝井リョウ

 生年・出身地:1989年   岐阜県

 出版年:2013年      出版社:(株)集英社

 コメント:児童養護施設「青葉おひさまの家」に預けらている小学校低学年4人と中学3年1人の物語。卒業生のためにランタンをつくって

      飛ばす。自分たちで成し遂げたことは生きる力となる。

③ユダの季節                             面白さ:☆☆☆

 著者:佐伯泰英

 生年・出身地:1942年  北九州市

 出版年:2005年    出版社:KKベストセラーズ

 コメント:スペインを舞台にした冒険小説。主人公はスペイン在住の日本人カメラマン。闘牛を取材している。時はフランコ独裁政権末

      期。妻子を殺された主人公はある日本人がその事件にからんでいることを知る。日本赤軍やETA(バスクの祖国と自由)や政権

      内部の権力闘争が絡んでくる。闘牛やスペインの風土の描写はいいが、スペインの政治がよくわからないこともあり、面白さ

      はいまいち。

④堤未果のショック・ドクトリン                   面白さ:☆☆☆

 著者:堤未果

 生年・出身地:東京都

 出版年:2023年      出版社:(株)幻冬舎

 コメント:ナオミ・クラインというカナダ人ジャーナリストの「ショック・ドクトリン」で著者は目覚めたという。

      ーショック・ドクトリンとは、テロや戦争、クーデターに自然災害、パンデミックや金融危機、食糧不足に気候変動など、シ

      ョッキングな事件が起きたとき、国民がパニックで思考停止している隙に、通常なら炎上するような新自由主義政策(規制緩

      和、民営化、社会保障切り捨ての三本柱)を猛スピードでねじ込んで、国や国民の大事な資産を合法的に略奪し、政府とお友

      達企業群が大儲けする手法です-

      日本の例としては、東日本大震災、コロナパンデミックが危機であり、マイナンバーカードやファイザー・ワクチンの問題点

      が列挙されている。プライバシーが危機にさらされているとか、なりすましが横行しているとか問題は多い。ファイザーのワ

      クチンは有効だったのか心配になってくる。政府と当該企業との癒着がはなはだしいようだ。きちんとワクチンについての総

      括を出すべきだ。


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翻訳(韓国語→日本語) 不便なコンビニ(クレーマーの中のクレーマー)2-9

2024-03-21 18:40:44 | 翻訳

韓国語学習のために翻訳しているもので営利目的はありません。

著者:キム・ホヨン

(9)

 ドッコさんは相変わらず1時間早く出て、コンビニの周辺を掃除し屋外テーブルを整理してから、シヒョンと引継ぎをした。彼は今完全に夜間業務に適応して、誰も彼を1か月前までソウル駅で…生活していたホームレスだと想像できないほど変わった。初月給で買って着ている分厚く白いジャンパーは、彼を恐ろしいヒグマからコーラの広告の北極熊に見えるようにし、どっしりした図体のように社長さんとシヒョンの信頼できる同僚になった。今も彼でなかったらクリスマスツリーをあのように速く組み立て立てることはできなかっただろう。何よりも良いことは、あのクレーマーの中のクレーマーがドッコさんと一勝負してからはコンビニにちょくちょく現れないという点だった。弱い人に非常識な振る舞いをして、通じない人に会うと尻尾を垂らす振る舞いさえ本当に非常識だった。

 ただオ女史だけが相変わらずドッコさんを邪魔な人と感じていた。彼女は出勤したシヒョンにドッコさんの欠点をあげつらって行くのが日常になっていた。もともと怒りやすい彼女がついに腹いせの対象を見つけたようだった。いずれにしてもドッコさんは関係ないようだった。一度オ女史がストレスを与えないか訊ねると、ドッコさんは首を振ってかすかに笑って見せた。

 「ストレスは・・・あれのようです。」

 「え?」 

 「あそこ酒の冷蔵庫・・・近すぎて・・・。」

 「酒を召し上がったらいけません!本当です!」

 思わず声が高くなった。きまり悪くなるシヒョンの気持ちを知っているのかドッコさんはうなずいて同意してくれた。

 「そうならないで対策を・・・立てようと思います。」 

 ドッコさんがそう言ってニヤッと笑った。シヒョンは安堵した。彼女は今ドッコさんがたくさん飲んで減ったカヌブラックを補充していた。彼を通して誰かを助けることの効果を体験し、自分にそんな能力が隠れていることに気づいた。彼女は今もユーチューブ映像を撮りながらドッコさんのことを考えた。彼に教えるように十分に、ゆっくりと、話して動いた。ひょっとすればホームレスのような人達を助ける方法はこのように少しのろく、ゆっくり近づくのではないだろうか?考えてみると社会でどんな絆もないと感じていて自発的なアウトサイダーである自分が、何か結びつく点を見つけるようになった点で、彼女もドッコさんに助けてもらったわけだった。

 ユーチューブと連動したアカウントにシヒョンにとって見慣れないメールが届いたのは、クリスマスイブの一日前だった。メールで自分がALWAYSコンビニ2か所を運営中だと明かした女性は一緒に仕事をしたいと自分の番号を残していた。

 「何だろう?スカウトの申し出?」

 一介のコンビニのアルバイトをスカウトするとは、とんでもない話じゃないか?そしてスカウトしたら、どんな理由でどんな提案をするということなのか?時給を千ウォン、更にくれるのだろうか、あるいは掛け持ちをしろというのか?爆竹が爆発するように頭の中で絶え間なく上がってくる質問を鎮めようとすれば、番号を押すしかなかった。小心なシヒョンは小さい期待と大きな心配を抱えたまま、メールを送った人に電話を掛けた。

 中年の落ち着いた女の声が電話を受けた。彼女はユーチューブでシヒョンのコンビニのレジスターの学び方を何回も見たとまず言葉をかけた後、自分は銅雀区でコンビニを2店運営している人間で、今回新しく更に1店開店するときに、担当者が必要だと言った。すなわちシヒョンにコンビニ一つ丸ごと責任を持つ店長として働いてくれという提案だった。面食らったシヒョンは何といったらよいかわからなく戸惑った。すると相手は一度コンビニに立ち寄って自分と会って信頼が行ったら一緒に働こうと言った。驚くことにコンビニはシヒョンの家からとても近い所で、彼女は明日退勤してお目にかかりましょうと答えた。

 うちから地下鉄1駅前の町のコンビニだった。社長はオ女史と同じくらい50代後半の小母さんだったが、口調と印象は申し訳ないけれどオ女史と正反対だった。落ち着いた口調と慈愛に満ちた微笑の彼女はコンビニを事業として、既に2店持っていて、新しくもう1店出すとき信頼できる店長が必要だと強調した。

 「私をなぜ信じてこんな提案をくださるのでしょうか?」

 シヒョンは用心深かった。生きてきてこんな提案どころか、他人に褒められることさえほとんどなかったので、用心深くするしかなかった。

 「ユーチューブの映像を見て気持ちが動きましたよ。あなたの口調や教え方が本人の持つ能力を誇示するよりは、学ぶ人をとても配慮していると感じたのです。」

 「そうだったのですか?」

 「先月新しく引き抜いたアルバイトは最初からあなたの映像を見て学びなさいと言うぐらいだから、私がすでに助けられたじゃないですか。これからそうじゃなくて直接私共の売り場の新入りに教育してくださったらいかがですか?新しい売り場の運営をしながらいろいろ出張教育をしてくださったらいいですが。勿論出張費は支払うつもりです。

 シヒョンは胸の震えを隠すために口を食いしばる自分自身を感じた。店長であり正社員だ。月給を聞いてしまって、びっくりして口が開いた。それにもまして新しく開店する売り場はシヒョンの家から5分の距離に過ぎなかった。コンビニのアルバイトとして家族や町の人と会う勇気はなかったけれど、店長として彼らに会うと思うときまり悪いどころか胸を張ることができると思った。

 彼女は昇進することにした。同じ業種で転職することにした。歩いて家に戻る道はクリスマスイブを誇るように活気が溢れていた。通りごとにカップルと赤く白い小品が溢れていた。今年も恋人のいないままおくるクリスマスだったが、彼女は全く寒くなかった。


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翻訳(韓国語→日本語)不便なコンビニ(クレーマーの中のクレーマー)2-8

2024-03-06 19:35:32 | 映画

韓国語学習のための翻訳で営利目的はありません。

著者:キム・ホヨン

(8)

 「こんにちは。ALWAYSコンビニのレジスター学習、2回目の時間です。」

 スマートホンでレジスターのモニターを写し、シヒョンはインターネット・ショッピングモールで購入した26,500ウォンのマイクに向かって落ち着いて話した。

 「先週はレジスターの構造と基礎的な使用法を覚えました。今日は複合決済と返品、交通カードの充電、ALWAYSポイント充電など2段階の内容に対して学んでみましょう。ではまず、複合決済、さあ、お客様が選んだ製品を持ってレジへ来ます。ところで、現金とカードで分けて決済したいと言ったら、慌てずにこのように進めれば大丈夫です。」

 彼女はスマートホンであらかじめレジスターの横に置いたチョコレートを写して撮影を続けた。

 「まず製品のバーコードを写して価格を確認します。3,200ウォンです。しかし、お客様が現金で3,000ウォン出して200ウォンはカードで決済すると言います。お客様が小銭を作りたくなくて、しばしばこのように要求する場合があるのです。ではレジスターの画面の受け取った金額に200ウォンを入れます。これがカード決済金額ですよ。その次にクレジットカードを入れた後に決済を押してください。押すと200ウォンがクレジットカードで決済されます。今余った3,000ウォンの金額が残るでしょう。3,000ウォンは現金で受け取って決済を押せば、完了するはずです。本当に簡単でしょう?」

 スマートホンの撮影を止めてしばらく息を整えたシヒョンは内容を見直した。自分の手とレジスター、商品だけが登場する画面に彼女の低い声がきちんきちんと複合決済を説明していた。初めてドッコさんを教える時のように、ゆっくり小さいことまで教えてあげるのが、機械音痴に負担を与えないようだった。彼女も機械音痴でアルバイトの初めにはレジスター扱いが苦手だったのが事実だ。今レジスターを扱うのは 朝飯前でその教え方を写すことも廃棄弁当をどかすほど難しくなかった。

 シヒョンは声の調子を整えてからもう一度撮影を始めた。

 「次は返品について教えましょう。返品は領収証業務を一旦クリックすればいいです・・・。」

 思ったより反響があった。勿論ユーチューブではたくさんのコンビニのレジスターの使用法の映像が上がってきていた。かわいい顔とレジスターを代わる代わる映してレジスターの使用法を教えるのか、美貌を自慢するのか曖昧なものから、絢爛たる映像と字幕と音楽でまるで芸能番組のように編集した作品もあった。それに比べるとシヒョンの映像はミニマリズムと言っても良いほど、単純で地味だが、かえってそれが使用法を実用的に覚えたい人にとって受け入れられたようだ。何よりもシヒョンはコンビニの初心者のアルバイトの質問にいちいち答えを書き入れた。

 人々はシヒョンのレジスター学習映像がゆっくりして良いと言う。使用法をゆっくり押さえるのがまるで小学生に教えるようで簡単だと言う。彼女の低く落ち着いた声が説明を強いなくて安心感を与えて良いというコメントもある。そんな時はシヒョンは思わず一人で声をあげたりした。どんなに聞いても眠いだけの自分の声が人々に安心感を与えるとは不思議だった。


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