『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想325  限界点

2023-03-31 15:29:34 | 小説(海外)

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読書感想325  限界点

著者       : ジェフリー・ディーヴァー

生年       : 1950年

出身地      : アメリカ、シカゴ

出版年      : 2010年

邦訳出版年    : 2015年

邦訳出版社    : (株)文藝春秋

訳者       : 土屋晃

★☆感想☆☆☆

本書の主人公は、連邦機関〈戦略警護部〉の警護官コルティ。犯人を追い詰めて逮捕するのではなく、犯人が殺そうとする対象者を守るのが任務だ。コルティの師匠にあたる警護官を拷問して情報を引き出した凄腕の〈調べ屋〉ヘンリー・ラヴィングがターゲットに選んだのはワシントンDCの刑事のライアン・ケスナ―。ラヴィングの犯行動機はわからないまま、ケスナ―一家を保護しなければならない。ワシントンDCの拘置所での保護にコルティは反対する。その理由は次のとおり。

「たしかに拘置すれば、調べ屋はまず外から侵入することはできない。それに、間違いなくスタッフも精査されている。ほかの調べ屋だったら、私も賛成しますよ。でも、今度の相手はヘンリー・ラヴィングだ。やつのやり口はわかっています。こちらでケスラー一家を囲い込んだら、おそらくやつは看守のひとりの弱みを見つけだす。看守のほとんどは若い男性です。私がラヴィングなら、目をつけるのは身重の妻がいる人間―それもできれば初産で、その彼女を訪ねる。看守はラヴィングの要求に一も二もなく従うでしょう。しかも、いったん所内にはいった家族には逃げる手段がない。ケスラー一家はおいつめられる。」それでケスラー一家を連邦機関〈戦略警護部〉の隠れ家に保護するため、ケスラー家に急行するがそこにラヴィングが襲撃をかけてくる。ケスラー一家はライアンと妻のジョアン、娘のアマンダ、ジョアンの妹のマーリー。コルティが活用したのがサインカッティング、発見した物理的痕跡をもとに人を追跡する技術だ。それで、ラヴィングの固有の逃走経路を割り出していく。ボードゲームは日本ではなじみがないが、アメリカでは人気のゲームのようだ。その大ファンのコルティはボードゲームにも言及しながらラヴィングの先を読もうとする頭脳戦を展開する。

リンカーン・ライムはニューヨーク、キャサリン・ダンスはカリフォルニア、コルティはワシントンDCとその周辺と、それぞれ地域も離れ、捜査方法も異なっているので雰囲気がずいぶん違う。しかし一週間で事件を解決するスタイルは共通している。


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四季折々1053  河津桜と陽光

2023-03-28 18:39:12 | まち歩き

ソメイヨシノの前に咲く河津桜と陽光。どちらもソメイヨシノよりピンクが濃い。

相模原市の橋本公園の河津桜。JR橋本駅の近くにある。

八王子市の長池公園に沿った陽光の街路樹。見ごたえがある。

「夕桜家ある人はとくかへる」(一茶 1763年~1827年)


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読書感想324  魔の山

2023-03-21 23:54:48 | 小説(海外)

ジェフリーディーヴァー 魔の山 に対する画像結果.サイズ: 181 x 185。ソース: shopping.yahoo.co.jp

読書感想324  魔の山

著者      :  ジェフリー・ディーヴァー

生年      :  1950年

出身地     :  アメリカ、シカゴ

出版年     :  2020年

邦訳出版社   :  (株)文藝春秋

邦訳出版年   :  2021年

訳者      :  池田真紀子

☆☆感想☆☆☆

本書は「懸賞金ハンター」コルター・ショウを主人公とするシリーズの第二弾。この「懸賞金ハンター」は、いわゆる「賞金稼ぎ」が逃走中の犯罪者を捕まえて成功報酬を得るのを生業とするのに対して、事件性と関係なく行方不明者を探し出すこと。報酬は行方不明者の家族や当局が出す懸賞金。ワシントン州の黒人教会やシナゴーグで立て続けに起きたヘイトクライム(ナチスの鉤十字などの落書き)や放火、発砲事件の容疑者の若者二人を探すのが今回の仕事。事件を調べるうちに、若者二人はヘイトクライムとは無関係で、発砲事件も先に教会関係者が発砲したのを受けて発砲したことが分かってくる。そして二人を探し出したところ、逃げられないと思った一人が崖から飛び降りて自殺した。ほとんど微罪で終わる事件なのになぜ自殺したのか。二人が待っていた迎えの自動車は近くの「オシリス財団」というカルトグループのものだった。自殺した若者はそこで研修を受けていた。ショウは自殺の原因を突き止めこれ以上の犠牲を出さないために山の中にあるカルト施設への潜入しようとする。

カルトについて、カルト専門家とショウとの会話で説明されている。

「カルトとは、そのメンバーや外部の人々に身体的・精神的な損害が及ぶ危険性をはらんだ集団、とでも言うかしら。

この基準は、マーガレット・シンガーの『ひとごとではないカルト』から借りたもの。この本によればカルトの条件は六つ。信者の生活環境を支配すること、報酬と罰の制度をもつこと、信者に無力感を抱かせること、恐怖を支配の手段とすること、指導者や集団に依存させること、信者の行動の矯正を目的に掲げていること。

共通の要素はまだあるわ。ほぼすべてのカルトは、一人の支配的な指導者が率いている。彼はー指導者はたいてい男性よー強烈な自尊心の持ち主で、敵を攻撃し、怒りを周囲にぶつけ、自分は正しいと信じて疑わず、助言や批判には耳を貸さず、猜疑心が異様に強く、崇拝と賛美を求める。」

カルトのカテゴリーについては次のように説明している。

「大多数は宗教に分類できる。一般的な宗教から派生したセクトだったり、まったくのでっち上げだったり。政治的カルトもある。匿名掲示板サイトやインターネットの普及で生まれたものね。あとはビジネス系のカルト。『簡単に儲ける方法を教えます』の類。そして、いまから挙げるのは本当に有害なタイプよ。KKKやアーリア民族軍のような人種差別集団。戦闘的分離主義、白人至上主義、精神を病んだ人物が率いるカルトーマンソン・ファミリーが代表例ね。黒魔術、悪魔崇拝、動物や人間の生け贄。想像を超えるようなカルトがたくさんあるのよ」

カルト的な犯罪者を扱ったディーヴァーの作品は今までにも数冊読んだ記憶がある。カルトは犯罪組織なので利己的で卑小な詐欺師集団として描かれている。鬱病やら認知症やらで苦しんでいる人がわらにもすがる思いでカルト集団に入り、そこで食い物にされていく。ひどい話だし、日本でも今ではカルトについての理解が一般的に広がってきているが、まだまだ足りない。


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読書感想323  アフガンの男(上)(下)

2023-03-14 22:28:46 | 小説(海外)

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読書感想322  アフガンの男(上)(下)

著者       : フレデリック・フォーサイス

生年       : 1938年

出身地      : 英国ケント州

出版年      : 2006年

邦訳出版年    : 2008年

邦訳出版社    : (株)角川書店

訳者       : 篠原慎

★☆感想☆☆☆

9・11以後のタリバン、アルカイダとの英米の情報当局を中心にした総力戦の中でのスパイの活躍を描いている。2005年4人の自爆テロ犯がロンドンで爆弾を爆発させた。4人の身元は割れて、所持品の中の4枚のレシートから、購入した携帯電話の番号を警察が割り出した。パキスタンのペシャワルでその携帯電話の一つが使われた。アルカイダの資金調達を担当していたエジプト人アルクールのものだった。無断で使用したのはタリバンがつけた護衛だった。母親の安否を訊ねたのだ。アルクールの隠れ家は急襲され、アルクールは死んだ。そこで押収した資料のなかでアル‐イスラという言葉が暗号なのではないか、新たなアルカイダの作戦を示唆するのではないかと、米国CIA(中央情報局)と英国SIS(秘密情報庁)は考えた。イスラム教ではマホメットが啓示を受けた旅を意味している。アルカイダの中にスパイを潜入させようと、引退した元SAS(特別空挺部隊)大佐のマイク・マーティンに白羽の矢をたてる。

現代では情報が戦争の勝敗を分ける。その情報の収集の仕方もPCを使って短期間に大量に処理する。無人偵察機が上空から対象者を監視し続ける。科学技術の力と物量で英米の情報当局にはとても太刀打ちできないというのが本書を読んだときの実感だ。それでも、人間の能力で、山岳の知識や経験、語学力や宗教・習慣の修得で絶体絶命の運命を切り開いていくのが本書の面白さでもある。アフガニスタン、パキスタン、アラビア半島、インドネシアの海域、アメリカの西海岸のカスケード山脈など広大な地域が舞台になっている。地理もよく分からず、名前もイスラムの名前でなじみがなく、登場人物も多く、ストーリーもいくつも重なっていて、読むのに苦労したが、どこまでが実在の人物か、創作した人物なのか、虚実入り混じって面白かった。


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