『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳(韓国語→日本語)不便なコンビニ(三角おにぎりの用途)3-4

2024-09-26 23:48:26 | 翻訳

不便なコンビニ(三角おにぎりの用途)3-4

韓国語学習のための翻訳で営利目的はありません。

著者:キム・ホヨン

 気が付くとドッコさんが倉庫のドアを開けたままソンスクを見下ろしていた。

 ドッコさんは静かに近づいてソンスクに手を差し出した。彼女は彼の手を掴んで立ち上がった。すぐにちり紙をひとつつみ掴んだ彼の手がソンスクの目前に入ってきた。ソンスクは彼がくれたちり紙で涙と鼻水をぬぐった。唾も拭いた。それでも中から何かがしきりに溢れ出るようで深呼吸をするように息を鳴らさなければならなかった。

 ドッコさんに連れ出されて外に出ると、明るい朝の日の光がコンビニのガラスを通っていた。ドッコさんは飲み物コーナーに行くとトウモロコシ髭茶を一つ持って来た。

 「落ち着く時はトウモロコシ・・・トウモロコシ髭茶いいです。」

 これがどんなポップコーンが飛び出す音なのか、困惑している彼女にドッコさんがトウモロコシ髭茶を取って渡した。ソンスクはしばらく彼女の前に置かれた好意を眺めていて結局受け取って飲んだ。何としてでもこみあげるものを抑えなければならなかった。彼女はトウモロコシ髭茶を真夏の生ビールのようにごくごくと飲んだ。

 渇きが収まってしまうとソンスクは自分を持て余して大騒ぎした。ドッコさんは待っていたようにそんな彼女の言葉に熱心に耳を傾けた。カウンターに立ったままでソンスクは、涙をぬぐいながら呆れた有様になった息子について、堰を切ったようにぶちまけ始めて、向き合っているドッコさんはうなずきながら彼女のうっぷんが混じった嘆きを聞いてくれた。 「到底理解できないです。そもそも安定した職場を放り出して、異常なことにはまって人生を無駄にしているでしょう? 株や映画製作、全部賭博のようなことじゃない?そもそも息子はどこから間違ったの?」

 「そのこと・・・まだ若いじゃないですか。」

 「今30ですよ。30!人の役目を果たせない30歳のプータローと違わないです。」

 「ところで息子さんと話を・・・してみましたか?」

 「私の言葉なんか聞きもしないです。うんざりして避けていますよ。数えきれないほど引きとめて話したんです。ところが、息子は私を無視して今は避けています。あいつには私はお手伝いでなければ下宿の主人に過ぎないんです!」

 「息子さんの話をまず・・・聞いてみてください。今見ると息子さんが、話を聞かないにしても・・・ソンスクさんも息子さんの話を・・・聞かないようです。」

 「何ですって?」

 「今私の話はよくお聞きになるけれど・・・息子さんの話も聞いてみてください。なぜ・・・会社を辞めたのか・・・なぜ株をしたのか・・・なぜ映画を作ったのか・・・そんなことです。」

 「聞いたら何ができるの!全部自分がしたいとおりにしてつぶれたのだから。今私に話もしないから。」

 「それでも話すことがあることは・・・あるじゃないですか?」

 「まあ・・・もう3年前ですね。会社を辞めると言うのでかんかんになっておこったのよ。大企業を頑張って入って、なぜ辞めるのと。」

 「なぜ辞めるのか、それで・・・わかりましたか?」

 「わからないんで。」

 「もう一度訊ねてみてください。なぜ・・・辞めるのか。なぜ・・・大変だったのか。小母さんの息子さんだけがわかっているじゃないですか。小母さんも息子さんのことだから・・・知らなければならないです。」

 「本当に辞めたのか頭ごなしに叱ったんです。どうして辞めたのか訊ねても言葉を濁すのでただ我慢していただけです。しかし、それで叫んでしまったのです。自分の父親が突然家出したようにそういうことです。」

 ソンスクはあたふたと自分の話をぶちまけた。同時に自分の目の縁が湿っていると感じて、男にその姿がどのように映っているか、やっと思い浮かんで努めて涙を我慢した。男は表情をぴくっとさせて、しばらく熱心に考えていて、急にソンスクに丁寧な微笑を向けた。

 「怖がっていらっしゃいますよね。息子さんが・・・お父さんのようになるかもしれない。」

 ソンスクの涙がぴたりと止まった。続けて我知らずに頷いた。

 「私の話はそのことです。息子だけは違って大きくなったと思っていたのに・・・私が間違って育てたようです・・・。私なりに最善を尽くしたのに息子は何もわかってくれなくて・・・毎日部屋でゲームばかりして・・・・ああ。」

 ドッコさんがもう一度ちり紙のかたまりをソンスクに渡した。彼女がそれで涙をぬぐっているとお客さんが入ってきた。ドッコさんは倉庫に向かい、ソンスクは態度を改めてからお客さんに応対するためにレジに向かった。

 お客さんが出て行きドッコさんが再びソンスクの前に来て立った。彼女は今少し気が静まったので彼に向かってぎこちない微笑を見せた。

 「私の話が多すぎたでしょう?あまりに手に負えなくて・・・どこも訴えるところもなくて・・・。ドッコさんが聞いてくれて少し気分がほぐれたようです。ありがとう。」

 「そのことです。」

 「何がですか?」

 「聞いてあげれば気分がほぐれます。」

 ソンスクは目をまん丸く開けて前に立つ男の言葉を傾聴した。

 「息子さんの話も聞いてあげてください。そうすれば・・・気分がほぐれます。少しでも。」

 やっとソンスクは自分が一度も息子の話をほとんど聞いてやらなかったことに気づいた。いつも息子が自分の望むとおりに生きることだけ望んで、模範生として過ごしていた息子がどんな悩みや苦しみで母親が敷いたレールから離脱したのかは聞かなかった。いつも息子の脱線について問い質すことに忙しく、その理由なんかは聞いている余裕がなかった。

 「このこと・・・。」

 ドッコさんがすぐに何かをカウンターに置いた。三角おにぎりツープラスワンセットだった。疑わしい表情で眺めるソンスクにドッコさんが歯をむきだして笑った。

 「息子さんに持って行ってあげてください。」

 「息子にですか?・・・どうして?」

 「チャモンがそうなんですが・・・ゲームをしながら・・・三角おにぎり・・・食べるのがいいと言うんです。息子さんのゲームの時・・・あげてください。」

 無言でドッコさんが置いた三角おにぎりを見下ろすソンスクの耳にドッコさんのつぶやきが聞こえてきた。

 「でも三角おにぎりだけあげては・・・駄目です。手紙・・・一緒にあげてください。」

 ソンスクが頭をあげてドッコさんを眺めた。ドッコさんがソンスクをまっすぐに見ていたが、彼女にはそんな彼が本当にゴールデンレトリバーのように見えた。

 「息子さん・・・しばらく聞いてあげられなかった、今聞いてあげるつもりだから、話してくれと・・・手紙に書いてください。そして・・・そこに三角おにぎり・・・載せておきます。」

 ソンスクはドッコさんが渡した三角おにぎりをもう一度見下ろしながら唇をかみしめた。ドッコさんがズボンの財布からくちゃくちゃの千ウォン紙幣3枚を取り出した。

 「私のおごりです。はやく・・・読み取ってください。」

 ソンスクは上司の指示に従うようにドッコさんが指示するまま三角おにぎりにバーコード読み取り機を当てた。ぴい、音とともに「決済が完了しました」という機械音が聞こえると、彼女の頭の中を複雑に行き来していた不安感が完了した気分だった。人の代わりに犬を信じるソンスクは、善良な大きな犬のように見えるドッコさんの言葉にもう一度頷いた。

 ドッコさんが歯をむきだしながら笑ってコンビニを出て行った。ちりん。ベルが鳴った瞬間ソンスクは自動反射のように三角おにぎりの下に置く手紙の内容が浮かび始めた。


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翻訳(韓国語→日本語)不便なコンビニ(三角おにぎりの用途)3-3

2024-08-26 19:06:15 | 翻訳

※韓国語学習のための翻訳で営利目的はありません※

著者:キム・ホヨン

 

不便なコンビニ(三角おにぎりの用途)3-3

 

 それから、不思議なことにドッコさんと目が合うと、理解しがたい気持ちとうっとうしい感じは消えて、妙な安堵感が生れ始めた。しかし、それがソンスクさんだけではなかったのか、コンビニの午前は少しずつ日差しの方向が変わるように、その雰囲気も変わっていった。

 コンビニは高いと言って万屋やスーパーしか出入りしない町のお婆さん達が近所に寄るようにガラスのドアを開けて入ってきてうろうろし始めた。お婆さん達はコンビニのあちこちで掃除しているドッコさんの背中を突っついてあれこれ訊ね、彼はお婆さん達を引っ張って陳列棚の間を行ったり来たりしながら、ツープラスワン、あるいはワンプラスワンの商品を紹介した。

 「これやこれ・・・すれば、ほ、本当に安く・・・持ち帰れるのです。」

 「それで、こう買えば、スーパーよりも安いだろうね。」

 「コンビニがただ高いのではないし。この小父さんがこういうものを全部教えてくれるから、とてもいい。」

 「私達は良く見えないし、こんなものは読めない。一つ買えば一つ余計にくれるって、どうしてわかるのかい、どうしたら信じられるのかい?」

 ドッコさんはお婆さん達が選んだ商品を籠ごとに持ってきて、ソンスクの前で下ろして、歯を見せて笑った。その姿がまるでボールを取ってきてお八つをねだるゴールデンレトリバーを連想させた。しかし、彼はソンスクが支払い計算を終えた籠一杯の商品を持って、そのままお婆さん達と出かけるではないか?しばらくして籠を持って戻ってきた彼に理由を尋ねると、お婆さん達が持っていくには重く見えて、持って行ってあげたというではないか!これは何の軒先配達システムなのか?ソンスクは気づいたけれど、これ以降ドッコさんの敬老配達サービスのおかげで生まれたお得意先が午前の売上げをかなり伸ばしてくれた。休みになると、お婆さん達は世話をしている孫を買い物籠のようにぶらさげて通って来た。そんな子供達も飲み物コーナーでお婆さん達にお小遣いを出させる才能があった。

 「午前の売上げが伸びている。どうしたのだろう?」

 お姉さん社長の言葉にソンスクは自分が午前にどんなに頑張って販売に邁進しているかと騒ぎ立てた。ドッコさんが町のお婆さん達とその孫たちを相手に上手に客引きしていることは、しっかり隠したまますべて自分の手柄にした。勿論彼女も野心があるので、今はドッコさんを見てまず無駄口をたたきながら優しく応対し始めた。

 「最近もあいつに三角おにぎりをあげているの?私がいる時は少しも顔をみせないけど。」

 「今・・・来ません。家に戻ったと言ったのです。」

 「それを信じるの?最近半地下で家出した子供同士集まって生活していると言っていたけど・・・。」

 「行ってみたら・・・いなかったですよ。」

 「どこ?」

 「半地下です…。チャモンと子供達が一緒に暮らしていた所。」

 「まあ?そこへ何故?」

 「心配で・・・。しかし部屋を出てみんな・・・消えたと言っていました。」

 「ドッコさん、そんな子供達を思うのはいいけど、ドッコさんも早くきちんとした家を手に入れなければならないから?」

 「僕は・・・家が必要ではないです。それで・・・ホームレスだと言うことじゃないですか。」

 「今は違うじゃないの。立派な労働者で。」

 「僕は・・・まだまだ遠いです。」

 「遠いとは何が遠いの?」

 「何でも・・・遠いです・・・。」

 「本当に謙虚な人。やれやれ、私が今まで誤解して申し訳ないのがわかる?」

 「僕が・・・いいえ、僕こそ・・・今まで誤解させて・・・申し訳ありません。」

 「とにかくそこに住むのを止めて、どこかワンルームでもきっと探すわよ。人はきちんと寝なければならないから。」

 「お言葉・・・ありがとうございます。」

 彼は大きい犬が主人の言葉に従うようにうなずいて、うろうろしながら退勤ではない退勤をした。なんとまあ勤務時間から自分時間もさらに働いていくパートタイマーがどこにいるというのか?それでコンビニの売上げも上がり、ソンスク自身の仕事も容易くなったので、彼女は彼を信頼し始めた。多分熊だった彼が犬に見え始めたのもその頃からだっただろう。

 年末に先立ってお姉さん社長は、シヒョンが同じコンビニチェーンの別な店にスカウトされていったから、業務時間を調整しようと言った。スカウトだって?ドッコさんは無料配達するし、シヒョンはスカウトされるし、本当にいろいろするコンビニのアルバイトに違いなかった。ソンスクは自分もどんと構えるつもりで、勤務時間を延ばしてほしいと言うお姉さん社長の提案を快く受け入れた。そうしてシヒョンの業務時間をドッコさんとお姉さん社長と分けて勤務するようになり、いつもより2時間多く働いて帰宅するようになった。

新年になって仕事が増えると活力が落ち、がんばったが1歳年を食ったからなのか、彼女はすぐに疲労を感じた。家は家でさらにめちゃくちゃになっていた。ソンスクが2時間遅く帰るようになると息子は一人ラーメンを作って食べ、皿洗いや後始末は僕は知らないとそのままにしているのだった。勉強に集中しようとそうしたと思っても、部屋から聞こえるオンラインゲームの音が大きすぎて彼女の心を惨憺たるものにするばかりだった。

 要するに息子の奴は自分が家を留守にするほど取り散らかすだけで、まるっきり人生に役に立つことなんかしていなかった。ソンスクは息子に孝行や家事の分担を望むことはなかった。そのまま、息子が自分自身を助ければそれだけで充分だった。しかし、新年になって母の自分は仕事を増やそうとしても力が足りないのに、息子は30歳の世間知らずに留まっていた。いや、模範生だった中高生時代にたくさん遊べなかったことがやりきれなかったのか、不良青少年として人生をもう一度生きたいようだった。30歳予備校生がPC部屋で人を銃で撃って殺すゲームにはまった青少年の恰好をしていることが、本当に憂鬱で忌々しかった。

 我慢できなかった彼女は、退勤後息子の部屋をノックしたけれど、ゲームの騒音にノックは全く機能しなかった。彼女はすぐに取っ手を何度も引っ張ったが依然として閉まっていた。瞬間その取っ手が必要な時だけ母を捜す息子の冷たい手のように感じた。腹が立って彼女は壊すようにドアをたたき続けた。

 「ねえ!ドアを開けて!!お母さんと話そう!!」

 ゲームの騒音よりドアをたたく音と叫びがさらに高い音圧レベルになってから、やっと息子はドアを開けてごつごつした顔で彼女を見下ろした。

 「お母さんが何を言うかわかる。だからやめろ。」

 息子は少し前にゲームの中で飛び出してきた銃声のような言葉で撃った。脂ぎった顔は生活に疲れて、膨らんだお腹はショーツの上に飛び出していた。真冬にショーツとは・・・。家の中だけ引きこもってボイラーをぱんぱんに焚いている情けない恰好だった。紺色のスーツにきちんと刈ったヘアスタイルで初出勤した大企業の新入社員の姿は影も形もなく、家の外どころか部屋の外にも出ない、持て余しの厄介者になったのだ。 

 情けなく眺める彼女の表情を無視して、息子は部屋へ入って行こうとして、ソンスクは思わず息子の腕を爪が刺さるほどぎゅっと掴んだ。半袖Tシャツの下で捕まった腕が痛かったのか。息子はその瞬間ソンスクをぎょろっと振り返り、これに対してソンスクはけりをつけるという気持ちで、息子の腕をさらに強く掴んだ。

 「放して。僕は勉強しなくちゃ。」

 「嘘!あんた、一体全体何をしているの?えっ?」

 「お母さんが外交官なれと言うから!勉強していて少し休みながらゲームするぐらいで何の騒ぎだ?僕は勉強で名門大学に行って大企業に行って、全部試した人間じゃないか。勉強のやり方はわかっているから、特に緊張しないで!」

 「やい、お前!それで何なの? そうして今のこのありさまなのかい?部屋に閉じこもってゲームだけして毎日ラーメンばかり食べてそれでいいのかい?家の外に出て散歩でもするか、どこか予備校でも入ったらどうなんだい!」

 「ああ!疲れる・・・そんな小言はうんざりだ!!」

 息子は一言叫んでソンスクの腕を振り切って入ってしまった。ばたん。ドアを閉める音に続いてがちゃん、ドアにかけるボタンの音が聞こえると、ソンスクの心の中のどこかのボタンも押されてしまった。ソンスクは壊すように再びドアを叩いた。自分に向かって目を白黒させながら、気が狂った人を見るように見ていた息子の目つきに応えるように、狂ったように叩いた。しかし、息子の答えは一層大きくなったゲームの音だった。更に、猛烈な銃声に彼女の全身はハチの巣になったようだった。

 ドアを叩いていた手が痛くなる頃、彼女は額でドアを強く打ち付けた。ドン、ドンドン、ドンドン。額がひりひりする頃打つのを止めてドアに背を向けた。涙が流れて胸が怠くなったけれど、ともに苦しみを分かち合う夫はいなかった。今まで息子自慢を思う存分していたので、故郷とか友達に情けない有様になった息子について、悔しいと訴えることもできなかった。息子が大企業に入社した時、彼女をねたんでいた同級生の陰口が遠くでこだまして耳に届くようだった。

 泣きくたびれて眠った彼女は間違いなく7時に起きた。うんざりしたことにその時間まで息子の部屋ではゲームの音が爆発していた。彼女はコートだけ羽織ったままいつも準備していた朝食も作らず逃げるように家を出た。本当に家と息子を捨ててどこかへ消えたい気持ちだった。しかし、彼女が行ける所は仕事をしなければならないそこだけだった。

 ドアを開けてコンビニに入って行くとドッコさんがカウンターにいなかった。振り返ると彼は新しく陳列したカップラーメンの縦と横を合わせるのに精神を集中していた。そこまでする必要がないと言っても、彼は強迫症患者のように商品一つ一つのラインを合わせて陳列することに努めた。呆れる息子と本当に比べられる行動だった。初めて息子がホームレスから抜け出したばかりの中年小父さんより出来が悪いと感じると自分が一層惨めになった。

 「いらっしゃいましたか?」

 商品陳列に熱中しながら彼がぽんと言葉をかけた。ソンスクはその時どっと溢れ出た涙にろくに返事ができなかった。慌ただしく倉庫に入ってユニホームのチョッキ着替えても涙は止まらなかった。あのホームレスと異なるところがない男より息子         が劣るなんて・・・。違う、ドッコさんは今堅実な社会人ではないか?今はたどたどしかった口調もとても自然になった。それに反して部屋の中でゲーム中毒の息子は、社会から離脱した敗北者で未来が暗い人間だ。あの父親の息子だろう、ソンスクが死んでもしまったら、人の役目も果たせず、ぶらぶらしていてホームレスか浮浪者になるかもしれない。そんな考えがしょっちゅう浮かんできて彼女はそのまま座り込んで泣いてしまった。                                                    

 
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翻訳(韓国語→日本語)不便なコンビニ(三角おにぎりの用途)3-2

2024-08-14 21:54:29 | 翻訳

*韓国語学習のための翻訳で営利目的はありません*

著者:キム・ホヨン

 コンビニに入ってくる客はカウンターの店員が自分を観察していると思わないだろう。しかし、予想より多くの客が品物を盗む。意を決して、或いは何気なく。特にソンスクのように太って鈍く見える小母さんがいる時は、盗む側も油断するのだ。ソンスクは長い接客業の経験を通して、何か不純に見える客をとてもよくわかったから、直前に入ってきた客が「意を決して」三角おにぎり2個を盗むのを捕らえることができた。休みの間、午前でも中高生がいろいろコンビニを訪れることはあった。しかしその少年は休みに学校に行かない子供には見えなかった。15歳ぐらいなのか?ソンスクぐらいの背で、どこか暗い顔色と安めの身なりが、ウオンリョ路と電子商店街の付近でふらふらしている不良青少年の連中を連想させた。

 少年は陳列台の間を行ったり来たりしながらソンスクをひそかに観察しては、彼女が知らないふりをするや素早く三角おにぎり2個をジャンパーの中に重ねて入れた。そして再び陳列台の間を行ったり来たりしながら、時間をつぶしてカウンターに向かって近づいた。その短い瞬間に彼女はこの少年をどう処理するかたくさん考えた。たかが三角おにぎり2個のために、ナイフでも持っているかもしれない不良青少年に立ち向かう必要があるかという考えが先立ったけれど、誰にも与しやすく見えることを嫌う彼女の頑固な性格がすぐさま噴き出てきた。

 「小母さん、ここ缶ジュースのチャモンないですか?」

 「チャモン、何?そんなものないから。」

 ソンスクは、返事を気にもしないようにすぐ振り返った少年の腕をタイミング良く捕まえた。奴は後頭部でも叩かれたように驚いて振り返りながら捕まった腕を引っ張った。

 「出せ。盗んだもの。」

 ソンスクがまっすぐに少年を睨んだ。少年はどうすることもできずに固まっていた。

 「あんた、私が誰だと思っているの。速く!」

 「ねえ・・・さん・・・。」

 少年がため息のような罵詈雑言を吐き出しながら、ジャンパーの中に空いている手を突っ込んだ。彼女はしばらく奴がナイフを抜くのではないかとびくっとして、同時に緊張を振り払うために、掴んだ腕に更に力を加えた。

 少年が三角おにぎりを取り出してカウンターに置いた。しかし1個だ。ソンスクはとんでもないという表情で少年に顎で指図した。

 「全部出せ。警察署に引きずって行く前に。速く!」

 ソンスクが犬のカミを懲らしめる時のように低く威厳を持って言った。

 その時だった。少年が再びジャンパーに手を入れたと思うと、稲妻のようにすばやく取り出した三角おにぎりを彼女の顔に投げつけた。ぱっと、飛んできた三角おにぎりがソンスク眉間を打った。彼女は目の前が暗くなったまま、奴の腕を離した。

 少年が「くそ!」と叫んでそして顔面全体が凍り付いた彼女に背をむけてコンビニを出ようとする刹那、外から誰かが少年の押すガラス戸を熊のような図体で止めた。ドッコさんだった。

 「やあ、チャモン。」

 ドアを開けて入ってきてドッコさんが少年に向かって笑ってみせた。少年がどうしたらよいかわからず後ろにぶつかった。ドッコさんは落ち着いて入ってきて預けておいた品物を受け取るように、少年を片腕で抱いてソンスクの側に近づいた。少年はなすすべもなくドッコさんに導かれてカウンターの前に引き寄せられた。彼女もやっと気を取り直してカウンターの前に歩み出てきた。

 「こいつが・・・支払いしなかった・・ですよね?」

 「忘れるなんて!警察に連れて行ってください。速く!」

ソンスクはドッコさんの腕に抱えられたままうなだれた少年に聞けと言うように叫んだ。しかし、ドッコさんは少年が動けないようにぎゅっと腕で抱いたまま首をかしげるだけだった。癇癪を起したソンスクが彼に問いただすように訊ねた。

 「どうして?知っている子ですか?」

 「子供はチャモン・・・毎日働きもしないチャモンを探していたのです・・・・僕の勤務の時に来たので・・・今日ちょっと遅かったようですね。チャモン、お前・・・今日腹時計・・・こわれたのか?それとも朝寝坊?」

 ドッコさんはまるで友達に話すように少年に言ったので、少年は何も言わずに口だけ突き出したままとぼけた。大体何だろう?そうならこいつはドッコさんがいる時に、毎日三角おにぎりを盗んだことはないのか?ない。計算はいつも正確だった。そうならあの熊が奴にやったのか?だしぬけに登場して少年を捕まえた彼をほめる気持ちはもはや消えてしまって、ソンスクは怒りがこみ上げた。

 「今まで子供に盗まれたことがあるでしょう?正直に言いなさい!」

 「ないですが。」

 「そんなはずがない。支払いもせず逃げたから。その上私に三角おにぎりを投げつけたのですよ!!」

 その時ドッコさんが体を回して少年をまっすぐに起こした。少年を見下ろしていた彼は、ソンスクの横に落ちた三角おにぎりの塊に視線を移すと、すぐうつむいてそれを持った。

 「お前・・・当てた?」

 「・・・しかしですね。」

 「そうなら・・・駄目だ。」

 「わかりました。」

 ソンスクはドッコさんと少年の落ち着いた会話を聞いていたら、さらに腹の虫が収まらなかった。やられたのは自分なのに、なぜ二人が互いに打ち解けているのか。

 舌打ちをするソンスクにドッコさんが振り返って三角おにぎりをさっと差し出した。何だろう?

 「計算してください。」

 ソンスクは鼻であしらった。しかしドッコさんが固い表情で腕を伸ばすと、なぜかわからない緊張に気づいた。彼女はためらっていた手を動かしてバーコード読み取り機で三角おにぎり2個分の計算を打ち込んだ。ドッコさんは、ポケットに手を入れるとしわくちゃになった5千ウォン札を1枚出して彼女に渡した。ソンスクは虫にでもなったように用心深くそれを受け取りレジに入れて小銭を手渡した。

 ドッコさんはそれでも手に握った三角おにぎりを片付けないでソンスクの前で持っていた。

 「どけてください。」

 「支払い・・・済ませたじゃないですか・・・。これ投げてください。」

 ドッコさんが顎で少年を指した。この人、今私を見て奴がしたことと同じことをしろというのか?ソンスクは開いた口が塞がらなかった。ドッコさんの真摯な表情もそうだったけれど、その後ろに立ったまま、まるで執行を待つ死刑囚のようなしょげた少年を見ると、二の句が継げなかった。

 「早く。」

 既にドッコさんが自分に催促していた。ソンスクは我に返って、彼が主導する流れを断ち切らねばならないと思った。

 「放り出します!子供のように三角おにぎりを投げるよ?持って行って二人で食うなり捨てるなりしてよ!」

 ソンスクが声を張り上げて言い放った。ドッコさんが笑った。笑う?めちゃくちゃ言う彼女に向かって、ドッコさんが少年の肩を掴んで振り向かせた。

 「早く・・・してあげて。遅くても・・・謝まれ。」

 少年はうなだれた頭を一層下げてソンスクに二つのつむじが際立っている頭のてっぺんを見せてくれた。

 「すみません。」

 頭を挙げて虫の羽音のように少年が言った。ソンスクはこれ以上見るのが嫌だというように手を横に振った。ドッコさんが、まるで息子と同行する家長のように少年の肩に腕を回したままコンビニを出た。二人は屋外テーブルに行って三角おにぎりの包装を仲良く剥き始めた。

 ソンスクはしばらく二人が三角おにぎりを食べながら笑う姿を眺めていた。今何が繰り広げられたのか?盗みをした少年がいて、自分はそれを防いでいて三角おにぎりに眉間を殴られた。逃げる少年をちょうど登場したドッコさんが捕まえて、盗んだものを代わりに支払ってくれて、奴に謝らせた。

 被害者は泥棒され三角おにぎりで顔を殴られた自分に違いなかった。しかし、ドッコさんが瞬く間にことを片づけてしまう成り行きに、ほとんど腹も立たなかった。しかし、普通こんな場合であれば、ソンスクさんは癇癪を起して周囲の人々に不満を吐露し、怒りをぶちまけたはずだったが、不思議なことに、腹がたたず一言も浮かばなかった。

 ドッコさんと「チャモン」が貧しい親子のように三角形の朝食を食べるのをただ眺めた。妙な気分になった。安堵感と許し、馴染みのない興奮がソンスクさんに生き生きした感じを与えていた。自分もこの奇妙な騒動劇の三角形の一辺を占めたことが、異常に面白いと感じて、三角おにぎりの包みをはがして彼らに近づかなければならないのではないかと考えるほどだった。

 ドッコさんはしばらくチャモンという奴を気遣ってやったのだろう。だから、その不良の奴が文句を言わず彼の指示に従うのだ・・・。ソンスクも眉間が重苦しいことは重苦しいけれど、めったに誰も見逃すことがない自分に生まれた変化を新鮮に感じた。

 一言で言えば気分が良くなった。


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翻訳(韓国語→日本語)不便なコンビニ(クレーマーの中のクレーマー)2-10

2024-03-31 10:54:43 | 翻訳

韓国語学習のための翻訳で営利目的はありません。

著者:キム・ホヨン

(10)

 新しい雇用主は10日後に新しいコンビニをオープンするから急いでくれと言った。新年を新しい職場で始めるのだ。シヒョンは心配半分、申し訳なさ半分で社長さんが来るのを待った。夕方の時間には、まるで退勤するように立ち寄って彼女に一日の状況を確認する社長さんが、これからはシヒョンではなく別の人に報告を受けなければならないだろう。それも申し訳なく感じている最中に社長さんが白い袋を持って入ってきた。

 「たい焼きを買って来たので一緒に食べよう。」

 シヒョンは白い袋の中に可愛く並んでいるたい焼きを一つ取った。社長さんの温かい心のようなたい焼きを思い切って頭からちぎって食べた。そして社長さんに一部始終を説明した。社長さんはたい焼きを食べないでただシヒョンの話を聞いた。全部聞いてしまった彼女はシヒョンを見ながらたい焼きをぼりぼりかじった。

 「よかったね。」

 「申し訳ありません。急に辞めると言って・・・。」

 「いいえ。あなたはとても長く働いているから、私が最後まで責任を持たなければならないのかと心配していたの。良かった、本当に。」

 「無理ににそう言われるのがわかっています。」

 「そう聞こえたの?」

 「はい。」

 「じゃ、本当のことを話す。そうでなければあなたを解雇しようと思った。あなたも知っているとおり、売り上げが思わしくないし。その上、オ女史やドッコさんも仕事をもっとしたいと言うので・・・あなたの業務時間を私やオ女史、ドッコさんが分担して給与支出を減らそうと思ったのよ。」

 「え?」

 「売り上げが減れば人を減らさなければならないので、オ女史もドッコさんもこれが唯一の生計手段なので。解雇することができないじゃない。それで、あなたはいずれにしても家で食べさせてもらっているし、試験も少し残っているじゃない。これで勉強に集中しなさいという口実で解雇できると思ったの。」

 「え・冗談ですよね?」

 「本当よ。」

 「冗談だとおっしゃってください。そうでなくても寂しいから。」

 「寂しくて悲しくても後も振り返らずに出ていくでしょう。出て行って別の所に行ってみてここが懐かしくなるでしょう。懐かしくて有難さも増すでしょう。そうじゃない?」

 「今もう有難いです!」

 シヒョンは目が潤むのを感じた。老練な社長さんは笑いながら、またたい焼きをぼりぼりかじった。シヒョンも涙をこらえて、たい焼きをかじった。甘い小豆の食感が彼女の舌をくすぐった。


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翻訳(韓国語→日本語) 不便なコンビニ(クレーマーの中のクレーマー)2-9

2024-03-21 18:40:44 | 翻訳

韓国語学習のために翻訳しているもので営利目的はありません。

著者:キム・ホヨン

(9)

 ドッコさんは相変わらず1時間早く出て、コンビニの周辺を掃除し屋外テーブルを整理してから、シヒョンと引継ぎをした。彼は今完全に夜間業務に適応して、誰も彼を1か月前までソウル駅で…生活していたホームレスだと想像できないほど変わった。初月給で買って着ている分厚く白いジャンパーは、彼を恐ろしいヒグマからコーラの広告の北極熊に見えるようにし、どっしりした図体のように社長さんとシヒョンの信頼できる同僚になった。今も彼でなかったらクリスマスツリーをあのように速く組み立て立てることはできなかっただろう。何よりも良いことは、あのクレーマーの中のクレーマーがドッコさんと一勝負してからはコンビニにちょくちょく現れないという点だった。弱い人に非常識な振る舞いをして、通じない人に会うと尻尾を垂らす振る舞いさえ本当に非常識だった。

 ただオ女史だけが相変わらずドッコさんを邪魔な人と感じていた。彼女は出勤したシヒョンにドッコさんの欠点をあげつらって行くのが日常になっていた。もともと怒りやすい彼女がついに腹いせの対象を見つけたようだった。いずれにしてもドッコさんは関係ないようだった。一度オ女史がストレスを与えないか訊ねると、ドッコさんは首を振ってかすかに笑って見せた。

 「ストレスは・・・あれのようです。」

 「え?」 

 「あそこ酒の冷蔵庫・・・近すぎて・・・。」

 「酒を召し上がったらいけません!本当です!」

 思わず声が高くなった。きまり悪くなるシヒョンの気持ちを知っているのかドッコさんはうなずいて同意してくれた。

 「そうならないで対策を・・・立てようと思います。」 

 ドッコさんがそう言ってニヤッと笑った。シヒョンは安堵した。彼女は今ドッコさんがたくさん飲んで減ったカヌブラックを補充していた。彼を通して誰かを助けることの効果を体験し、自分にそんな能力が隠れていることに気づいた。彼女は今もユーチューブ映像を撮りながらドッコさんのことを考えた。彼に教えるように十分に、ゆっくりと、話して動いた。ひょっとすればホームレスのような人達を助ける方法はこのように少しのろく、ゆっくり近づくのではないだろうか?考えてみると社会でどんな絆もないと感じていて自発的なアウトサイダーである自分が、何か結びつく点を見つけるようになった点で、彼女もドッコさんに助けてもらったわけだった。

 ユーチューブと連動したアカウントにシヒョンにとって見慣れないメールが届いたのは、クリスマスイブの一日前だった。メールで自分がALWAYSコンビニ2か所を運営中だと明かした女性は一緒に仕事をしたいと自分の番号を残していた。

 「何だろう?スカウトの申し出?」

 一介のコンビニのアルバイトをスカウトするとは、とんでもない話じゃないか?そしてスカウトしたら、どんな理由でどんな提案をするということなのか?時給を千ウォン、更にくれるのだろうか、あるいは掛け持ちをしろというのか?爆竹が爆発するように頭の中で絶え間なく上がってくる質問を鎮めようとすれば、番号を押すしかなかった。小心なシヒョンは小さい期待と大きな心配を抱えたまま、メールを送った人に電話を掛けた。

 中年の落ち着いた女の声が電話を受けた。彼女はユーチューブでシヒョンのコンビニのレジスターの学び方を何回も見たとまず言葉をかけた後、自分は銅雀区でコンビニを2店運営している人間で、今回新しく更に1店開店するときに、担当者が必要だと言った。すなわちシヒョンにコンビニ一つ丸ごと責任を持つ店長として働いてくれという提案だった。面食らったシヒョンは何といったらよいかわからなく戸惑った。すると相手は一度コンビニに立ち寄って自分と会って信頼が行ったら一緒に働こうと言った。驚くことにコンビニはシヒョンの家からとても近い所で、彼女は明日退勤してお目にかかりましょうと答えた。

 うちから地下鉄1駅前の町のコンビニだった。社長はオ女史と同じくらい50代後半の小母さんだったが、口調と印象は申し訳ないけれどオ女史と正反対だった。落ち着いた口調と慈愛に満ちた微笑の彼女はコンビニを事業として、既に2店持っていて、新しくもう1店出すとき信頼できる店長が必要だと強調した。

 「私をなぜ信じてこんな提案をくださるのでしょうか?」

 シヒョンは用心深かった。生きてきてこんな提案どころか、他人に褒められることさえほとんどなかったので、用心深くするしかなかった。

 「ユーチューブの映像を見て気持ちが動きましたよ。あなたの口調や教え方が本人の持つ能力を誇示するよりは、学ぶ人をとても配慮していると感じたのです。」

 「そうだったのですか?」

 「先月新しく引き抜いたアルバイトは最初からあなたの映像を見て学びなさいと言うぐらいだから、私がすでに助けられたじゃないですか。これからそうじゃなくて直接私共の売り場の新入りに教育してくださったらいかがですか?新しい売り場の運営をしながらいろいろ出張教育をしてくださったらいいですが。勿論出張費は支払うつもりです。

 シヒョンは胸の震えを隠すために口を食いしばる自分自身を感じた。店長であり正社員だ。月給を聞いてしまって、びっくりして口が開いた。それにもまして新しく開店する売り場はシヒョンの家から5分の距離に過ぎなかった。コンビニのアルバイトとして家族や町の人と会う勇気はなかったけれど、店長として彼らに会うと思うときまり悪いどころか胸を張ることができると思った。

 彼女は昇進することにした。同じ業種で転職することにした。歩いて家に戻る道はクリスマスイブを誇るように活気が溢れていた。通りごとにカップルと赤く白い小品が溢れていた。今年も恋人のいないままおくるクリスマスだったが、彼女は全く寒くなかった。


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