『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳 これはパイプではない No.12

2012-05-31 23:39:17 | 翻訳

「そうか、小説家のように哀れな存在もないなあ。自分の過去と私生活までも大衆の餌として体を投げ出すなんて。事故で死んだ息子を心の中に隠しておくこともできず、結局小説に仕上げたある作家を見ると、本当に作家というのは恐ろしい存在だね。あんたを理解できないこともないよ。僕は百回あんたを理解してやれる。あんたを一時すごく好きだったし、歳月もこんなに流れたし、人生がなんだ。全部理解できる。あんたもそれが職業じゃないか。食べて生きていくので・・」

 サンウクがイミジを眺める視線には憐憫が絡まっている。イミジの中から熱く何かが沸き立っていた。それは単純に酒の勢いだけではなかった。

「しかしね、ちょっと問題があって。うちの家内の事なんだ。」

 サンウクが煙草の煙をふっと吐いて、ちょっと卑屈な表情で言った。

「うちの家内ね、あんたとの恋愛を実際よりもっと深刻なものと昔から受け止めていたんだよ。おそらく昔からグループの中では僕たちが思っている以上に気になる噂が出回ったようだ。あんたの小説が出版されると買って読んで、ある日わーわー泣くんだ。僕が誠実ではなかったと。嘘を言ったと。

昔家内を誘う時に家内が尋ねたんだよ。イミジ先輩とのことを知っていると。僕がそうだった、何もなかったよと答えたんだ。ところが今回小説を読んでからは僕をもう信じることができないし、離婚しようと騒ぎ出したんだよ。実はこの頃数日間冷戦中なんだ。こんな話をあんたにまでするのは何だけれど、実は僕がこの間事故を起こして。やっと家の中が平穏になって何か月か過ぎたんだ。それで話なんだけど・・・どうも本当に申し訳ないけど。」

 サンウクが乱暴に酒を口の中に注ぎ込み口ごもりながら言った。

「そんなことは多分ないけれど・・・そうしてほしいけど・・・しかしそんな機会があれば、いつかあんたがうちの家内に本当のことを明らかにしてくれれば・・・」

[これはパイプではない」No.12





そぞろ歩き韓国150  栗谷路3通り

2012-05-31 20:01:31 | まち歩き

地下鉄3号線安国駅から北に向って伸びている栗谷路3通りは小さい通りだがなかなか楽しい。

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徳成女子高校と徳成女子中学校が向かい合っている。

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校庭を囲む生垣は真っ赤な薔薇が彩っている。

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徳成女子高校の校門脇の掲示板。

ここは朝鮮王朝19代粛宗の仁顕王后の実家のあった感古堂の跡で、仁顕王后は張嬉嬪(チャンヒビン)の陰謀で王后を廃され6年間ここに監禁されたが、王宮に還御したと記されている。

韓流歴史ドラマに出てくる名前なので親しみを感じる。

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今は女子高校で昔の面影はない。

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徳成女子中学と高校を結ぶ回廊。

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栗谷路3通り。

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栗谷路3通りのおしゃれなお店。

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徳成女子中学に続く昔の石垣。

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石垣が続く。

※写真を大きくする場合は写真の上をクリックしてください。


読書感想13  孤独なスキーヤー

2012-05-30 22:44:30 | 小説(日本)

題名   :  孤独なスキーヤー

著者   :  ハモンド・イネス

生年没年 :  1913年~1998

国籍   :  イギリス

出版年  :  1947

出版社  :  グーテンベルク21(電子書籍)

あらすじ

 除隊後、友人と始めた出版社が1年も経たずに倒産し、職を求めてロンドンに来たシナリオライターのニール・ブレアは偶然かつての上官だったデリック・イングレスに再会する。映画監督として成功を収めているイングレスはニールに不思議な提案をする。イタリアのアルプスにあるスキーの保養地、コルチナの山荘に3か月間滞在してスキー映画のシナリオを書くふりをしながら、特にその山荘に出入りする人物を見張って日報を航空便で送ってほしいと。そして娼婦のように見える女性の写真を渡される。カルラの署名が入っている。ニールは何も事情を知らされていないカメラマンのジョー・ウェッスンとコルチナへ出発する。

コルチナのホテルでニールはその山荘、コル・ダ・ヴァルダ山荘について驚くべき事実を聞く。山荘に付属する、麓から人を運ぶ橇のケーブル巻揚げ装置、スリットヴィアを建設したのがドイツ軍だということ。その後売りに出た山荘を買った人物が元ゲシュタポのハインリヒ・シュテルベンだったということ。偽名で山荘に潜伏中だったシュテルベンは逮捕され、その後自殺したこと。シュテルベンは戦争中にイタリアからドイツに金塊を輸送する責任者だったこと。シュテルベンの愛人のキャバレーダンサー、カルラ・ロメッタもシュテルベンの逮捕と前後して姿を消したこと。しかもその山荘の競売が近々行われること。

山荘の泊り客はニールとジョー以外に、売春屋のステファン・ヴァルディニとピアノが達者で陽気なギルバート・メイン、一癖ありそうなギリシャ人のケラミコス。翌日スリットヴィアで上ってきたスキー客の中に写真の女性カルラとそっくりな女性を見つける。ヴァルディニは彼女をフォレッリ伯爵夫人と紹介する。

競売は地元のホテルが競り落とす手はずが、ヴァルディニが名乗りをあげ、あわや落札というところでベニスの弁護士が落札する。ベニスの弁護士の依頼人はわからない。

翌朝、ニールはメインからスキーに誘われる。「モンテ・クリスタッロまで上がってみないか。」登りから下りに入ったところで、メインはニールにクリスチャニアができるか尋ねる。ニールはできないと答える。メインは雪の中にシュプールだけ残して姿はみえない。その跡を追って急勾配を滑降するニールの前に巨大な雪の壁が立ちふさがる。雪の壁の前をきれいに直角のクリスチャニアで曲がるシュプールの跡を見たニールは雪の壁の中に突っ込み埋まってしまう。自力で雪の壁から脱出したニールは元来たコースをもどって助かる。

そこにイングレスとフォレッリ伯爵夫人が到着する。山は吹雪になり、スリットヴィアは運行を停止する。外界から隔絶した山荘の中で山荘に秘められた謎と、山荘に集まった人々の正体が明かされていく。

感想:

 背景になっているのは、第二次世界大戦の余燼がまださめやらないイタリア側のアルプスである。主人公を始め主だった人々は復員兵である。今は民間人でもいざというときは軍人時代の感覚が顔をのぞかせる。死地に臨んでも一か八かで打開する勇気と術を心得ている。ハモンド・イネスの他の作品でも第二次世界大戦で活躍した復員兵がでてくる。著者自身第二次世界大戦中は陸軍砲兵隊に所属していたという経歴がある。 日本の復員兵が出てくる小説は、後悔と懺悔に包まれて、ひたすら暗い感じがする。それに対して、ハモンド・イネスの描く人々は、イギリスの誇り高いジョンブル精神の体現者である。敗戦国と戦勝国の違いなのか。そもそも日本には格好いい冒険小説がすくないのかもしれない。

 ハモンド・イネスの描く冒険小説は男の世界であり、女はほとんど出てこないか端役である。恋愛小説とはジャンルがはっきり分けられているのかもしれない。

暇にあかして書いています。


そぞろ歩き韓国149 浄水機

2012-05-30 14:37:37 | まち歩き

韓国では水道水は飲まない。コンビニやスーパーで飲料水を販売している。事業所では浄水機が設置してあり、自由に水が飲めるようになっている。浄水機に氷も出るタイプがある。夏にかけてとても便利だ。

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右側が水、左側が氷が出る。

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これも同じタイプである。

ホットのコーヒーが出るものが設置されているがアイスは出ないので自分で作るようになっている。

※写真を大きくする場合は写真の上をクリックしてください。