goo blog サービス終了のお知らせ 

『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想355 ①新人女警  ②BUTTER  ③日御子  ④日韓併合期ベストエッセイ集

2025-08-30 19:21:28 | 小説その他

日韓併合期ベストエッセイ集

①新人女警                          面白さ(5点満点):☆☆☆

著者:吉川英梨            生年・出身地:1977年・埼玉県

出版年:2025年   出版社:朝日新聞出版

コメント:八王子警察に配属された新人の女性警察官は八王子駅北口の交番に勤務している。彼女は12年目前に親友が殺された現場に居合わせたことから、未解決事件になっている、その事件を解決したいと思って警官になったという経緯がある。事件の推移とともに八王子の歴史や地理などが語られていく。解説にあるように「八王子度」の高い警察小説になっている。また、以前は婦人警官という呼称だったが、男女雇用機会均等法の1999年の改正により、「女性警察官」に変更されたそうだ。八王子駅周辺の駅ビルやカフェ、広告は実際とは違う名称が使われている。しかし、それ以外は実際の名称が使われている。八王子に興味がある読者には楽しい読み物になっている。

②BUTTER                                                                                               面白さ(5点満点):☆☆☆

著者:柚木麻子            生年・出身地:1981年・東京都

出版年:2017年    出版社:(株)新潮社

コメント:週刊誌の記者の町田里桂は男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子の独占インタビュー記事を書くために、真奈子に面会する。グルメ料理で男たちを篭絡してきた真奈子は里佳に本物のバターを食べることを強要する。あまりに荒唐無稽な設定でついていけなかった。

③日御子 上下                         面白さ(5点満点):☆☆☆

著者:帚木蓬生               生年・出身地:1947年・福岡県

出版年・出版社:2012年  (株)講談社

コメント:邪馬台国の卑弥呼を題材にした作品である。中国で東夷に蔑んだ漢字を当てていることから、卑弥呼を日御子としている。中国から渡ってきた安曇・安住一族が漢字を駆使し漢語を操る通訳として倭国に広がっている。その通訳の一族の目を通して九州地方の倭国と朝鮮半島北部の楽浪郡、漢や魏との交流が描かれている。残念ながら、今でも使われている地名と、地名がないままに大河とか山とか呼ばれる地域が混在していてわかりにくい。九州に邪馬台国を持っていくなら、川や山も現在の地名を使った方がよかったのではないか。邪馬台国の統治の実態が曖昧だし、卑弥呼が何を信仰する巫女なのかもわからない。古代史を小説にするむずかしさを感じる。                   

④日韓併合期ベストエッセイ集    面白さ(5点満点):☆☆☆☆

編者:鄭大均                   生年・出身地:1948年・岩手県

出版年・出版社:2015年  (株)筑摩書房

コメント:日本人も朝鮮人も40人以上が書いたエッセイである。7つの章に分かれている。

第一章 子どもたちの朝鮮   第二章 朝鮮の少年たち、日本へ行く  第三章 こんな日本人がいた

第四章 出会い八景      第五章 作家たちの朝鮮紀行      第六章 町と風景と自然

第七章 朝鮮を見て、日本をふり返る

多様な切口で当時の朝鮮半島を紹介している。特に金剛山に冬山登山した中学生グループの冒険談は印象的だった。また当時のソウルは青く澄んだ空がある街だと言う記述が散見される。今は工業化によって空気が悪くなったのは残念だ。

にほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログへ
にほんブログ村


読書感想354  ①逃亡 上・下  ②冷酷な丘  ③いま朝鮮半島で起こっている本当のこと

2025-07-25 12:51:28 | 小説その他

逃亡の画像

①逃亡 上・下                      面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:帚木蓬生           生年・出身地:1947年・福岡県

出版年:2000年           出版社:(株)新潮社

コメント:1945年8月15日、日本の敗戦によって、主に香港で諜報活動を行っていた憲兵隊の守田軍曹は、一般の日本軍の兵士が帰国を許されるのに対し、憲兵隊は中国に残されるという決定に、身の危険を感じて脱走する。そして偽名で日本人収容所に入り、一般の日本人とともに帰国の日を待つことにする。香港では中国人の密偵も使い、イギリス人のスパイを拷問死させたりした過去もある。その過去が帰国後もついて回り。戦犯容疑で香港の裁判所から送還を求められ、日本の警察に追われることになる。

帚木蓬生の著書は初めて読んだが、胸を突かれるような衝撃を受けた。B級戦犯というのは命令を現場で忠実に履行した者だ。上司の命令に従ったのに上司は罪を免れてという気持ちは払拭できないだろう。

 

②冷酷な丘                       面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:C・J・ボックス       出身地:アメリカ、ワイオミング州

出版年:2011年    邦訳出版年:2017年   邦訳出版社:(株)講談社

訳者:野口百合子

コメント:猟区管理官ジョー・ピケットの義父アールが風力発電のタービンに吊るされて殺害された。逮捕されたのはジョーと折り合いの悪い妻の母親ミッシー。ミッシーは上昇志向が強く結婚するたびに財産を増やしてきた。殺害されたアールはミッシーの3番目の夫である。ジョーの家族や親友ネイト、意地悪な保安官、州知事などおなじみの人々が登場する。

日本では3回も結婚して財産を増やすという女性を想定することすらむずかしい。

 

③いま朝鮮半島で起こっている本当のこと

 ー韓国と北朝鮮 どっちが先に潰れるかー

著者:李相哲              生年・出身地:1959年・中国

1998年日本国籍取得   学歴:中国北京中央民族大学卒業  上智大学大学院で博士の学位取得

現職:龍谷大学教授

出版年月日:2025年4月14日    出版社:(株)ビジネス社

コメント:第1部 壊れゆく韓国

     第2部 自滅に向かう北朝鮮

第1部では、〇民主主義が確立しない国家。〇「共に民主党」李在明氏の闇。〇保守派は復権できるか。〇繰り返される報復。また尹錫悦ついて述べている箇所は示唆に富んでいる。「韓国の有権者が検事出身の尹錫悦氏を大統領に選んだ理由は、文在寅氏に代表される従北左派、李在明氏に代表される韓国の暗黒勢力、曺国氏に代表される「江南左派」を撲滅してくれることをきたいしたからだった。~尹氏の最大の誤算は、大統領就任から2年6カ月が経過しても、文在寅や李在明氏、曺国氏らに対して何の法的措置もとらなかったことだ。~文在寅氏は大統領在任中、支持率を維持するために国家統計を操作、選挙にも介入した。」

第2部では、〇金一家が食いつぶした国家。〇すべての事業に失敗。〇崩壊する金体制の3本柱。〇金正恩政権の終焉。

朝鮮半島では嘘とデマと悪党が勝っている。なんとか内から変わってほしい。


にほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログへ
にほんブログ村


読書感想352  ①日本その日その日  ②群青の魚  ③水曜日の凱歌

2025-05-19 00:51:20 | 小説その他

①日本その日その日          面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:エドワード・モース

生没年:1838年~1925年

出身地:アメリカ、メイン州

出版年:1939年    出版社(再版):(株)講談社

訳者:石川欣一

コメント:明治初期に来日し、大森貝塚を発見し、2年間東京大学理学部の教授を務める。日本で初めてダーウィンの進化論を紹介した。日本に3回来て全国を回っている。普通の日本人と接する機会が多く、その印象がつづられている。好意的なものだ。車夫がふんどし一丁で裸で人力車を走らせる様子や、江の島で貝を採集しているときに、待機している車夫たちが手伝いを申し出て手伝ってくれたことなどが描かれている。生き生きした様子の明治初期の日本人に出会うことのできる著作である。

②群青の魚              面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:福澤徹三

生年:1963年

出身地:福岡県

出版年:2018年     出版社:(株)光文社

コメント:「白日の鴉」で出てくる登場人物が脇役として出てくる。交番勤務のお巡りさんは元暴走族上がり。元暴走族の先輩の元妻が介護施設で働いていて、そこで老人が亡くなる。元妻はストーカー被害を訴えてくる。交番勤務から刑事になった若い警官もいる。いろいろな人と事件が絡み合っている。読み応えがあった。

③水曜日の凱歌            面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者;乃南アサ

生年:1960年

出身地:東京都

出版年:2015年     出版社:(株)新潮社

コメント:7人家族が戦争中に3人に減ってしまう。母と次女。次男は戦地に行っている。廃墟と化した東京で14歳の次女は一度も働いたことのない母と二人きりで8月15日の終戦の日と迎える。女たちの過酷な戦後の生活が始まる。その中で母親の変貌ぶりに次女は反発を覚えながらも驚かされる。アメリカ進駐軍の女に飢えた兵士たちと、慰安婦施設を作る日本政府。そういうことがあったのだろうと納得する展開になっている。たくましく、過去から自由になっていく女たちの選択が救いになっている。

 


読書感想349  ①白紙委任状 ②狼の領域 ③発火点 ④赤と青のガウン

2025-03-10 14:16:00 | 小説その他

狼の領域の画像

①白紙委任状                         面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:ジェフリー・ディーヴァー    生年:1950     出身地:米国 イリノイ州    訳者:池田真紀子

出版年:2011年      邦訳出版年:2011年     邦訳出版社:(株)文藝春秋

コメント:イワン・フレミングの007シリーズを引き継いだジェームス・ボンドが活躍する冒険小説。舞台はヨーロッパのセルビアからイギリス、南アフリカにも及んでいる。現代的な点は、携帯電話で世界のどこにいてもイギリスの本部から情報をを得ることができるようになっている。

今回は007を特徴づける美女との逢瀬はあまりセクシーではなく、紳士的な007が際立っている。

②狼の領域                          面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:Ⅽ‣J・ボックス    生年:1967年    出身地:米国  ワイオミング州   訳者:野口百合子

出版年:2010年     邦訳出版年:2016年     邦訳出版社:(株)講談社

コメント:米国のワイオミング州の雄大な自然を背景にした冒険ミステリー。猟区管理官のジョー・ピケットはシェラマドレ山脈で規則を破って魚を取っている不審な双子の兄弟に会う。裁判所への召喚を口にしたピケットは兄弟に襲われ、山腹のキャビンに住む謎の女に救われる。九死に一生を得た彼の話は保安官に信じてもらえない。山に入った捜索隊は兄弟も女のキャビンの痕跡も見つけることができない。

アメリカの山の所有権が州ではなく連邦政府に所属しているということがそこに住む人と政府との摩擦の原因になることもあるようだ。19世紀の西部劇の時代からだいぶ過ぎた現代の西部の様子がわかり興味深かった。

③発火点                        面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:Ⅽ‣J・ボックス    生年:1967年    出身地:米国  ワイオミング州   訳者:野口百合子

出版年:2013年     邦訳出版年:2020年     邦訳出版社:(株)東京創元社

コメント:「狼の領域」の主人公ジョー・ピケットが主人公の冒険ミステリー。猟区管理官ピケットの知人ブッチの所有地で合衆国環境保護局の二人の特別捜査官の射殺体が発見される。ブッチの捜索隊に参加したピケットはなんとかブッチが殺されないようにと努めるが・・・。銃が生活の中に溶け込んでいる。撃ち合いになればどちらかは殺されるというのが常識の世界。法を使って復讐を図る者がいる反面、法の圏外で生きる者もいる。現代の西部劇の姿だ。

④赤と青のガウン                   面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:彬子女王             生年:1981年        出身地:東京

出版年:2015年       出版社:(株)PHP研究所

コメント:著者は三笠宮寛仁親王の第一女王。英国オックスフォード大学マートン・コレッジに留学して、女性皇族として初めて博士号を取得された。専攻は日本美術。これはオックスフォード留学記として書かれたもの。率直に初めての一人暮らしや日本との違いを語っていて、特別な方という印象よりも、普通の日本人という印象が強い。写真もたくさん掲載されている。勉強が大変だし、よく頑張ったと思う。


にほんブログ村


にほんブログ村

 


読書感想348  ①サピエンス全史 ②幸せなひとりぼっち ③偽りの名画

2025-02-10 07:57:22 | 小説その他

サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福の画像

①サピエンス全史                    面白さ(5点満点):☆☆☆☆

著者:ユヴァル・ノア・ハラリ       生年・出身地:1976年・イスラエル

出版年:2011年         邦訳出版年:2023年(文庫版)      邦訳出版社:(株)河出書房新社

訳者:柴田裕之

コメント:解説によれば本書は世界的なベストセラーになっているという。ホモ・サピエンスが人類、並びにすべての動物界の頂点に立つに至った過程と未来を展望している。250万年前に登場した人類はわかっているだけでも6つの種があったという。それが7万年前の認知革命によりホモ・サピエンスが外の人類を絶滅に追い込み覇者となったという。「私たちの言語が持つ真に比類ない特徴は、人間やライオンについての情報を伝達する能力ではない。見たことも、触れたことも、匂いを嗅いだこともない、ありとあらゆる種類の存在について話す能力があるのは、私たちの知るかぎりではサピエンスだけだ。・・・虚構、すなわち架空の事物について語るこの能力こそが、サピエンスの言語の特徴として異彩を放っている。」そしてマンモスなどの大型動物の絶滅もホモ・サピエンスが追い込んだという。目次はホモ・サピエンスの歩みにそって展開される。1.認知革命 2.農業革命 3.人類の統一 4.科学革命。現在、生物工学の発達により、天才マウスがつくられたり、マンモスやネアンデルタール人を復活させようという試みがある。それは超ホモ・サピエンスへの道を開くことを可能にする。著者は序で次のように述べている。「1,2世紀後には、ホモ・サピエンスはおそらく姿を消し、地球の支配者は、チンパンジーから私たちがかけ離れている以上に、私たちとは違った存在となるだろう。

 だが、私たちサピエンスには、重要な問いに答える時間が依然として残っている。

 その問いとは、私たちは何になりたいのか、だ。

 そして、自分の欲望さえ操作できるようになる日も近いかもしれないので、人類が直面している真の疑問は、私たちは何を望みたいのか、なのだ。」

戦慄するほど恐ろしい書である。

 

②幸せなひとりぼっち                    面白さ(5点満点):☆☆☆

著者:フレドリック・バックマン               生年・出身地:1981年・スウェーデン

出版年:2012年             邦訳出版年:2016年      邦訳出版社:(株)早川書房

訳者:坂本あおい

コメント:孤独に生きている老人が亡くなった妻の下に行こうと自殺を試みているときに、向かいに若い夫婦と2人の子どもの一家が引っ越してくる。困っている一家の手伝いをしたり、いじめられている野良猫を助けたりしているうちに、周囲がにぎやかになってくる。

心温まる物語。 

 

③偽りの名画                      面白さ(5点満点):☆☆☆

著者:アーロン・エルキンズ                生年・出身地:1935年・アメリカのニューヨーク

出版年:1987年             邦訳出版年:2005年      邦訳出版社:(株) 早川書房

訳者:秋津知子

コメント:サンフランシスコの美術館学芸員クリス・ノーグレンは名画展を手伝うためにベルリンに派遣された。その名画展の出品された絵画は第二次世界大戦中にナチスに略奪され、戦後返還されたもの。その名画展の主任が「この中に贋作がある」と主張し、不可解な死を遂げる。クリスはその死と贋作の謎に挑む。

いろいろな有名な画家の名作が登場し、その含蓄だけでも面白い。