『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想342 ①秘密の花園 ②暗殺者の正義 ③テムズとともに ④お金で読む日本史

2024-07-20 22:07:45 | 小説その他

秘密の花園の画像暗殺者の正義 (ハヤカワ文庫 NV)の画像天皇陛下の英国留学記「テムズとともに」復刊…新たに後書き寄せ ...の画像祥伝社 お金 で読む日本史の画像

 

①秘密の花園                                  面白さ(5点満点):☆☆☆☆

 著者:朝井まかて  生年:1959年  出身地:大阪府

 出版年:2024年  出版社:(株)日経BP 日本経済新聞出版

 コメント:「南総里見八犬伝」の著者、曲亭馬琴のことを描いた小説。武士の家に生まれたが、父親が亡くなり、仕えた幼君にも愛想をつかし、主家を飛び出してしまう。当代の人気戯作者京伝に弟子入りし、戯作者の道に入る。出版元の蔦屋重三郎にも奉公する。しかし売れない。それで町人の下駄屋の婿に入り、生活の糧を売る。下駄屋から寺子屋に商売替えしながら戯作を書き続ける。蔦屋は京伝と馬琴に現金で原稿料を払ってくれる。そうこうするうちに実家の滝沢家の兄がなくなり、滝沢家の跡目を馬琴の息子が継ぐことになる。「南総里見八犬伝」は大河小説として人気を博する。

江戸時代の下級武士や町人の暮らしぶりが生き生きと描かれていた。馬琴とか蔦屋とか葛飾北斎とか新しいことを始める人々が出てくる。時代の躍動感が新陳代謝を促している。

 

②暗殺者の正義                                 面白さ(5点満点):☆☆☆☆ 

 著者:マーク・グリーニー    現住地:テネシー州メンフィス

 出版年:2010年  邦訳出版年:2013年  邦訳出版社:(株)早川書房 

 訳者:伏見威わん

 コメント:「グレイマン・シリーズ」の第2作にあたる。主人公のジェントリーは元CIAの特殊活動部特殊作戦グループのメンバーだったが、今はCIAから暗殺命令が出ている暗殺者。彼はロシア・マフィアからスーダンの大統領暗殺を依頼される。同時に元のCIA上官からスーダンの大統領を拉致せよという命令が下される。成功すればCIAは今後ジェントリーの命を狙わないと約束する。状況は二転三転する。

ジェントリーがどちらかの側に立つのではなく。自分の考えを貫くところが面白い。

 

③テムズとともに 英国の2年間                              面白さ(5点満点):☆☆☆☆

 著者:徳仁親王       生年:1960年     出身地:東京都

 出版年:1993年  復刻出版年:2023年   復刻出版社:(株)紀伊國

 コメント:今上陛下が英国のオックスフォード大学での留学生活を記したものである。印象に残ったのは素直に率直に書かれていて、普通の若者の見聞記という感じが伝わってきたことだ。今まで皇室の方々の人となりはほとんど知られていないし、知る術もなかった。新しい時代になっているという感じだ。友達も多く、先生方にも恵まれた留学生活だが、研究テーマの詳細を記している。まじめな研究者として留学の目的を疎かにしていないのにも感心した。

 

④「お金」で読む日本史                               面白さ(5点満点):☆☆☆☆

 著者:本郷和人   生年:1960年  出身地:東京都

 出版年:2022年  出版社:祥伝社

 コメント:歴史上の人物の収入がどれくらいなのか、ある事件や出来事にかかった経費はどれくらいなのか。そういう興味を引き出してくれる本である。日本では708年の和同開珎をはじめ幾種類か貨幣を発行しますが行政組織が未成熟でうまくいかず10世紀半ばに朝廷は発行を停止する。宋銭が多量に入ってきて鎌倉時代に貨幣経済が根づいたそうだ。貨幣がないので物々交換が主流だったそうで、貨幣のように使用していたものは、価値の下りにくいもの、米、絹、粗い絹など。源義朝は平治の乱で朝廷より従四位の位階を授けられると、規定通りだと今の貨幣価値に換算すると年収7142万5000円だとか。源頼朝は正二位の位階を授けられたので、規定通りならば、その収入は11億388万円だとか。享保の改革を進め幕府の財政を立て直した8代将軍徳川吉宗の朝食は、焼きおにぎりと焼きみそで200円以下で、1日2食で夕食も一汁三菜で質素倹約を率先垂範していたとか。

武田信玄、上杉謙信、織田信長の経済力の比較、明治維新のスポンサーとかいろいろ興味深い。


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読書感想339  アフガンの男 カウントダウン 下町ロケット(ヤタガラス) 夏子の冒険 スサノヲの正体

2024-04-27 18:43:41 | 小説その他

アフガンの男 上下町ロケット ヤタガラス夏子の冒険の画像

4月に読んだ本の短いコメント。

1)アフガンの男                           面白さ:☆☆☆☆

  著者:フレデリック・フォーサイス     出身地:イギリス     出生年:1938年   

  出版年:2006年   邦訳出版社:(株)角川書店  邦訳出版年:2008年

  コメント:

「ジャッカルの日」の著者が描いたスパイ小説。テロを未然に防ぐべくアルカイダに潜入するマイク・マーティン大佐は、   イラクで生まれイラクで育ち、アラビア語が自由に話せた。アフガニスタンやアイルランドなどでも特殊活動の経験が豊富だった。アメリカのCIAとイギリスの情報部は、アメリカに拘束されているアフガニスタン人の捕虜に成りすましてマイクをアフガニスタンに送り込もうとする。マイクとそのアフガニスタン人の捕虜は十数年前にアフガニスタンで行動を共にし、マイクがアフガニスタン人の命を救った因縁があった。

最新式の武器や偵察機が出てきて、名前を覚えるのも大変だし、その性能にも度肝を抜かれた。登場人物も多く、それぞれの視点で状況が説明されるので複線的で奥行きの深い物語になっている。

2)カウントダウン                         面白さ:☆☆☆

  著者:佐々木譲               出身地:北海道     出生年:1950年

  出版年:2010年               出版社:毎日新聞社

  コメント:

夕張市が財政破綻し、その隣の市も夕張市同様財政破綻していた。若い市議が財政破綻を隠し続けた市長の再選を阻むべく立候補をする。

財政破綻するとどうなるかということがよくわかる小説だ。

3)下町ロケット(ヤタガラス)                 面白さ:☆☆☆☆

  著者:池井戸潤              出身地:岐阜県      出生年:1963年

  出版年:2018年               出版社:(株)小学館

  コメント:

「下町ロケット」の続編。今回は無人農業ロボットの開発を中小企業の佃製作所と大企業の帝国重工が開発するプロジェクト。

 競争相手は同じ中小企業の連合体。佃製作所のエンジンとトランスミッションを帝国重工側の権力者が内製化をしようとして佃製作所外しを企む。競争相手も佃製作所を裏切ったベンチャー企業。身近な農業用ロボットなので面白く読めた。

4)夏子の冒険                         面白さ:☆☆☆

  著者:三島由紀夫                 出身地:東京      出生死亡年:1925年~1970年

  出版年:昭和35年(1960年)            出版社:(株)KADOKAWA

  コメント:

東京の上流階級のお嬢さんが結婚相手がどれもこれもつまらないから、函館の修道院に入ると言って母親、祖母、伯母と一緒にきたへ向かう。連絡船の中で話した青年は熊を撃ちに北海道に渡ると聞いて、興味をもちついていく。

言葉遣いが古い上流階級で感情移入しにくいうえに、夏子もただわがままなだけで魅力を感じないのでいまいちだった。

5)スサノヲの正体                       面白さ:☆☆☆☆

  著者:関裕二                   出身地:千葉県     出生年:1959年

  出版年:2023年                  出版社:新潮新書

  コメント:

アマテラスの弟のスサノヲは高天原で暴れて、厄介者になった。地上界で疫病をまき散らし人々を皆殺しにすることもあった。「神」は人智をこえた大自然そのもので「災いと幸」の両方をもたらすものと古代人には信じられていたそうだ、「神」に善悪の基準を当てはめることができないのに「日本書紀」によってアマテラスは善、スサノヲは悪と貶められたそうだ。著者はスサノヲとは何者かと「日本書紀」の定説を再検討している。

1。スサノヲを祭る神社は少ないが、武蔵の国の氷川神社がそれにあたる。氷川神社を祭る武蔵国造は出雲国造家の流れを汲んでいる。出雲大社は大国主神を祭っているが、初めに祭ったのは熊野大社のスサノヲだった。

2・天皇家とスサノヲの不思議な関係として、明治天皇が東京に遷御されると、スサノヲの祭られている氷川神社を最初の行幸地として行かれ、伊勢神宮は翌年のことになっている。伊勢神宮が7世紀後半に整えられてから明治維新まで、持統天皇を除き歴代天皇は一人も伊勢に参拝されていない。一方、スサノヲと縁の深い熊野は皇族、貴族、院がこぞって向かっている。アマテラスではなく、スサノヲの地である。

3.いろいろ推測や古代の解釈があるが、結論から言えば、古いヤマトの太陽神は、アマテラスではなくスサノヲだったのではないか。

伊勢外宮の豊受大神は内宮のアマテラスが独り身で寂しいというから連れてこられた女神だし、伊勢斎宮の斎王はアマテラスの妻になるから生涯独身だった。伊勢のアマテラスは男神であろう。スサノヲが生んだ男の子をアマテラスが自分の物(勾玉)からできたのだからと、自分の生んだ女神と交換する。それが天皇家の祖になっている。スサノヲが蘇我氏系の神であることから封印抹殺されたと著者は推論している。

興味深い本だが、推測に推測を重ねているだけなので残念だ。それだけ古代史の研究は難しいのだろう。


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