①新人女警 面白さ(5点満点):☆☆☆
著者:吉川英梨 生年・出身地:1977年・埼玉県
出版年:2025年 出版社:朝日新聞出版
コメント:八王子警察に配属された新人の女性警察官は八王子駅北口の交番に勤務している。彼女は12年目前に親友が殺された現場に居合わせたことから、未解決事件になっている、その事件を解決したいと思って警官になったという経緯がある。事件の推移とともに八王子の歴史や地理などが語られていく。解説にあるように「八王子度」の高い警察小説になっている。また、以前は婦人警官という呼称だったが、男女雇用機会均等法の1999年の改正により、「女性警察官」に変更されたそうだ。八王子駅周辺の駅ビルやカフェ、広告は実際とは違う名称が使われている。しかし、それ以外は実際の名称が使われている。八王子に興味がある読者には楽しい読み物になっている。
②BUTTER 面白さ(5点満点):☆☆☆
著者:柚木麻子 生年・出身地:1981年・東京都
出版年:2017年 出版社:(株)新潮社
コメント:週刊誌の記者の町田里桂は男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子の独占インタビュー記事を書くために、真奈子に面会する。グルメ料理で男たちを篭絡してきた真奈子は里佳に本物のバターを食べることを強要する。あまりに荒唐無稽な設定でついていけなかった。
③日御子 上下 面白さ(5点満点):☆☆☆
著者:帚木蓬生 生年・出身地:1947年・福岡県
出版年・出版社:2012年 (株)講談社
コメント:邪馬台国の卑弥呼を題材にした作品である。中国で東夷に蔑んだ漢字を当てていることから、卑弥呼を日御子としている。中国から渡ってきた安曇・安住一族が漢字を駆使し漢語を操る通訳として倭国に広がっている。その通訳の一族の目を通して九州地方の倭国と朝鮮半島北部の楽浪郡、漢や魏との交流が描かれている。残念ながら、今でも使われている地名と、地名がないままに大河とか山とか呼ばれる地域が混在していてわかりにくい。九州に邪馬台国を持っていくなら、川や山も現在の地名を使った方がよかったのではないか。邪馬台国の統治の実態が曖昧だし、卑弥呼が何を信仰する巫女なのかもわからない。古代史を小説にするむずかしさを感じる。
④日韓併合期ベストエッセイ集 面白さ(5点満点):☆☆☆☆
編者:鄭大均 生年・出身地:1948年・岩手県
出版年・出版社:2015年 (株)筑摩書房
コメント:日本人も朝鮮人も40人以上が書いたエッセイである。7つの章に分かれている。
第一章 子どもたちの朝鮮 第二章 朝鮮の少年たち、日本へ行く 第三章 こんな日本人がいた
第四章 出会い八景 第五章 作家たちの朝鮮紀行 第六章 町と風景と自然
第七章 朝鮮を見て、日本をふり返る
多様な切口で当時の朝鮮半島を紹介している。特に金剛山に冬山登山した中学生グループの冒険談は印象的だった。また当時のソウルは青く澄んだ空がある街だと言う記述が散見される。今は工業化によって空気が悪くなったのは残念だ。