『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳11  別れの前後を振り返って

2012-12-31 11:14:14 | 翻訳

 




  

「マークしている候補は誰?私も同じ人に投票する。」<o:p></o:p>

 

彼女の質問に彼は彼女と再会してから食べた鶏の数を数えるように、しばらくしてから口を開いた。<o:p></o:p>

 

「僕はこの火がいつまでも燃え続くだろうと信じたけれど・・・あっけにとられたけど今日の新聞がめらめらと燃えるように短く燃え上がって消えた。どうしてこうなるのかな? 僕の心の中に何かが入り込んでいるのかもしれない。君も僕と同じようだけど、ちゃんと説明してくれない?」<o:p></o:p>

 

「そもそも何のこと?」<o:p></o:p>

 

彼女は頭が痛いという表情をしてから、布団の中に手を押し込んで彼のモノを再び立たせようと一生懸命尽くした。全然回復する気配が見えなくなるや彼の顔を睨んでから布団の中に頭を押し込んで股間に向かって下りて行った。彼は候補が政策討論をしているテレビの画面から目を離さなかった。しかし耳をそばだて目をこらしてもすべてのことが入り混じって区別がつかないだけだった。過去まで混同した。突然、混乱した心を持て余しているときに、彼女が布団を持ち上げて出てきて言い放った。<o:p></o:p>

 

「本当に何!」<o:p></o:p>

 

彼は彼女の怒っている顔を見ていてふとわかった。彼女と彼の逢引において、今初めて誰が大統領になっても関係ないということを。とうとう彼女と彼の記憶がほとんど燃え尽きてしまったことを。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 

 南漢江の畔で受ける風は厳しかった。彼と彼女は急いで小さいうどん屋へ飛び込んだ。練炭ストーブのそばで椅子を引き寄せて座って手をこすった。<o:p></o:p>

 

「寒い! そうじゃない?」<o:p></o:p>

 

「今年の冬になって一番寒いようだわ!」<o:p></o:p>

 

「おばさん、ラーメン二つ、唐辛子をパッと混ぜて辛くして!」<o:p></o:p>

 

「それでもまだ雪が降っていないから運がいいわ。この周囲の道まで凍ってしまったらどうしよう。私はスノータイヤじゃないのよ。」<o:p></o:p>

 

「あのね、僕は去年塾のバスに子供を乗せて行って雪道ですべって、あやうく大きな事故を起こすところだった。運転がうまくてやっと事故を免れたけど。冬はなにしろ気を付けなきゃ!」<o:p></o:p>

 

「そうよね!」<o:p></o:p>

 

彼と彼女は練炭ストーブのそばに座って、本当に辛いラーメンを食べた。窓越に岸辺から中央に凍ってきた南漢江が見えた。コップに入れた水で口の中をゆすいでタバコを吸った。小母さんに頼んでコーヒーまで入れて貰って飲んだ。<o:p></o:p>

 

「行く?」<o:p></o:p>

 

「そうね。行かなきゃ。」<o:p></o:p>

 

彼と彼女はうどん屋の前に立って向こうに駐車してある互いの車を確認した。彼は彼女に言った。<o:p></o:p>

 

「気を付けて!」<o:p></o:p>

 

彼女が答えた。<o:p></o:p>

 

「あなたも。そして・・・いい人に会ってほしい。」<o:p></o:p>

 

土ぼこりが混じった向かい風をかぶったまま、茫然として立っている彼に彼女の小さい手が握手を求めてきた。

<o:p></o:p>                                   ーおわりー

 


翻訳10  別れの前後を振り返って

2012-12-30 17:53:16 | 翻訳

 

 

 

「考えてみると、僕たちは再会してから互いが持っていたものを何一つ捨てなかったようだね。」<o:p></o:p>

 

彼女の顔が素早く左右に揺れた。<o:p></o:p>

 

「ううん、私は捨てようと言ったわ。」<o:p></o:p>

 

彼女の否定に彼は寝そべったまま、困って窓に向かってうなずいた。<o:p></o:p>

 

「でもこうして時折会うのもいいわね。」<o:p></o:p>

 

彼女の妙な同意に彼はその場から起き上がりうなずいた。脱いだズボンのポケットで彼の携帯電話が激しく振動した。携帯電話は振動を止めないまま、再び彼のポケットへ入って行った。<o:p></o:p>

 

「電話に出て。」<o:p></o:p>

 

「出なくてもいい電話だ。」<o:p></o:p>

 

「出てよ! 私に気を遣うふりして電話に出ないのは嫌よ。」<o:p></o:p>

 

 <o:p></o:p>

 

 「今度の大統領は誰がなるのかな?」<o:p></o:p>

 

「誰がなっても関係ないじゃない!」<o:p></o:p>

 

彼女が付け加えた。<o:p></o:p>

 

「そうじゃない?」<o:p></o:p>

 

また始まった大統領選挙が終盤に突入していた。本格的に冬になって彼と彼女は栗の木の村のバンガローと行きつけのモーテルを整理して、新しいモーテルを捜して遊牧民のように転々としていた。二人の心の底で何回か激しい波が過ぎた後から、逢引もかえって穏やかになり回数も増えた。モーテルが互いに違う名前を持っているように、詳しく見ると窓の外の違う風景、違うベッド、違う鏡と違う愛の道具があるということが分かったのだ。<o:p></o:p>

 

「気持ちがもう大統領選挙から遠くなったのだろう。」<o:p></o:p>

 

「皮肉るの?」<o:p></o:p>

 

ウォーターベッドに横たわった彼女が抗議するように、足指を蟹の鋏にして彼の股間をつまんでひねった。<o:p></o:p>

 

「いや、僕も政治には興味ないよ。彼らが本当は僕たちの生活に関心がないように。」<o:p></o:p>

 

彼は彼女の足指に挟まれて全く動かせないモノを救出すると、彼女の体に飛びついた。全国の大都市を巡回しながら遊説をする大統領候補と支持者が張り上げる歓声が後ろの大型ワイドビジョンを通して流れ出た。彼と彼女はその歓声を背景にもつれ合った。彼女はリモコンを手に持ったまま愛を交わした。保守と中道、進歩の歓声が交互に流れ出て、いつの間にか画面はエロ映画に戻って二人の裸を赤く染めた。そのあえぎ声が過ぎ去る前にプリミアリーグの中継放送が部屋を一杯にした。<o:p></o:p>

 

「幸せ!」<o:p></o:p>

 

彼女の共感覚的視聴感想だった。彼は10年前の大統領選挙の時の彼女が吐き捨てた言葉をはっきりと覚えていた。その時から今まで世の中も変わり、彼と彼女も大きく変わった。<o:p></o:p>

 

「不安」から奇妙な「幸福」に移ってくる間のことだった。彼は彼女が浴室でシャワーを浴びる間「幸福」の周辺を注意深く見まわした。ホテルではないけれど、ウォーターベッドは広く快適だった。枕と布団には以前のように他人の髪の毛も陰毛も付いていなかった。窓の外には別の建物の暗く汚い裏側が見えず、美しい秋の山がひときわ高くそびえていた。彼は煙草をくわえてしばらく詳しく調べた。彼女と彼が脱いだ服はそれなりに無難で品が良かった。そしてとうとうシャワーを終えた彼女が白いタオルで肝心な所を覆ったまま現れた。彼女は躊躇せず彼の胸に抱かれた。<o:p></o:p>

 

「幸福。」<o:p></o:p>

 

「僕も。」<o:p></o:p>

 

彼は耳打ちをした彼女に腕枕をしてやりテレビの大統領選挙関連番組を視聴した。<o:p></o:p>

 


翻訳9  別れの前後を振り返って

2012-12-30 17:47:20 | 翻訳

 

彼は少量の酒の勢いで見知らぬ女の嬌声をこっそり聞きながら、しばらく食べた鶏の数を数えてから諦めた。彼はあくびをした。人の目を避けてバンガローのドアを内側から鍵をかけたまま、愛を交わし鶏をむしり酒を飲むことが急に退屈になったからだ。ため息を隠そうと酒を飲み下した。彼女が彼の空っぽの杯に酒を満たした。<o:p></o:p> 

「私達どこか旅行でも行かない?」<o:p></o:p>

 

「何時間かすれば君は家へ行って子供を待たなければならないし、僕も塾で子供達を管理しなければならないじゃない。」<o:p></o:p>

 

「あの海が見たい。」<o:p></o:p>

 

彼と彼女はバンガローの小さい窓越しに降る牡丹雪を眺めて海を思い浮かべた。あの海から離れてから10余年が経過していた。<o:p></o:p>

 

「お金でも解決することができないことがあるようなの。今やっと・・・それがわかったの。」<o:p></o:p>

 

彼女の嘆息だった。彼女の皮膚の所々から赤い花が咲き始めていた。酒と体の状態が互いに食い違った時に生じる症状だった。<o:p></o:p>

 

「モテルに行って少し休まなければならないようだけど。」<o:p></o:p>

 

彼女は首を横に振った。<o:p></o:p>

 

「今日は最後までここで過ごすわ。モテルはあきあきした。」<o:p></o:p>

 

「じゃ、花札でもしない?」<o:p></o:p>

 

「私達が会ってできることはせいぜい鶏を食べて酒を飲んでセックスをして花札をすることしかないじゃない!」<o:p></o:p>

 

彼女が投げた杯は壁に強く当ったが、小さいひび一つつかなかった。彼はその杯をチリ紙で拭いて、また酒を注いで彼女の前においた。乳房は昔より豊満だけれども張りを失い、お腹と腰は上半身の重さに耐えられず、外に突き出て二重のしわを刻んでいた。彼の体も彼女と全く同じだった。腹が蛙の腹のようにぷくっと飛び出し、髪は微風でも頭から抜けて花粉のようにぱらぱらと飛び回った。<o:p></o:p>

 

「そうね、花札をしましょう。」<o:p></o:p>

 

彼女は御膳を押しのけてさっき二人が愛を交わしていた軍用毛布を持ってきて床に敷いた。一人は裸で一人は服を着た妙な構図だった。彼は胡坐をかいた彼女の股間をまじまじと眺めた。             <o:p></o:p>

 

「あなたが負ければ一枚ずつ服を脱いで、私が勝てば一枚ずつ服を着るっていう賭けよ。」<o:p></o:p>

 

「何か不公平じゃない?」<o:p></o:p>

 

「何、どうでもいいじゃない!」<o:p></o:p>

 

窓の外の雪は牡丹雪からあられに変化していた。10余年前あの海から離れた後の風景だった。あの時は床で取る札がなくて息が切れたけれど、10余年後の情景は取るものが多すぎて問題だった。<o:p></o:p>

 

「君が負けたらどうするの?」<o:p></o:p>

 

「そのままよ、どうするって。あなたはおばさんの裸を思う存分堪能するのよ。」<o:p></o:p>

 

隣のバンガローからもう一度女の嬌声が起こった。栗がすべて落ち、雪が降る栗の林のバンガローの中で人々は囲炉裏を囲んで香ばしい栗を焼いて食べているようだった。彼が裸になると彼女が服を着て、また彼女が裸に戻ると彼は服をまとった。<o:p></o:p>

 

「こうしてある日・・・私達は何事もなく別れるでしょう。」<o:p></o:p>

 

「そうだね。」<o:p></o:p>

 

短い返事と一緒に彼は温まった酒を空にした。<o:p></o:p>

 

「些細な理由で逢引をしなくなって、いつのまにかはるか昔のように忘れてしまうはず。そうしてふと思い出すとまた何度か会って・・・」<o:p></o:p>

 

彼と彼女は敷布団の上の花札を片づけもせずに、その上で潤いのない愛を交わし始めた。背中とお尻、内ももに鮮やかな花札の痕跡を何か所も残してからやっと愛を終えた。窓の外の雪は牡丹雪に戻ってきたけれど、酒の勢いが消えた二人の裸には水滴が一滴も入っていないようだった。<o:p></o:p>

 

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読書感想43  永遠の出口

2012-12-30 17:24:20 | 小説(日本)

 

著者      森絵都<o:p></o:p>

 

生年      1968<o:p></o:p>

 

出身      東京都<o:p></o:p>

 

初版本     2003<o:p></o:p>

 

出版社     集英社<o:p></o:p>

 

価格      552円(税別)<o:p></o:p>

 

        (集英社文庫)<o:p></o:p>

 

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感想<o:p></o:p>

 

 小学3年生から高校卒業までのエピソードを1章から9章で、エピローグでは後日談を綴っている。各章の内容を要約してみると、次のようになる。<o:p></o:p>

 

1章 永遠の出口<o:p></o:p>

 

 小学校3年生のお誕生日会をめぐる同級生との葛藤。お誕生日会に招待しながらケーキも料理も出さないで、プレゼントだけもらうを友達を、仲間たちがお誕生日会に招待しないことにする。そして主人公の誕生日が来る。<o:p></o:p>

 

2章 黒い魔法とコッペパン<o:p></o:p>

 

 小学5年生の担任、ベテランの女教師の競争・成績至上主義と悪い子を襲うという黒魔女のような恐ろしい話、逆らう生徒への容赦のない制裁に萎縮していた生徒たちが、黒魔女の呪いからどうしたら解放されるのか。<o:p></o:p>

 

3章 春のあなぽこ<o:p></o:p>

 

 私立中学へ行く友達と地元の公立中学に進学する主人公とのデパートショッピング。友達に仲良しの男の子を取られてしまった苦さもある。<o:p></o:p>

 

4章 DREAM RED WINE<o:p></o:p>

 

 中学1年生の主人公が、建て前だけで語る友人や母親に対して、正直に本音で語る不良のたまり場に逃げ込んでしまう。<o:p></o:p>

 

5章 遠い瞳<o:p></o:p>

 

 不良のたまり場に入り浸っているうちに、万引きが常習化してしまい、ついに捕まってしまう。親しかったお姉さんも不良のたまり場から去ったのを潮に不良をやめる。<o:p></o:p>

 

6章 時の雨<o:p></o:p>

 

 高校受験を控えた11月の末、大学受験を控えた姉と、両親と一緒に別府温泉に家族旅行をすることになる。両親はお互いに顔を合わせようともしない。姉によると原因は父の浮気、両親は離婚の危機にあるという。<o:p></o:p>

 

7章 放課後の巣<o:p></o:p>

 

 高校に入ってアルバイトを始めた主人公は、残り物のケーキを無料でもらえるのに、初めての給料でケーキを買って帰る。しかし楽しいアルバイトの職場はぎすぎすしたものに変質して、主人公もやめる。<o:p></o:p>

 

8章 恋<o:p></o:p>

 

 高校2年生はみな熱病にかかったように恋していた。そして主人公も恋をした。しかしあえなく別な彼女が現れて振られてしまった。<o:p></o:p>

 

9章 卒業<o:p></o:p>

 

 高校3年生の主人公は大学進学組でもなく、就職組でもない将来未定組とつるんでいる。仲間に誘われて天文部の星空観望会の助っ人、スターウォッチャーズに応募する。4週間、週3回の講習を受ける。地球が50億年後に消滅する話を聞いてショックを受ける。姉との別れ、幼馴染との別れがある。デザイナーになろうと美大を受験して失敗する。<o:p></o:p>

 

エピローグ<o:p></o:p>

 

 1年後に美大に入るが中退し、紆余曲折の末デザイナーになる。私生活は不倫、結婚、離婚を経験してますます意気盛ん。<o:p></o:p>

 

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 主人公が大人の振りかざす建て前に傷つき、本音で正直に生きて行こうとするのが軸になっている。友達や恋人の本音に傷つきながらも、どんどん自由になって行く。自由で寛大な人間関係を作ってひきこもりにならないところがいい。(20121214日読了)<o:p></o:p>

 

わがまま評価(5点満点)<o:p></o:p>

 

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爽やかさ   ☆☆☆☆<o:p></o:p>

 

面白さ    ☆☆☆☆<o:p></o:p>

 

青春らしさ  ☆☆☆☆<o:p></o:p>

 

人物造型度  ☆☆☆<o:p></o:p>

 

荒唐無稽度  ☆☆☆<o:p></o:p>

 


そぞろ歩き韓国340  東京駅

2012-12-29 21:46:44 | まち歩き

67年ぶりに復元された東京駅へ行く。

人気のスポットなのでカメラを持った人がいっぱい。
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丸の内中央口前。

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丸の内中央口から北口にかけて。

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東京ステーションホテル入口から丸の内南口にかけて。

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東京ステーションホテルの入口。2階3階はホテルになっている。

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丸の内南口の改札口が突き当りにある。ここはホール。

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丸の内南口のホールの天井。明り取りの窓もある。

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改札の中にある売店。お菓子のお店。
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駅弁屋祭
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東日本大震災の被災地三陸からの駅弁。

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各地の駅弁。どれも食べたくなる。

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鶏肉や豚肉の入った駅弁。

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東京駅の横にある東京中央郵便局。古い建物を一部残して建築中。
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東京駅の前。左が丸ビル、右が新丸ビル。
東京駅の風景もすっかり変わった。
以上をもちまして「そぞろ歩き韓国」も終わります。1年以上見てくださってありがとうございました。