
読書感想142 安南からの刺客
著者 佐伯康英
生年 1942年(昭和17年)
出身地 北九州市
出版年月日 2014年(平成26年)6月1日
出版社 (株)新潮社
感想
本書は『新・古着屋総兵衛第8巻』に当たる。本書の主人公は10代目大黒屋総兵衛、裏の顔は隠れ旗本の鳶沢総兵衛勝臣。6代目総兵衛がヴェトナムの地に遺した落し胤の子孫、グエン・ヴァン・キである。グエン・ヴァン・キはヴェトナムの地で起きた政争から逃れて今坂一族と、帆船イマサカ号に乗って日本にやってきて、後継者を探していた大黒屋・鳶沢一族によって10代目総兵衛に推挙されたのだ。数々の困難を乗り越えたグエン・ヴァン・キの前に新たな敵が登場する。京都から戻ってきた日に大黒屋を見張る目に気づいた総兵衛は、薩摩の密偵から転んだ北郷陰吉に探索を命ずる。総兵衛を襲った刺客が残していった武器は異国のグルカの民が使う刃物だった。近づく古着大市の日、無事に開催できるのだろうか。
このシリーズではおなじみの人々もたくさんいるが、毎回新しい事件と絡んで新しい登場人物が出てくる。それが楽しみでもある。前回は京都、今回はほとんど江戸の市中での出来事に終始しているが、ヴェトナムへ行く日も間近という気配が漂ってくる。主人公がヴェトナム人である以上、日本はもう既に狭い枠でしかない。