群花の中から豪奢な一輪を選べば、豊饒で色鮮やかな花を是とする西洋的美意識の域を出ない。さりながら群花の対極にある一輪だけを追い求めれば、群花があってこその衒いである。“全体”が其処に顕現する“影向の花”なればこそ、一輪が広大無辺に直通する。
いけばなで花や枝葉を機械的に間引いて落とせば、ただ物淋しい貧相なだけの花に終わる。日本文化の特徴として挙げられる「引き算」、「省略」を用いて勝機を得て完結される美学において、これらの手法はあくまで戦術である。削除ではなく截断する刹那、啐啄同時に超出するものがなければ無意義である。