花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

人の音せぬ暁に│花便り

2021-10-23 | アート・文化


少なくとも、近代人における基本的対立が内部と外部との対立であるとすれば、古代人における基本的対立は夜と昼との対立-----あるいはそれにつながるもろもろの対立-----であったことは確かである。真の夜の静寂や闇黒、そこにただよう神秘や恐怖を、われわれはもう経験できなくなっている。われわれの経験では、夜と昼との対立は明確な輪郭を失い、いわばなしくずしに昼が夜になっていき、夜が昼になっていく。古代人が夜寝て見る夢によって受けた衝撃の深さのほどを思いやることが出来なくなったのも、生活のありようのこうした違いに妨げられている点があるであろう。

(第三章 長谷寺の夢/夜と大地│西郷信綱著:「古代人と夢」, p108, 平凡社, 1974)