花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

大和未生流山辺支部の花

2019-11-04 | 日記・エッセイ


大和未生流山辺支部の花展が奈良市都祁交流センターで開催された。文化の日、御家元、流派の参加者一同を載せたバスは近鉄奈良駅前を出発、名阪国道を経由して一路、都祁まつりが賑やかに開催されているセンターに向かった。都祁は奈良県北東部の大和高原に位置し、2005年に都祁村から奈良市に編入となった自然に恵まれた地である。
 都祁の山野に生ふる草木や丹精込めて庭でお育てになった花々をお生けになるのが山辺支部である。一般に自然のままの個性に溢れた花材は、生ける側にとってより技量を量られる怖い素材である。基本の型を外さず、花材のあるがままの癖を曲と為していかに活かすか、選ばれた花材の個性と生ける側の個性がせめぎ合う緊張の中からこの様ないけばなの優品が生まれてくるのだろう。会場に居並ぶ作品群の全てにおいて、都祁の自然の中で育まれた繊細な感性が掬い取った秋が紛れもなく色濃く息づいていた。
 そして昨今は流派を問わず、多くの花展は会場内を西洋風に歩きながら上から見下ろして拝見するのが趨勢であるが、山辺支部の花展は畳が敷き詰められた日本間が会場であった。辞する直前、床拝見の如く改めて正面に坐して拝した時に、一つ一つの作品の様相がまるで違って見えた。その後お聞かせ下さったのは座してお入れになった花であるとのことである。花を挿す方も観る方も洋風に立位になった現代、何時しか忘れかけていた日本古来のいけばなの姿勢と眼を学ばせて頂いた花展であった。