花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

紫茉莉根(しまつりこん)│オシロイバナ

2019-10-21 | 漢方の世界

鈴木其一 白蔵司・紅花・白粉花図 三幅対, 東京国立博物館蔵│「鈴木其一 江戸琳派の旗手」展図録, p204, 2016

「紫茉莉根」は、オシロイバナ科、オシロイバナ属の多年草オシロイバナ(御白粉花、夕錦、洗澡花、紫茉莉)、学名Mirabilis jalapa L.の根から得られる生薬である。花期は8~9月で、紅・白・黄色や絞りの集散花序で漏斗状の花を咲かせる。果実は黒色の堅い円形の種子に結実し、内部に粉状の胚乳を含むためにオシロイバナの名が生まれた。夕錦や夕化粧の名は夏の夕暮れに開花することからの名称である。子供の頃に黒い種子をよく潰して遊んだものだが、全草有毒で特に根や種子に毒性があり、誤食で食中毒を来し嘔吐や下痢をおこすので注意が必要である。オシロイバナ、マメ科コロハ属の一年草コロハ(胡蘆巴、学名Trigonella foenum-graecum L.)、そしてコーヒー豆などの多くの植物に含まれるトリゴネリン(trigonelline)はアルカロイドの一種で、近年、薬理学的有効性が研究報告されている。



「紫茉莉根」の薬性は甘、淡、微寒、効能は尿路感染症、関節炎を対象とした清熱利湿、解毒活血である。脾胃虚寒や妊婦には禁忌である。他の部位は、「紫茉莉花」(花)の薬性が微甘、凉、効能は潤肺、凉血であり、「紫茉莉葉」(葉)の薬性は甘、淡、凉、効能は清熱解毒、祛湿活血、そして「紫茉莉子」(果実・種子)の薬性は微寒、凉、効能は清熱化痰、利湿解毒である。
 

吼噦 / 月岡芳年「月百姿」/ 13 The cry of the fox Konkai
Stevenson J: Yoshitoshi’s one hundred aspects of the moon, Hotei Publishing, 2001