花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

灰汁(あく)取りを談じる│華展の道具・番外編

2018-09-17 | 日記・エッセイ


いけばなで用いる花鋏、専用の鋸の重要性は今更言うまでもない。華展ともなればその他にも様々な道具が必要になる。その一つが花器の水面に浮かぶ塵を掬う「灰汁取り」である。料理では細かいメッシュを張ったおたまで灰汁を掬い取り、水を入れた容器の中で洗い落としてまた次を掬うというのが通常である。華展会場ではその都度水で洗うという手間をなくしたい。何よりもうっかり水をこぼして会場を汚す可能性のある容器は省きたい。華展における「灰汁取り」に課せられた使命はいかにそれ単独で手早く拾い取れるかにある。



「灰汁取り」は業務用、家庭用、卓上用と実に色々な形状がある。掬う部分が浅いと塵が流れやすく、反対に深すぎると水盤の底にあたる。①、②は方形やいびつな形の水盤において角の塵を掬いにくい。また連続して水面に差し入れると一旦掬った塵がまた水面上に拡散しがちである。③は掬った塵が中央のメッシュ上に捕捉される構造で、塵の流れ出しが少ない。最近求めた④はメッシュと嘴状の横口構造で、花器の隅に溜まった塵を掬い易そうである。元来、料理用の「灰汁取り」をいけばなに流用したので、柄の長さや彎曲具合など微妙なところでいまだ今一勝手が悪い。

いけばなの本質から離れた事柄をかくも熱く自問自答かと、ここまで書いた所で些か自嘲を感じたが、いやそうではない。医者も職人である。本業の大切な処置・手術に用いる器具に対する姿勢と何ら変わらず、何をするにも自分の道具に拘る気持ちを失ってなんとする。最後の④はいまだ実地の使用経験はなく、いずれ必ず検証する心積もりである。道具の選択とともに心すべき事は、「照らし合せ見しに」、「拾ひとりてかずかず見しに」の実証主義に基づく検証である。