花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

冬至の養生

2015-12-22 | 二十四節気の養生


冬至(12月22日)は、二十四節気の第22番目の節気である。北半球では昼が最も短く、夜が最も長くなる。易経の六十四卦(か)の中では、帰る、元に復するという意の「地雷復(ちらいふく)」が冬至に相当する。「地雷復」は外卦(がいか)の卦名が坤(正象は地)、内卦(ないか)の卦名が震(正象は雷)から成り、雷が地中に在ることを表す大成卦である。一番下の初爻(しょこう)が陽爻で一陽が生じ、陽気が芽生えたばかりの一陽来復を示している。冬至はいまだ冬の節気であるが、すでに春に向かってのカウントダウンが始まっている。陽が健やかに伸長して、ふたたび明るく健やかで正しいものが戻る、事を進めて行ってよろしいという意の卦が「地雷復」である。天人合一の考えでは大自然と人は一つの統一体であり、人の体内における陽気の動態も天地自然に呼応し、冬至からは陽気が次第に長じてゆく。春から始まり、夏、秋の季節を経て、冬は気血の消耗、陰陽失調が出現しやすい季節である。陽が芽生え始めた冬至は、気虚、血虚、陽虚および陰虚の各々の体質に合わせ、食養生含めて補を行なうのに相応しい時節である。
 また1年を1日に置き換えて考えれば、「十二時辰(じゅうにじしん)」(1日を2時間おきの12に分ける時法)では、23時から1時の間の「子の刻」が人体の陽気が生じ始める時間に相当する。芽生え始めた陽気をいたずらに消散させないためには、就寝時間は23時を過ぎない様にしたい。秋と冬の就寝は、陽気を内に収束させ保持すべき夜の時間を増やすために、春と夏よりもさらに早く床に着く「早臥」が望ましい。
 いまだ寒風吹きすさぶ中、春の先取りと申して春物の薄着を纏うはやり過ぎの酔狂であるが、衣替えは季節の先取りが粋である。季節の養生も当季だけではなく、次の季節を、さらにはその次に続く季節をも見越して心身を整えて行かねばならない。

やまでらのさむきくりやのともしびに ゆげたちしらむいものかゆかな    自註鹿鳴集 会津八一