中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

鬼滅を語る

2020-12-29 23:40:00 | 読書
娘が友達から借りてきた「鬼滅の刃」最終巻を読ませてもらいました。

 第23巻。

 空前の人気の中で、スパッと終わるというのも、なかなか潔くて好感が持てますね。「〇〇編スタート」とか言って、いくらでも続けることはできたと思いますが、それをしなかったのは良かったと思います。きちんとテーマが完結した感じがします。

 人の「恨み」というものは、いつまでも残る。しかしそれに囚われず、逆に新たな力として昇華できた者の勇気は、後の世代に伝わって、人間の財産となる。 

 テーマとしてはこんな感じでしょうか。

 「いつまでも残る恨み」というものが「鬼」なわけです。それは、どこかできちんと首を切るか陽の光にさらして「成仏」させなければならない。そうしないと、夜ごとに再生して、いつまでも生き続けてしまう。

 それを倒すのは、同じかさらなる不遇な中に生きて、その逆境をどうにか乗り越えた者にしかできない。

 この物語の成功の秘訣は、そうした「恨み」や「不遇」をきちんと描くことで、読む人の共感を確保し、話の深みを出したことに尽きると思います。

 「悪者」も「良い者」も、それなりのやむに止まれぬ事情があってのことなのです。

 それがまたきちんと、なかなか魅力的なキャラクターとして成立しているところが、ヒットの要因でしょうね。

 「13日の金曜日」だって、ジェイソンの辛い生い立ちとか、悲しい挫折とか、チェンソーとの忘れられない出会いとか、その辺りを丁寧に描写したら、もっと違ったかも知れません。あのマスクが飛ぶように売れたりとか。

 シェイクスピアだってそうです。「マクベス」を読んでも、「ああ…奥さんの言いなりになって大罪を犯すマクベス。でもわかるよ、その気持ち!」と思わされるところが素晴らしいのです。

 とくに目新しいところはないはずの漫画なのですが、そのあたりを丁寧にやり尽くしたところに、成功のポイントがあるように思います。


 なかなか面白い漫画でした。

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