中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

東の麓「神理」

2020-10-30 23:36:00 | お酒の話し(山形県)
 行きつけの酒屋の、今月の頒布会のレア酒。南陽市の銘酒「東の麓」から「神理」。

 何かの宗教的な用語ではありません。「神理」と書いて「じんまさし」。杜氏さんの名前です。本名とは思えませんが、何ともかっこいい、神わざを持った職人でしかありえないようなお名前です。

 じつは、山形にたくさんある蔵の中で、私が苦手な蔵がいくつかあります。どうしても合わない。ハイグレードのものを飲んでみても、良いと思えないのです。これは、もはや生理的なものかと諦めています。…「東の麓」もそのひとつ。

 酵母のせいでしょうか、特有の香りがあって、それがどうしても肌に合わない。かなり値の張る高級酒も試してみたこともありましたが、ひと口飲んで料理用へ。…誰が何と言おうと、嫌なものは嫌なのです。

 なので「東の麓」は、長年の間ひたすら敬遠してきました。今回この頒布会のラインナップを見て、正直「困ったな」と思っていたのでした。「神理って言われても…」。

 しかし、調べてみると、この神理さんという杜氏は、数年前に、庄内のあの銘醸「東北泉」から引き抜かれて来た名人らしい。

 名人が自分の名前を冠するほどの作品となれば、敬意表して味わってみることに異存は無い。

 ということで開栓。

 ん…あの苦手な香りがしない!そして飲んでみると…これはすごい。

 今までの東の麓の、「まろやかさ」を活かしながら、臭み(失礼)と、もったりした重さ(これも失礼)を完全に取り除いて、充実した旨みに変えています。舌に吸い付いてくるような、粘り気のある果物のような香気とほのかな甘み。それが、キメの細かいかき氷のように、喉に融けて消える。どうしても、もう一度味わいたくて、また飲んでしまう。

 指揮者が変わると、音はもちろん雰囲気も、何もかも変わるわけですが、それと似たようなことが、杜氏に関して言えるのだということがわかりました。これから「東の麓」も、もう一度見直さないといけない。

 まさに、神わざを堪能しました。

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