雨月(うげつ)
藤沢周 著
2002年
光文社 刊 ISBN4-334-92371-2
読了してもう何週間も経っているので細部は覚えていないから印象もぼやけたものになるのはしかたがないが、けれど、それを思い出しながら要点を記す。
二十代なかごろの青年が東京鶯谷の連れ込みホテル、曖昧宿、ラブホなどと言われるところで働いておりそこでの人間模様に奇妙な人物を投じて現代的な性の舞台と態様で読者を引っ張りながら読了後にニヤリとさせるような仕掛けである。
これで思い起こすのは一昨年だったか「新潮」に連載されていた村上春樹の「東京奇譚集 」なのだが村上の方は別段毒にもクスリにもならないものだったのだが藤沢のものは老婆と、いるかいないかわからないような痩躯の若い女性の残像が後味として残る。
この2年ほど「文学界」だったかに単発的に掲載される藤沢のものに興味が惹かれるがこれらは藤沢の持ち味である、現代的な浪曲とでもいおうか、苦味と、精神がはじけそうな、神経がひきつりきれそうな瞬間までゆくプロセスとなりゆき任せ気味になる主人公に焦点があたっているからで、それでは本作ではどうかというと主人公にはそういう性格が与えられてはおらず、雨月物語の本歌取りなのか女にスポットがあたっているようで男はどちらかというと受身である。 現に主人公に圧力をかけるヤクザにもはっきりとした存在感がみあたらない。
文学雑誌掲載作にくらべて内面の切り込みが柔らかく感じられるのは掲載誌の読者を想定したからか、出来た作品が軽量級のものだったからからなのか判断が付きかねるがいずれにせよ文学雑誌の合評にとりあげられる(た)ものかどうか興味のあるところだ。
藤沢周 著
2002年
光文社 刊 ISBN4-334-92371-2
読了してもう何週間も経っているので細部は覚えていないから印象もぼやけたものになるのはしかたがないが、けれど、それを思い出しながら要点を記す。
二十代なかごろの青年が東京鶯谷の連れ込みホテル、曖昧宿、ラブホなどと言われるところで働いておりそこでの人間模様に奇妙な人物を投じて現代的な性の舞台と態様で読者を引っ張りながら読了後にニヤリとさせるような仕掛けである。
これで思い起こすのは一昨年だったか「新潮」に連載されていた村上春樹の「東京奇譚集 」なのだが村上の方は別段毒にもクスリにもならないものだったのだが藤沢のものは老婆と、いるかいないかわからないような痩躯の若い女性の残像が後味として残る。
この2年ほど「文学界」だったかに単発的に掲載される藤沢のものに興味が惹かれるがこれらは藤沢の持ち味である、現代的な浪曲とでもいおうか、苦味と、精神がはじけそうな、神経がひきつりきれそうな瞬間までゆくプロセスとなりゆき任せ気味になる主人公に焦点があたっているからで、それでは本作ではどうかというと主人公にはそういう性格が与えられてはおらず、雨月物語の本歌取りなのか女にスポットがあたっているようで男はどちらかというと受身である。 現に主人公に圧力をかけるヤクザにもはっきりとした存在感がみあたらない。
文学雑誌掲載作にくらべて内面の切り込みが柔らかく感じられるのは掲載誌の読者を想定したからか、出来た作品が軽量級のものだったからからなのか判断が付きかねるがいずれにせよ文学雑誌の合評にとりあげられる(た)ものかどうか興味のあるところだ。