観測にまつわる問題

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魔の書「投資なんか、おやめなさい」

2018-06-27 10:31:49 | レビュー/感想
「投資なんか、おやめなさい」 (新潮新書 荻原博子 2017/9/14)という本がありますが、事実関係等いろいろ疑義が出ているにせよ、注意すべき魔の書だと思います。本屋で以前見かけて購入して放置していましたが、インフレ目標との絡みで今言及します。

結局投資は儲からないという話に過ぎないのですが、残念ながら的を得ている部分もあります。それは皆大体分かっているのですが、指摘されると予言の自己成就効果もありますし、日本にとってマイナスなのは明らかなので、普通は指摘しないようにしている話です。デフレマインドが問題にされているのに、デフレマインドを強化するような効果を持っていると言えます。

デフレだと預金にマイナス金利がつけられませんし、つけられたとしてもタンス預金に逃げられますので、金を使わないことが有利になり、更に皆が金を使わなくなり、経済が停滞します。これがデフレスパイラルで日本が地獄に片足つっこんで息を吹き返したのは安倍政権の金融緩和のおかげだと思います。野党・マスコミがくだらない話にうつつを抜かしている間に、重要な政策議論は政治で全く行われず、国民は未だに何となく分かっていないような感じのままになっています。政府与党は分かっているのかと思いきや、そうでもないようだということが最近判明してガッカリしているところです。

経済が安定的に緩やかなインフレ状態であることは極めて重要であり、失業率などよりよほど重要なことは明らかだと思います。デフレ状態で金を使わない以上の投資案件はほぼありません。この時点で完全にアウト、三途の川を渡っている(レッドラインを超えている)としかいいようがありません。これを避けるために存在しているのがインフレ目標でしょう。

中央銀行がインフレに誘導できるかどうかに議論はあっていいと思いますが、緩やかなインフレを諦める・緩やかなインフレ以上に失業率が大事だなどと話を逸らすのは経済の死・衰退を認めることと同義だと考えます。ブレを考えるとゼロパーセントを目指すも有り得ません。安定的に物価が上昇すると皆が確信することでデフレマインドは払拭され、金を使わないことが投資だなどという亡国の考えを撃退できると思います。止ったら死ぬのが経済なのであって、中国は共産主義経済という確実な死から逃れて発展してきました(あれほどの大国も共産主義経済の元では些かも発展していません)。

こうした考えに感情的な反発はあるかもしれませんが、デフレが分かっていて投資する奴は馬鹿だに同意しない人がいるとは思えません。金を使わなければ価値が増えていくことが分かっているのに、価格が下落傾向にあるものに手を出して価値を増やせると考える人が存在するでしょうか?

問題を誤魔化さずに正しいものは正しい、事実は事実と認める態度が今重要だと考えています。

個人の利益の追及が必ずしも個人の利益に繋がるとは限りません。個人が利益を追求することで、集団の利益が損なわれ、結果個人の利益が損なわれることがあります。こうしたことを合成の誤謬と言い、「デフレで構わない、金を使わないから」が日本を破滅させた結果、自分(日本人)に返ってくると指摘しています。外国人は帰るところがありますが、日本人に帰るところはありません。政治が緩やかなインフレを目指さないことの背景に反日思想・愛国心の欠如・戦後レジームの存在があって、これを払拭しない限り日本は衰退・破滅に向かうだろうと確信しており、今現在流れが転換したとは言えないと認識しています(安倍政権と言えども少し残念な感じで、他はもっと不味いと考えています)。

「デフレは有り得ない(つまり緩やかなインフレしかない)。金を使わなくなり、経済が死ぬから」という認識が広まり、政策に反映されるか否かが日本(人)の命運を握るでしょう。願望と事実が必ずしも一致する訳ではありません。

だからと言ってどんなものでも公共投資をすればOKみたいな放漫経営を推奨している訳では勿論ありませんが、それはここではこれ以上追求しません。


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1 コメント

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Unknown (管理人)
2018-06-27 11:33:31
経済が駄目だと思われると、外交も中々上手くいかないところがあるでしょう。北朝鮮だって金を引き出せないと思うかもしれませんし、GDP2%も安全保障に使えるだろうかと疑念が生じ、日本の領域をうろつくならずものどもが調子に乗ることになると考えられます。
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