観測にまつわる問題

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争いと道理(ブレアビヒアにおける交戦)

2011-02-05 12:10:39 | 政策関連メモ
カンボジアとタイの衝突のニュース

アジアの外交安全保障に関わるニュースは自分としては関心の高いところ。タイは日本の伝統的な友好国で、タイから見て日本は貿易額、投資額、援助額ともに第一位であり、カンボジアの最大の援助国も日本である。両国が衝突して潰しあうことは日本から見ても望ましいことではない。日本がアジア外交で存在感を出すことで、国益上有利になることもあるだろう。

>タイのガシット外相が4日、カンボジアを訪問してホー・ナムホン副首相兼外相と会談、軍事衝突回避で一致した直後に死傷者を出す交戦が発生したことで、両国関係は一段と悪化する恐れがある。

事件そのものに関しては、衝突回避で一致した以上、カンボジア・タイ政府の少なくともどちらかが嘘をついたか軍を統制しきれていないということであり、事件の全容解明が極めて重要だと指摘できる。当事者同士が衝突の回避の約束を守れないのであれば、第三者にできることはほとんどない。国際社会はまずは約束を守るべきとの前提で互いに一致協力していくことを確認するべきだろう。約束とは守られることが前提である。守る気がないのに約束したのであれば、これは批難されてもしょうがない。あるいは守る気はあったが、軍が勝手にやったならこれはこれで問題だ。政府つまりは国民が軍を統制しなければならない。軍を統制できない政府と話し合ってもあまり意味が無い。

ブレアビヒア問題そのものに関しては、タイには悪いが、自分はカンボジアに同情的である。クメール人の遺跡はクメール人が管理した方がベターだろうという単純な発想からである。もうひとつ見逃せないのは、国際司法裁判所でブレアビヒア寺院に関しカンボジアの主権が認められていることである。タイ側がこれを不服としているが、これは認められない。合意の上で裁判をして結果が出て、これを気に入らないから従わないとしたら、裁判の意味が無いからである。タイは裁判の結果に従うことを前提に裁判を受け入れたのであり、不利な結果を認めたくないなら、裁判を受けないという選択肢しかなかった。結果が出てからではもう遅い。ただ、寺院周辺の土地の帰属は決定していないのだから、そこはタイも交渉の余地がある。まずは、受けた裁判を否定する主張を止めてから交渉するべきだろう。ただ、よく分らないのが、裁判にタイが反対したかのような解説である。

>タイ側は先決的抗弁を提出し、国際司法裁判所に管轄権はないと争ったが、1961年5月26日に国際司法裁判所は自らの管轄権を肯定した。(ウィキペディア2011-02-05 12:10:39「プレア・ビヘア寺院事件」)

しかし、国際司法裁判所は互いに同意しなければ、裁判は開始されないはずだ。

タイ側に同情するべき点は、地形的な問題だろう。地形的には、崖がカンボジア側にあり、ブレアビヒアは国境にあってもタイ側にあると言っていいようである。これはどうもクメール人の王国が強大だった頃につくられたものらしい。しかし、かつての故地は自分のものとの主張がまかり通れば、国際社会は戦乱の泥沼に陥るしかない。コソボ問題がいい例である(伝統を主張するという意味で、セルビアの立場がカンボジアの立場に似ている)。自分は伝統は出来れば重視したい方だが、伝統だけで国際社会が動くと思っているわけでは勿論ない。勝ち残った国が伝統をつくっているというのが国際社会の現実だということを踏まえていかなければならない。

カンボジアもタイ側への理解が必要だろう。

蛇足だが、尖閣諸島の問題にも触れておく。自分は歴史的にも中国の領土になったことはないし、縁も深くないと見切っている(その内また記事にする)が、仮に尖閣が中国領だったと仮定しても、尖閣は中国領では有り得ない。日本の「実効支配」を長く認めたからに他ならない。それが現行の国際的秩序というものである。中国は武力その他の手段で日本から尖閣を盗もうとしているが、強い国が道理を無視して実力で土地を奪うという世界は殺伐としたものになるだろう。昔はそうだったが、大戦の惨禍もあり、今はそうではなくなっている。残念ながら日本に力は無い。これを逆行させないことは、日本の国益であり、国際社会の利益にも合致すると確信している。

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