観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「多重下請」「住宅」「相続」「農業」「医者の給与」「解雇規制」「株高で円高」を考察する予定。

どうなる?インボイス

2023-09-07 02:51:20 | 経済財政
現状で免税事業者(課税売上高が1,000万円以下の事業者)は消費税を免税されています。しかし、消費税の納入義務が無い免税事業者であっても、消費税を請求することは合法であって、免税事業者が消費税を請求している事例は多々見受けられます。インボイスの導入によって、大手と取引のある免税事業者は免税事業者のままでいるか、課税事業者になるかの選択を迫られます。課税事業者になれば、消費税を納めることになり、免税事業者のままでいるなら、大手がその分の消費税を負担してくれなければ、取引先を課税業者に変える可能性が出てきます。あるいは消費税分の値引きを迫られるかもしれません。ここで注意すべきなのは仕入税額控除の制度であり、消費税の二重課税は発生しませんから、その意味でインボイスの導入が消費者の負担増になることはありません。免税事業者からの購入も無論、そのままです。免税事業者が課税事業者に変われば、無論消費税は新たに発生しますが、販売先が消費者のみの事業者が課税事業者に変わる必要はなく、法人の接待需要がある(売上が1000万円以下の)飲食店等で、消費税をとってなかったケースでは消費税をとるケースが出てくるかもしれないといったところでしょう(飲食店を経営するには年間1,000~2,000万円程度の売上が必要なようです)。なおインボイスの導入にあたって、小規模事業者に支援措置(財務省)がとられており、令和5年10月1日~令和8年9月30日を含む課税期間は減税され、インボイス制度に対応しているレジや会計ソフト等に補助金も出ます。なお、(仕入れ率が高い)小売業界の従業員一人あたりの売上高は平均2023万円(中小企業では1451万円)あり、元々課税事業者が多いのではないかと思われます。日本では、接客・給仕はそこそこ人手不足なので、政府が緩やかなインフレ誘導して(デフレマインドが問題です)、消費を刺激すれば、これまで出来なかった価格に転嫁が可能になり、賃金は上昇していくはずです。日本のサービス業は生産性がアメリカの半分と言われてきましたが、ザックリ言って、労働者の能力が半分なのではなく、価格が半分だから、売上も半分で、生産性も半分なのでしょう。日本だけ賃金が上がらなかったのもこの辺です。物価が上がったら賃金が上がっても意味が無いと思うかもしれませんが、実質賃金が上がってない訳です。これまで価格転嫁できなかったのは、デフレマインドで貯蓄志向だったからです(政府の国債発行だけ積みあがってしまいました)。貯蓄しても目減りするとなったら、日本人も無理に節約しないはずでしょう。つまり政府が緩やかにインフレ誘導するなら(どうインフレ誘導するべきかはここでは詳述しません)、消費は刺激され、人手不足の民間サービスは価格転嫁が可能になり、生産性も上昇していくと思われます。小売業で淘汰が無いとは言いませんが、相対的に生産性が高い企業が淘汰される可能性はほとんどないでしょう。こうした経済状況を前提にインボイスで仮に小規模事業者が廃業したとして、働き手が供給され、過当競争が解消に向かい、価格転嫁が可能になると考えていいと思います。これに対して有効求人倍率が低い人気業界は相対的に沈むでしょうし、(激変は避けながら)(緩やかな上昇が急激な上昇に追いつかないという形で)沈ませた方が経済は好調になるはずです(日本のバブル期以降の不調は終身雇用年功序列制です。バブル期までは皆若かったから問題が発覚しませんでした)。教員の待遇改善/給与上げとかは罠です(非正規は正規にすればいいと思いますが)。採用倍率が高いということは、有効求人倍率が低い(求職者数が多い)ということでしょう。(受験ではなく)仕事は試験があって難関が給与が高くあるべきというのが罠で、(食べられない仕事は別として)人のやりたがらない仕事が給与が高くあるべきなんです。それとは別に儲かっている企業は高い給料を出して良い人材を集めてもいいでしょう。公務員は必要ですが、基本、儲ける業界ではありません。優秀な人材が必要ないとは言いませんが、勘所は抑えるべきであって、公務員を優遇して経済が成長したのような公務員経済は有り得ません。あったら共産主義が勝っています。

また、一人親方等、取引先が(大手)事業者の建設業従事者に関して言えば、人手不足局面(供給過少)で案外強い立場にあると思われます(代わりを請け負う労働者がなく、仕事が無くなる恐れが低い)。国土交通省も(事実上の従業員を負担逃れで個人事業主扱いする)偽装請負を問題視しているようで、会社に従属している偽装請負のケースでは従業員化が望まれ、他社とも取引のある本来の意味での一人親方の場合は、消費税を請求して、課税事業者になる方向で考えた方がいいのではないでしょうか?これまでも請求していたなら消費税を納付すべきですが、これからの請求なら、元請けが外注費増を受け入れるという形だと思います(全体的にコストが上昇しても価格に転嫁できる局面と思われます)。インボイスで仮に一人親方が廃業するとして、仕事はあるのですから、正社員の仕事が増え、物価と賃金が上昇して景気が好循環していくだけだと思います。

結局、(中小零細を苦しめると主張する立憲・共産といった)左派政党の主張に関わらず、インボイスに中小企業や消費者が反対の声を大きく上げているように見えないのは、反対する根拠に乏しいからではないでしょうか?

ネットでは消費税は預り金ではないから請求して納付しないのは不正ではないとの主張が見られますが、免税事業者に限って、納付もしない消費税を請求するのはおかしいでしょう(ただし課税業者は増えると思いますが、消費税を請求できる免税事業者のシステムそのものは残ります)。その消費税は結局消費者が負担している訳です(消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します消費税の仕組み 国税庁)。事業者がコストを価格に転嫁することは必要だと思いますが、消費税をお題目に楽して請求してはなりません。現状で法的に問題がなくても、制度設計の欠陥は改める必要がありますし、複数税率に伴う不正はそもそも論外です。

インボイスそのもののメリットを挙げれば、複数税率に伴うミスや不正防止(国民民主党は複数税率そのものに反対しているようですが、ミスや不正が減ることは否定できないだろうと思います)や電子帳簿保存法の抜本改正に伴う電子インボイスの導入=DX化に伴う業務効率化等が挙げられるようです。不正をしている企業は反対なのかもしれませんが、あまり考慮する必要があるとは思えませんし、今の日本にとってDX化の進展は喫緊の課題でしょう(労働生産性が上がり、設備投資が増えることに誰が反対するんでしょうか?)。ただし、複数税率に関して言えば、廃止して低所得者へ給付を行うというデンマーク型は有り得るようですが、そのデンマークでも格差は拡大しているようです(日本では近年再分配後の格差は縮小していますが、低所得者が子供をつくらなくなっていることも関係しているかもしれません)。

ワンコインサービス等に関して言えば、利益が圧縮され、サービスが維持できなくなる可能性はあります。しかしデフレの業態に何時までも拘っても仕方ありません。世界はインフレしているものであり、日本だけが(通貨の価値が上がる)デフレを維持しようとしても、経済成長しませんし、円高不況になるだけです。激しいインフレはデメリットが大きいですが、緩やかなインフレは経済に望ましいとされます。

では反対が多いクリエーター・フリーランスに関してはどうでしょう?確かに免税事業者が課税事業者から取引を切られたら大変です。しかし免税事業者の内実を検討しなければなりません。免税事業者=新人に関して言えば、基本本業があって、あるいは専業主婦が副業(合計所得ではなく副業売上高が課税事業者になるかの判断基準です)でクリエーターをしているものと考えられます。そもそも売れていない新人は通常、専業で生活できるものではないんですね。それで課税事業者になるかですが、ならなくても構わないのではないでしょうか?事業者が新人を発掘するコストは上がると思うかもしれませんが、今はネット時代で新人発掘コストは寧ろ下がっていると考えられるからです。それでは専業の中堅どころはどうなるかですが、漫画家で言えば、デジタル化で製作コストも下がり、デジタル化はわりと浸透しているようです。つまり、生活はし易くなっている訳ですね(漫画家は電子コミックでの業界の成長があり、ロングテール化しているようです)(同人は裾野も広いようですが、売上1000万以上も少なくないようです)(クリエーターとしては何なら昔より景気がいいのでは?)。これからは生成AIもありますが、今のところ、生成AIが人間を代替するとは思われず、補助に使えないかと試行錯誤されている状況だとされます。まぁクリエーターは漫画家だけではありませんが、例えば(前日に仕事が入るという)声優業に関して言えば、供給過多の状況で、完全に買い手市場です。その場合でもインボイス対応ができない声優が仕事を切られたりはしないんでしょうが、発注者の控除がされない分、ギャラが下げられるかもしれません。インボイス対応できる声優が多少有利になる可能性もあるかもしれませんが、発注者もオーディションとかで声優を選んでいるので、そうは影響はなさそうです。元々ギャラが少ない食えない仕事ですので、新人は何らかの手段で食べているのでしょうが、食べられなくなった中堅の決断が早まる可能性はあるかもしれません(ただし声優のキャリア・知名度を活かした司会業等に可能性があると言われます)。そもそもクリエーターになりたい人は多いですので、どうしても裾野の待遇はよくなりません。消費税分が決定的な意味を持つことはないでしょう。またネット等で自立できる(大手を通さない)(仕入率の比較的低い業種や人件費など課税対象外の経費が多い業種であるところの)クリエーターであれば、2事業年度前に5000万円以下の売り上げであれば、簡易課税という手法で消費税を軽減できる可能性が高いです。その場合、売上が1000万以上あっても、消費税を払う必要はありません。まぁクリエーターで売上1000万以上は上の方のような気もしますが。結局、他に生活手段がある人がなるのがクリエーターで消費税の問題は裾野に大きく影響しないだろうということですね。また、景気のいい業界とそうでもない業界はあって、業界によってインボイスが影響しそうな中堅専業作家の数が違うでしょうが、いずれにせよ実力が認められている人達でしょうから、独立していないとインボイス対応の分、収入が減るかもしれず、売れなくなって廃業が早くなる可能性はあっても、夢を追ってそういう業界を選んだんですよねとしか言えません。供給過多の業界はどうしても裾野の待遇が良くならず、待遇を求めるなら、需要過多の業界に移るしかないというのが経済の法則でしょう。切り取れば何でも言えますが、人間は体が一つしかありません。安定し給与の平均値が高く楽な業界で仕事を得ようというのが、そもそも誤りであって、中には宝くじに当たるようなラッキーな人もいるのかもしれませんが、受験や入社試験だけで終身雇用で待遇良しというような話は基本的にないんでしょうし、またなくてもいいと私は思います。クリエーターの将来がどうなるかですが、クリエーターエコノミーはネットの影響で欧米では拡張しているようです。恐らく悪いようにはならないのではないかと思います。怖いのはデフレスパイラルで不況になることです。

どうしても減税ということなら、軽減税率を5%にする等して、差をつけるのは考えられるかもしれません。インボイスで不正請求はしづらくなる訳ですから。

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4 コメント

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帳簿操作による「脱税」 (管理人)
2023-09-12 18:45:09
インボイス反対派を完全論破!|デービッド・アトキンソン(https://hanada-plus.jp/articles/1376?page=3 Hanadaプラス 2023年09月12日)>1人の経営者が、本来は1つの事業をいくつかの法人に分けて売上を1000万円以下にすることで、実際にはトータルで売上が1億円以上あるのに、消費税を納めなくても済む・・・こんな帳簿操作による「脱税」があるとすれば不公平ですし、生産性の高い企業ではなく、脱税に長けた企業が生き残って日本経済にいいことはありません。経営者は企業の高い生産性で勝負するべきです。
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インボイス反対の人、消費税反対の人 (管理人)
2023-09-15 03:06:34
今更、インボイス反対の人は(食品を安くする)複数税率に反対しておけば良かった訳ですが、そういう論旨で反対の人って見ないですよね。まぁ免税事業者が反対しているんでしょうけど、3%の頃なら兎も角、今では特権が大きくなり過ぎたことは明らかです。

消費税反対の人は、所得税上げや法人税上げ、社会保障費削減なんかを主張しないと辻褄が合わない訳ですが、何かMMT放言の人とか、潔くない人が多いですよね。物品税を廃止して消費税を導入した経緯を知らないんじゃないかと思うくらいです。
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小売・飲食等の人手不足 (管理人)
2023-09-19 01:49:43
“年収の壁” 解消に向け 本格的な議論へ 厚労省 審議会(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230918/k10014199101000.html NHK 2023年9月18日)・・・小売・飲食なんかでは、あまり価格に転嫁せずに人手不足を解消する手法があるかもしれません。配偶者控除の廃止で人手を供給する手法です。価格に転嫁して賃上げするのも一つの手法ですが、より物価が上がるでしょうし、他の産業から人手を奪ってこないと結局人手は出てきません。年収の高い企業で解雇が横行すると、賃下げになるでしょうし、外国人労働者も一つの手法ですが、それはそれで問題もあります。

政策的には人手不足ですから、働ける人は働いてもらった方がいいでしょうね(小売とかでも人手不足のようで)。仕事がない国では失業者を増やしてもしょうがないんでしょうが。(控除を廃して)増税(子育ての上に負担が)と言われないためには、その分、子育て世帯に撒けばいいと思います。

子なし専業主婦のいる家庭は反対するでしょうが、誰もが賛成するバラ色の政策はあまりありません(政治が決断できるか否かです)。基本的な考え方として、病気・障害で働けない人を扶養する人は優遇してもいいと思いますが、家電がない(働けない)時代の政策を何時まで温存するのか疑問はあります。
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手作業しないで! (管理人)
2023-09-20 18:38:13
インボイス導入の事務費用(手作業)と税収増を比べる人がいるようですが、忙しい事業者は特に手作業でインボイス対応しないでください。インボイス制度導入に伴い、IT導入補助金が出ます。IT化することで、寧ろ事務経費が下がる可能性があります。1年と言わず、将来に渡って。
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