TSUNODAの経営・経済つれづれ草

身近な経営に関すること、経済に関することを思うままに

丹羽宇一郎著「汗出せ、知恵出せ、もっと働け」を読む

2007-11-22 22:43:59 | 今週の一冊
 今日は、丹羽宇一郎の著書、「汗出せ、知恵出せ、もっと働け」を読んだ感想をを書きます。

 丹羽宇一郎は、平成9年に伊藤忠商事の社長に就任。平成10年に4000億円の不良資産を一括処理しながらも、翌年度の平成11年度決算では同社最高益を出した名経営者です。私は、丹羽の著書である「人は仕事で磨かれる」という本を読んでいます。この本で著者の本を読むのは二冊目です。

 この本は、丹羽の11の講演録をまとめたものです。内容は、格差社会の問題、M&Aのこと、エリート論、国際貢献、地域問題など多岐にわたっています。その中で印象に残るいくつかのことを書きます。

1 第二章「巣立つ若者たちに贈る」 中央大学伊藤忠協力講座での講演 テーマ「仕事と人生」(平成18年7月6日)

 以下引用です。 
・立派なことを言う経営者もたくさんいますが、その人の日々の行動を見る人が見たらわかるんです。こうした日常の生活態度に、人間の本当に姿が出ます。
・働くという言葉を、私は「傍(ハタ)」を「楽(ラク)」にすると解釈しています。だから「ハタラク」とは、お母さん、お父さん、周囲の人、つまり他人を楽にするということです。

 なるほどです。私が働くのは家族のためだということが、素直に納得いく言葉です。

2 第3章「M&Aとコーポレートガバナンスの行方」 オリコ・コンプライアンス・トップセミナー テーマ 「コーポレートガバナンスとトップの役割」(平成18年3月1日)

 以下引用です。
・経営とは、結局は「人を動かすこと」です。社長一人では経営できません。会社のビジョンなり、会社の向かうべき方向に、社員をどれだけ動かすことができるか。「動物の血」を持った社員を、これまた「動物の血」を持った経営者が率いて行く。これはじつに難しいことです。社長が「よし、やるぞ」と言ったとき、社員が、「よし、やろう」と思ってくれるような状態をいずれも一時的にだけでなく、維持しなければならない。すべては社長次第だと言ってもいいと思います。
 だから私は、コーポレートガバナンスもコンプライアンスも、すべて社長の責任だと思っています。どんなことが起きても、受け止める覚悟が必要です。

 船場吉兆、NOVAなどの経営者に読んでもらいたい言葉です。

3 第4章「企業改革に終わりはない」 電通役員拡大勉強会での講演 テーマ「終わりなき企業改革」(平成18年3月17日)

 以下引用です。
・権力を持ったトップと、権力を持たない部下が対話するとき、何が起きるか。部下は、皆、トップの前では化粧をします。いい点を欲しい、給料を増やしてほしい、偉くしてほしい、そうゆうことで、トップの言うことを「かしこまりました」答えるわけです。
・改革には「狂いに似た確信」がトップに必要です。一度決めたらなら、誰が何と言っても絶対やる。どこに遠慮はいりません。あちこちに遠慮しても、その人が助けてくくれるわけではないのです。遠慮して、重大な勝機を逃してしまっても、その責任をとるのはトップです。

 トップのあり方が語られています。権力者としてのトップの自覚を語った言葉ではないでしょうか。

4 第5章「エリートなき国は滅ぶ」 国家公務員合同初任者研修での講演 テーマ「21世紀 期待される公務員像」(平成18年4月6日)

 以下引用です。
・政治家や役人は、哲学や信念、倫理感、あるいは道徳心を持たなければなりません。
・国民は、公務員がどうゆう仕事をするのかということをちゃんと見ています。自分の利益のためなのか、人々のためなのか、国のためなのか。「村の掟に服従」している人に、国民の期待は集まらないし尊敬されません。
・本来の目的は何か。資料を完璧に作ることではない。本来、手段であるはずが、目的になってしまっている。
・どうやって自分を磨いていくか、次の3つのことを常に自分に問いかけて欲しいと思います。
 ①「君はアリになれるか」黙ってコツコツ、地道に働けるか
 ②「君はトンボになれるか」物事を複眼的に見る習慣をみにつける
 ③「君は人間になれるか」動物でなく人間としての心を育てる。人間としての能力は、どこで差がつくか。それは努力の継続です。

 公務員のあり方が語られています。防衛庁の守屋前事務次官に聞かせたい言葉です。

5 第8章「WFPの活動と国際貢献」 NPO法人国連WPO協会での講演 テーマ「アフリカの飢餓と国際貢献活動」(平成18年9月4日)
 
 以下引用です。
・今、干ばつ、エイズ、マラリアの三重苦にあえぐアジア・アフリカ地域では、5人に1人の割合で5歳以下の子供達が亡くなっています。今回、私が行ったアフリカ(ソマリア)の地域では、もっと速いスピードで子供がなくなっています。原因は、圧倒的に栄養不良です。

 丹羽氏は、国連WEF協会会長です。国際貢献についても力を入れています。飽食の時代を私たちは反省しなければななりません。

6 第9章「稼いだ金は、誰のものか」 青山フォーラム事務局での講演 テーマ「仕事と人生」(平成18年3月20日)
 
 以下引用です。
・仕事も勉強も、できるうちに徹底的にやること。「ここまでやればいいだろう」とか「これだけで十分だ」などと自分で限度をみけないことです。それは他人から見たら70%の努力に過ぎません。

 なかなか厳しい言葉です。丹羽は普段から猛烈に勉強してます。週末の勉強量は学者よりも勝っていると自負しているくらいですから驚きです。


 丹羽が書いた「人は仕事で磨かれる」を読んだ時の感想として、この人は「一本筋の通った人」だと思いました。従業員の気持ちを理解するため電車通勤していることがたいへん印象に残っていました。その時からこの人物には好印象を持っていて、今回この本を購入したのですが、購入して損はなかったと思います。