TSUNODAの経営・経済つれづれ草

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[M&A時代の企業防衛術」を読む

2007-11-17 20:01:44 | 今週の一冊
 今日は、津田倫男の著書「M&A時代の企業防衛術」を読んだ感想を書きます。

 ここ数年は企業合併、企業買収が日常茶飯事になってきています。都市銀行は合併が相次ぎ、昔私達が知っていた銀行がどのようになったかわからない状況です。製造業、流通業も合併、買収が活発に行われています。
 M&A、TOB、MBO、LB0など新聞に頻繁にでてくるのですが、意味がよくわからないこともあり図書館でこの本を借りてきて読んでみました。まだわからないことが多いのですが、この本の章を追って理解できたことを書きます。

1章 狙われる企業の非効率、不透明経営 
 この章では、スティール・パートナーズのよるブルドックソースやサッポロホールディングスの買収を巡る動向が書かれています。株主の利益が確保されていないというスティールの主張ですが、会社それぞれの事情もあります。
 敵対的買収にさらされる企業の共通点として著者は7つ上げています。①時価総額が相対的に低い、②粉飾を長年行ってきた企業、③現預金を持ち過ぎている、④経営者が頻繁に交代する、⑤長年、規制に守られてきた企業、⑥不祥事が発覚した企業、⑦買収に失敗、合併に失敗した企業です。
 
2章 実践的企業防衛術
 この章では、経営者が敵対的買収をはねのけようとする場合の具体的、現実的な対処法を論じています。よく使われる防衛手段として、①ポイズンピルの導入、②ゴールデンパラシュートの採用、③クラウンジェエルの売却、④委任状争奪戦に勝つ、⑤非上場の選択が上げられています。
 ここで考えなくてはならないことは、会社はだれのものかということです。株主だけでなく従業員、顧客、さらには地域社会も考慮して企業の存在を考えて、敵対的買収が悪かを考えなければならないと書かれています。このことに私も納得です。現在話題になっている買収には、経営者が自分の地位を失うから反対しているのではないかと思われるものをあります。

3章 現代の暖簾わけMB0の薦め
 MBOは大企業から中小企業が平和的に分離独立する、江戸時代から続く「暖簾わけ」に似たような形態であると著者は書いています。そいて、MBOを成功させるための要件として、①事業部門長、子会社社長の「熱意とビジョン」、②親会社を説得し、安く会社を譲り受ける工夫の「親会社対策」、③部下への対応が書かれています。

4章 真に役立つMBOとは
 この章では、悪いMBOとよいMBOについて著者は論じています。具体的事例として①牛角のレックス・ホールディングス、②日産陸送が社名変更したゼロ、③すかいらーく、④東芝セラミックス、⑤サンスターが上げられています。MB0は経営陣、従業員、投資家のみならず顧客、取引先、地域社会、政府が満足するものでなければならないと書かれています。突き詰めて以下のように集約しています。
①経営者が思い切った戦略を取れるか、より長期的な視野で経営できるか
②従業員に夢と希望を与えられることができるか、少なくとも長い間、迷惑をかけ続けることはないか
③顧客に迷惑をかけないか、より一層指示されるようになるか
④取引先や仕入先にも指示されるか、短期的な不便を忍んでもらえるか
⑤地域社会を納得させることができるか、MBOの意義を理解してもらえるか
⑥そして、株主に長期的なリターンを約束できるか、少なくともその道筋を説明することができるか
 
5章 経営者が変わる、経営を再構築する
 この章では、株主に偏重しない経営として、①競争相手を活用する、②将来顧客を取り込む、③NPO・NGOを自社のファンにさせる中立をたもたせることが書かれています。そして帰るべき経営の基本モデルとして、「社会(世間、お客様)と社員(身内、擬似家族)を大切にする経営」としています。

6章 企業防衛は、新しい日本的経営モデルで
 この章では、著者が提唱する経営モデルとして「しなやかさ」「独創性」「被差別性」「善意」を上げています。従業員にとっても、顧客や社会にとっても有益な存在としての企業であれば、企業防衛に対処できると論じています。

 この本を読んで勉強になったのは、MBOやTOBの意味や今話題になっているブルドックソースなどの買収事例がどのようなことなのかを理解できたことです。
 それから、企業はだれのために存在するかを考えて経営すればおのずと企業の方向が見出せるということです。企業は株主だけのものではありません。敵対的買収を仕掛けてくる企業が株主が利益が損なわれているという主張は一見正しいようですが、それのみでの買収はまやかしであることが理解できました。

 
  
 
 



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