あび卯月☆ぶろぐ

あび卯月のブログです。政治ネタ多し。
お気軽にコメントなさってください☆

古屋兎丸・著『ハピネス』感想

2006-08-24 21:59:27 | 漫画・アニメ
古屋兎丸の『ハピネス』を読んだ。

最近の兎丸は『π パイ』というくだらない漫画も描いていたが、
ハピネスは久々に兎丸の本領発揮といった作品。
「儚い青い季節の物語・8篇を収録」(←帯の解説文より)されている。
所謂、普通の青春物語ではなく変態であったり自殺志願者であったり普通ではない人ばかりが登場する青春物語。
本書の初めの方に収録されている作品は“記号化された”アングラの匂いが漂って楽しくなかったが、
後半の「インディゴエレジィ」や「アングラ☆ドール」は良作だった。

どの短篇も「救いようの無い人」しか登場しない。
「負け組み」なんて生易しいものではなくほとんど壊れていたり、落伍者であったりする。
そういう人々をただ登場させるだけなら誰でも出来るが、
それで終わらないところが兎丸の三流の作家と違うところだ。
救いようのない内容ながらも最後に一輪の花を咲かせている。
そして、一つひとつの作品の世界観や設定が出来合いのものではなくしっかりと創られている。

兎丸の作品を読むときどうしても意識してしまうのがつげ義春だ。
つげ義春は本人の意図しないまま漫画を文学の高さまで昇華させた人として有名だが、果たして兎丸作品は文学なのか。

兎丸は社会不適合者を描かせたら巧いという点でつげ義春に似ているが、作風は随分異なる。
前者はアングラを常に意識して描いているがつげ義春はまったく意識せず自己の体験から自然に紡ぎだされた部分が大きい。
兎丸作品よりつげ作品の方がより深みがあるのはそういった理由からだろう。
兎丸作品が文学的かどうかはここで答えを出さないとしても、
『涼宮ハルヒの憂鬱』を代表とする所謂ライトノベル作品よりは余程文学的であると思う。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。