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マルサスについて知った事

2017-06-12 13:18:21 | 日記
  マルサスは日本では一般的でないらしく、少なくとも、僕の頃は中学・高校の社会化の教科書には取り上げられてなかった。放送大学では一部の経済系の授業に名前だけ出てきたが、詳しい講義は聞いた事がない。僕がマルサスの名前と人口論を知ったのは新聞で。70年代だったと思うが、中国の人口抑制策の報道について、参考意見の紹介という形で記事に出ていて、それで知ったわけである。


  今、「進化は万能である(マット・リドレー著・太田直子などの訳・早川書房)」を僕は読んでいるが、マット氏はマルサスに興味があるらしく、詳しく、それも批判的に書いてあった。日本人のかなりが知らないだろう事も。

  まず、マルサスの本業は英国国教会の牧師だったそうだ。その他、数学者や文筆家でもあった。人口論を述べた以上は経済学者だと僕は思っていたが、違うわけである。

  次に、驚いたのは、牧師でありながら、障碍児殺しを推進したそうである。その本によれば、その考え方はナチスにも入り込んだらしいが。ナチスうんぬんはともかく、そのような事を述べた牧師が現れた事は非常にひどく、障碍者を丁重に扱ったイエスにも反している。まさに「悪魔の牧師」だと僕も思った。また、そのような牧師を生んだ当時のイギリス国教会やイギリス自体もどうなのだろうと、マルサスの生没年を調べたが、1766年~1834年。イギリス資本主義・植民地主義の全盛期に近付きつつある時代だったと言って良い。その頃のイギリスは拝金主義、物質主義が非常に強かったから、その影響で教会内も物質主義化して、そのような残酷な牧師も生んだと見る事もできるだろう。マルサス個人というより、当時のイギリス自体が悪魔に支配されていたと言おうか。当然、インドへの植民地支配や、マルサスの死後に起きたアヘン戦争の問題も出てくる。

  でも、マット氏も述べていたが、マルサスが予測できなかった農業生産の増加。これは今後は「農業工場」という形で、さらに飛躍的に改善されるだろうし。また、医療などの向上で、乳児死亡率が減り、それで母親が乳児死亡の不安から解放され、ムリして多産にならなくなり、結果的にどの国も出生数が減り、人口爆発も回避できた点も、マルサスの予測から外れたわけである。歴史はマルサスの予測通りにはならなかった。あるいは、当時流行っていた「ラプラスの魔」みたいに人口の事も数学的に予測して出したのだろうが、人間は計算通りには生きられない動物であるし、その集合体である社会は名尚更計算が不可能である。その事を我々は学び取らなければならない。また、マルサスの考え方の根である当時のイギリス社会にあった価値観も知り、冷徹に分析もして、明日の地球を作る材料にもしなければならない。

  因みに、マルサスの死後、人口抑制の法案がイギリスで作られる動きもあったが、否定意見が多く、出来なかったという。イギリス社会も常に進歩している事も見える。第二次世界大戦後のイギリスは福祉国家になったわけである。どんな福祉社会も紆余曲折は多く重ねているわけであるし、今も重ね続けているわけである。

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