「読み出したら止まりません」
本書の帯に書いてあったキャッチを読んで「何がそんなに魅力的なのだろうか」と思って買ってみた。
そして読んだ。
私も読み出したら止められなかった。
しかし私の場合はこの小説がエキサイティングで面白いからではなく、登場する主人公の高校生が良いヤツばかりなので「こりゃ、あまりに不自然だ。さっさと読了して次の本を読もう」ということで、止めることができなかった。
つまり、あまり面白い物語ではなかったのだ。
主人公の高校生やその父兄、先生たち。
この人たちはまるでおとぎの国の人びとのように善良で「苦」というものを一切感じさせない人工的な雰囲気が漂っている。
まるでスタートレック・ヴォイジャーのエピソード「ドクターの家庭」に登場した理想の家族のような人びとなのだ。
と、言っても「そんな番組、ワシャ知らん」という読者も多かろう。
念のため説明するとスタートレック・ヴォイジャーというテレビ番組に登場するドクター(船医)はホログラムで、彼は自分が理想とする家族を自らプログラムして作り上げるのだが、あまりに理想的すぎて『こんなのあり得ない』と主任エンジニアのトレス中尉に批判されてしまうのだ。
理想的な家族は、不自然でつまらないのだ。
この物語の登場人物はパラダイスの住人のように理想的なのだが、その分不自然だ。
葛藤も少なく、物語そのものに意外性が無い。
読み進んで行くうちに、
「次はこういうふうに展開するんだろな」
と思ったら、その通りに展開するのだ。
まるで水戸黄門である。
水戸黄門はその定型スタイルが人気の秘密と言われており、決まった時間に風車の弥七が現れ、決まった時間に由美かおるが入浴し、決まった時間に黄門様が「助さん格さん、こらしめてやりなさい」と命令し、決まった時間に「ひかえおろー」っと印籠が掲げられるのだ。
決して助さんも格さんも、もちろん黄門様もケガをしたり死んだりすることはない。
要は視聴者が望んでいる通りに物語が進むのだ。
この小説の物語もまさにそれ。
読者が考えている通りに物事が進み、勝つべきものが勝ち、負けるべきものが負けるのだ。
ということで、この小説。
面白くないことはないが、心の底から楽しめるのはきっと単純素朴な人に違いない。
~「走れ!T校バスケット部」松崎洋著 彩雲出版~
本書の帯に書いてあったキャッチを読んで「何がそんなに魅力的なのだろうか」と思って買ってみた。
そして読んだ。
私も読み出したら止められなかった。
しかし私の場合はこの小説がエキサイティングで面白いからではなく、登場する主人公の高校生が良いヤツばかりなので「こりゃ、あまりに不自然だ。さっさと読了して次の本を読もう」ということで、止めることができなかった。
つまり、あまり面白い物語ではなかったのだ。
主人公の高校生やその父兄、先生たち。
この人たちはまるでおとぎの国の人びとのように善良で「苦」というものを一切感じさせない人工的な雰囲気が漂っている。
まるでスタートレック・ヴォイジャーのエピソード「ドクターの家庭」に登場した理想の家族のような人びとなのだ。
と、言っても「そんな番組、ワシャ知らん」という読者も多かろう。
念のため説明するとスタートレック・ヴォイジャーというテレビ番組に登場するドクター(船医)はホログラムで、彼は自分が理想とする家族を自らプログラムして作り上げるのだが、あまりに理想的すぎて『こんなのあり得ない』と主任エンジニアのトレス中尉に批判されてしまうのだ。
理想的な家族は、不自然でつまらないのだ。
この物語の登場人物はパラダイスの住人のように理想的なのだが、その分不自然だ。
葛藤も少なく、物語そのものに意外性が無い。
読み進んで行くうちに、
「次はこういうふうに展開するんだろな」
と思ったら、その通りに展開するのだ。
まるで水戸黄門である。
水戸黄門はその定型スタイルが人気の秘密と言われており、決まった時間に風車の弥七が現れ、決まった時間に由美かおるが入浴し、決まった時間に黄門様が「助さん格さん、こらしめてやりなさい」と命令し、決まった時間に「ひかえおろー」っと印籠が掲げられるのだ。
決して助さんも格さんも、もちろん黄門様もケガをしたり死んだりすることはない。
要は視聴者が望んでいる通りに物語が進むのだ。
この小説の物語もまさにそれ。
読者が考えている通りに物事が進み、勝つべきものが勝ち、負けるべきものが負けるのだ。
ということで、この小説。
面白くないことはないが、心の底から楽しめるのはきっと単純素朴な人に違いない。
~「走れ!T校バスケット部」松崎洋著 彩雲出版~