人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ライナー・キュッヒル再び登場~シューベルト「ピアノ三重奏曲第1番」

2014年07月03日 07時00分54秒 | 日記

3日(木)。昨日の朝、地下鉄の車内でのことです 目の前に座った若い女性が一心不乱にメイクしているのです 私は電車の中で女性が化粧をすることはあまり感心しないタイプなので、やんわりと止めさせるために「お嬢さん、それ以上きれいになってどうするんですか?」と声を掛けようとしたのですが、「小さな親切、大きなお世話」になってはいけないと思い、止めときました

 

  閑話休題  

 

昨夕、大手町の日経ホールで日経ミューズサロン「ライナー・キュッヒルとウィーンの仲間」コンサートを聴きました プログラムは①モーツアルト「ピアノ・ソナタ第11番イ長調”トルコ行進曲付”」、②コダ―イ「ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」、③ワックスマン「カルメン幻想曲」、④シューベルト「ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調」です

演奏は、ヴァイオリン=ライナー・キュッヒル(ウィーン・フィルのコンマス)、チェロ=ヴィルヘルム・プレーガル、ピアノ=ステファン・シュトロイスニックという面々です

 

          

 

自席はG列9番、前から7列目のセンターブロック左通路側です 会場はウィーン・フィルのコンマスの演奏が3,500円で聴けるということで、文字通り満席です 開演にあたり場内アナウンスが入ります

「本日は『第426回日経ミューズサロン ライナー・キュッヒルとウィーンの仲間 至高の室内楽アンサンブルの夕べ 名コンサートマスターを筆頭に贈る初夏を彩る極上の響き』にご来場いただき、ありがとうございました。」

これって『 』の中が長すぎると思いませんか?原稿通り読んでいるのでしょうが、聞いている方はどこで主語が終わるのか不安定のままです

1曲目はモーツアルト「ピアノ・ソナタ第11番イ長調”トルコ行進曲付き”K.331」です チラシ上の姿よりちょっと太めのシュトロイスニックが登場しピアノに向かいます。興味があるのは彼の演奏テンポです。ごくオーソドックスな”中庸”のテンポで第1楽章が開始されます。トップバッターのせいか、どこかぎこちなさを感じます。丁寧な演奏ですが、四角張った印象を受けます 同じオーストリアの出身ということでモーツアルトには敬意を表しつつも、本当に演奏したいのは別の曲であるかのような印象を受けます

この曲の第3楽章は「ア・ラ・トゥルカ」(トルコ風に)で、ここから「トルコ行進曲付き」という愛称が付けられました 「トルコ行進曲付き」と言えば、先日ブログでご紹介した河出夢ムック「モーツアルト」の中で音楽ジャーナリストの近藤憲一氏が「モーツアルトの『トルコ行進曲』の適正テンポを検証する」という論考で次のように書いています

「グールド盤で聴くと、超スローテンポ!それに執拗なイン・テンポ。装飾音譜もグールド流で、なにからなにまでが超個性的。しかし、グールドの演奏からは、モーツアルトの時代のウィーンの大衆にも親しまれていたというトルコ軍の行進の調べが鮮やかに響いてくる」

その意味では、シュトロイスニックの演奏は最後までテンポを落とさず”中庸”に徹していました

2曲目の演奏のため、キュッヒルとプレーガルが登場し、スタンバイします。すると、演奏の直前、後方席からチャララ~ンという小さな音が鳴り響きました。明らかにケータイの着信音です 会場から「やれやれ」といった嘲笑がもれます。ところが、ステージ上のキュッヒルとプレーガルはニヤリと苦笑しただけで、すぐに態勢を整えて、コダーイの「ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」の演奏に入りました。名人はケータイなど眼中にないようです

曲はコダーイらしい民族色豊かな曲想で、次々と変化するヴァイオリンとチェロの音色が楽しめました とくに第2楽章「アダージョ」冒頭のチェロの低いうなりと、ヴァイオリンの高い叫びとの対話が印象的でした

3曲目はワックスマンの「カルメン幻想曲」です。シュトロイスニックの伴奏でキュッヒルが演奏します ビゼーの歌劇「カルメン」の中の有名な”セギティーリャ”が様々な形で現われて曲を彩ります キュッヒルは超絶技巧を駆使し、どんどんテンポを上げてクライマックスを築き上げます。まさに名人芸です ピアニストのシュトロイスニックは、モーツアルトの時と打って変わって生き生きとピアノに向き合っていました

ここで休憩です。ホワイエでスポンサーのファンケルによる無料ドリンク・サービスがあり、ヤクルト味のドリンクをいただきました キュッヒルが聴けてドリンクが飲めて3,500円ですから、格安ですよ、奥さん

 

          

 

最後はシューベルトの「ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調」です。3人揃って登場、第1楽章に入ります 有名な冒頭のテーマを聴いて、ピアノ三重奏曲に関して言えばベートーヴェンの後継者と言っても良いのではないか、と思いました 素晴らしいメロディーです。第2楽章はチェロが朗々と美しいメロディーを奏で、ヴァイオリンが受け継ぎます。第3楽章はピアノがワルツのリズムを刻む中をヴァイオリンとチェロが歌います。そして第4楽章の歌に満ちたフィナーレを迎えます。シューベルトらしい、いつ終わるとも知れない同じメロディーの繰り返しが続きます 「ああ、やっぱりシューベルトだよなあ・・・・」と思います

演奏後、キュッヒルが笑顔を見せました 6月のサントリーホール・チェンバーミュージックガーデンでは終始しかめ面をしていて、一度も笑顔を見せなかったキュッヒルが、この日のコンサートでは1度ならず笑顔を見せました キュッヒルにとってベートーヴェンは終始真剣に取り組むべき対象で、笑顔どころではなく、一方、シューベルトはより身近な存在で、思わず笑顔がほころぶ対象なのかも知れません

演奏後、ホールの係員から3人に花束が贈呈されました 演奏者への敬意を花束に込めて手渡す・・・・日経ミューズサロンはこういう配慮が素晴らしいと思います

鳴り止まない拍手にドヴォルザークの「ピアノ三重奏曲第4番”ドゥムキー”」の第5楽章をアンコールに演奏しました 今日も、会場の後方席から「ボー」の声が聞こえました。おぬし、ここにも来てましたね

 

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