人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

片山杜秀氏のエッセイ「クラシック界の未来」を読んで思うこと~日経 文化面から / 真山仁著「売国」を読む~正義を貫く若き検事の闘い

2018年02月12日 07時51分03秒 | 日記

12日(月・休)。わが家に来てから今日で1230日目を迎え、平昌冬季五輪の女子アイスホッケーに出場した五輪初の南北合同チーム「コリア」が10日の対スイス戦に出場し、文在寅大統領や北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の実妹・金与正氏らが観戦するなか、0-5 で敗れた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      最初から勝ちを放棄した政治的なチームだったから仕方ない 選手は納得してる?

 

        

 

昨日の日経朝刊・文化面に評論家・慶応大教授の片山杜秀氏が「クラシック界の未来」というタイトルのエッセイを寄せていました 片山氏と言えば、昨年9月のサントリーホール・サマーフェスティバル「片山杜秀がひらく『日本再発見』」のプロデューサーとして大澤壽人らの音楽を紹介し、隠れた作曲家の名作を世に知らしめた立役者です エッセイを超訳すると

「2020年の東京オリンピック以降のクラシック音楽界は大丈夫か、という声を聞く オリンピックまでは文化芸術に対する公的助成の規模は保たれるだろうが、2021年以降の公共の予算は、介護や子育てや教育で手いっぱいになるだろう 企業の社会貢献でも、クラシック音楽の優先順位は決して高くならないだろう。クラシック音楽にはお金がかかる。100人の交響楽団が2000人の聴衆を相手に演奏する。独唱と合唱と管弦楽を合わせて200人で1500人の観客を前にオペラを上演する。ポップスなどと比べて効率が悪い チケット代を常識的水準に保てば満員でも赤字になる。公共や民間の援助を受けないと成り立たない だいたい60年代以後の若者は、親や祖父母の世代への反発もあって同じ音楽でもロックやフォークに自由な気分を求めていった この世代は歳をとってもなかなかクラシック音楽に靡かない。これは日本に限らない。これからの政治家や財界人や官僚のリーダーからも、クラシックを大切に思う人は減っていくだろうう しかも日本を含む先進資本主義国の経済と社会の様相は変貌する一方だ。厚い中間層が解体して貧富の差が広まる。それは即ちクラシック音楽趣味を持ち得る階層が崩れていくということだ 西洋諸国にとってのクラシックは『伝統芸能』であり『観光資源』でもあるから、無くなっては困るというコンセンサスは残るだろう。しかし、日本には歌舞伎や文楽や能もある。クラシック音楽は援助しないと成り立たない厄介な外来文化にすぎない。その事情がますます顕在化するのが平成の次の御代になるのだろう。厳しい時代だが、クラシック音楽は一定規模で定着している趣味には違いない。たとえ縮小するにしても『市民権』はある。適正な規模での生き残りの主張をしていけば、なお未来はあると信じる

コンサートに行く聴衆のうち最もシェアが大きい層は 比較的時間もお金もある60代以上のシニア層であることは議論の余地がありませんが、問題はその下の層です  20~50代は働き盛りの現役世代なので どうしても仕事優先となり、人によっては毎日が残業だったり、あるいは休日出勤があったりと 思うようにコンサートに行く時間が作れないのが現状だと思います これは今さかんに言われている「働き方改革」によって「残業なし」の生活慣習を社会的に築き上げていくしかないと思います (もっとも クラシック音楽鑑賞を趣味としている人たちは、どんなに忙しくても万難を排して聴きにいくものですが

現在 在京、地方を問わず各オーケストラが「未来の聴衆」を開拓するための試みとして 小中学校等への出張演奏会をはじめとするアウトリーチ活動を展開していますが、彼らが大人になる前にクラシック音楽が廃れてしまったら元も子もありません 片山氏が上記のエッセイでそうした活動に触れていないのは、そこまで待てないからだと思います

片山氏は「日本には歌舞伎や文楽や能もある」としていますが、それらの芸術だって主な鑑賞者は60代以上のシニア層ではないのか、そういう意味ではクラシック音楽と共通の課題を抱えているのではないか、と思います

片山氏のエッセイを読んで、初めて気づかされたのは「これからの政治家や財界人や官僚のリーダーからも、クラシックを大切に思う人は減っていくだろう」という指摘です 政府や地方公共団体による文化活動への助成金や企業メセナなどを司る立場の人たちが『クラシックは金食い虫だ。出来るだけ助成金を減らそう』と考えるようになるならば、クラシック音楽はますます廃れていってしまうでしょう 欧米諸国のように寄付文化が根付いていない日本では、オーケストラ等の音楽団体にとって公的な助成金は不可欠の収入源です より幅広い世代の聴衆を獲得する努力とともに、助成金を出す立場にいる人たちの間に もっと「クラシック音楽ファン」を増やしていくことが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか

 

        

 

真山仁著「売国」(文春文庫)を読み終わりました  真山仁は1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒。新聞記者、フリーライターを経て2004年「ハゲタカ」でデビューしました

物語は二人の主人公の視点から描かれていきます 一人は気鋭の検察官・冨永真一で、圧倒的に不利だった殺人事件の裁判を検察側の勝利に導いた功績を認められ、特捜部に配属されて新たな任務に挑むことになる もう一人は、宇宙開発に挑む若き女性研究者・八反田遥で、幼いころから父親の影響で宇宙に憧れ、日本の宇宙開発を担う研究者を目指して奮闘する毎日だった 特捜部に移って初めて冨永に与えられた仕事は、群馬県の土建会社による脱税事件の応援だった。会長宅から 裏金献金リストと見られる手帳が発見されるが、書かれていた地名や数字がなかなか解明できない。背後には大物政治家の影が見え隠れしており、特捜部としては何としても立件したい案件だった。そんな中で、冨永の親友で幼なじみの近藤左門が失踪するという事件が起きる 左門は 文科省で宇宙開発やJASDAの長期計画を策定する宇宙委員会の事務方を務めていた。冨永は特捜部の本来業務の傍ら左門の行方を捜し始める。すると、そこにも大物政治家の影が見え隠れしていた 一方、八反田遥は宇宙航空研究センターの指導教官・寺島光太郎教授に導かれ、日本の宇宙開発の現状と問題点を目の当たりにする。しかし、裏側では密かに政界が絡んだ陰謀が進行していた

 

     

 

この作品は、「週刊文春」の 2013年5月から2014年8月までに連載された作品を2014年10月に単行本として刊行したものです

この作品の大きな特徴は後半に至るまで、この二人の行動にまったく接点がなく、絡み合うことがないことです それぞれ独立した物語が平行して進んでいき、最後に接点が結ばれる形をとっています

日本を動かす立場にいる登場人物によって語られる言動は、”正義”というものが立場・思想によって変化していくことを表している一方で、あくまでも職務上の正義をまっとうしようとする若き検事の熱い想いを描いています

この作品は映像化したら面白いのではないかと思いますが、文庫本の帯に「テレビ東京系で10月からシリーズ・ドラマ化」とありました 「テレビが先か、本が先か」と迷うかも知れませんが、本を先に読むことをお薦めします

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