人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「ホロヴィッツ ヒストリック・リターン」 ~ 日経の記事から / 彬子女王著「赤と青のガウン オックスフォード留学記」を読む ~ 女性皇族として初めて海外で博士号を取得した彬子女王のエッセイ

2024年07月15日 00時55分57秒 | 日記

15日(月)。千葉県勝浦市在住の大学時代の友人S君が「海の幸セット」を送ってくれました どれもが大振りで、鯵、ホッケ、赤尾鯛、鯖、烏賊が所せましと入っていました 最近、魚をよく食べているので助かります S君ありがとう

     

         

昨日の日経朝刊「名作コンシェルジュ」コーナーで「ホロヴィッツ   1965年カーネギー・ホール ヒストリック・リターン」 が取り上げられていました ウラディミール・ホロヴィッツは1903年キーウ生まれ(1989年没)の20世紀を代表するピアニストの一人です ホロヴィッツは、アメリカ・デビュー25周年を記念した1953年のリサイタル以降、鬱状態になり人前で弾くのを止めてしまいました それから12年後の1965年5月9日、カーネギー・ホールでリサイタルを再開、その1か月後に「ヒストリック・リターン」としてリリースされたのがこのライブ録音です

     

     

このアルバムに収録されている中で一番好きな曲はショパン「バラード第1番 ト短調 作品23」です ホロヴィッツの演奏について音楽評論家・鈴木淳史氏は「解説」の中で、「テンポを揺らし、パッションも渦巻く。プログラム最期を飾るにふさわしい熱演だ」と書いています しかし、私はちょっと物足りなさを感じます 私はむしろ、この演奏の3年後の1968年1~2月にカーネギーホールで収録された「ホロヴィッツ・オン・テレビジョン」における「バラード第1番」の方に、ホロヴィッツらしい歌心とパッションを感じます また、このCDで特別に素晴らしいと思うのはスクリャービン「エチュード嬰ニ短調作品8-12」です 「魂を揺さぶられる演奏」とはこういう演奏を言うのでしょう

     

     

ということで、わが家に来てから今日で3471日目を迎え、トランプ前米大統領が13日、ペンシルベニア州バトラーで演説中に銃撃を受け耳に怪我を負ったが命に別状はなかった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     どんな理由があろうとも政治的暴力は許されない  犯人はある意味”ノータリン”だ

         

彬子女王著「赤と青のガウン オックスフォード留学記」(PHP文庫)を読み終わりました 彬子女王は1981年に”ひげの殿下”として知られた故 寛仁親王殿下の第一女子として生まれる 学習院大学を卒業後、英国オックスフォード大学マートン・コレッジ(令和天皇も在籍した)に留学、女性皇族初の海外での博士号(専攻は日本美術)を取得して帰国、立命館大学総合研究機構のポストドクトラルフェロー、特別招聘准教授を経て、現在は京都産業大学日本文化研究所特別教授、京都市立芸術大学客員教授、日本・トルコ協会総裁、一般社団法人日英協会名誉総裁、公益社団法人日本プロスキー教師協会総裁などを務める

     

著者は「文庫本へのあとがき」の中で、「2023年5月の連休明けの頃、友人から『彬子様の留学記がTwitterでバズってますよ』と連絡を受けた」と書いています 「チャールズ国王陛下の戴冠式の直後だったので英国や皇室への関心が高まっていた時期だったからだろうか」と考えながらも、「なぜ8年も経っているのに、今バズるのか?」と疑問に思ったが、率直に嬉しかった、と書いています このことが文庫本化に繋がったようです 私は文庫化されなかったら手に取らなかったと思います

この作品は、月刊誌「Voice」(PHP研究所)2012年4月号~2014年5月号に連載された「オックスフォード留学記 ~ 中世の街に学んで」に加筆を得て再編集し2015年1月に単行本として刊行、さらに2024年4月の文庫化に際しても加筆・補整したエッセイです

タイトルにある「赤と青のガウン」とは、オックスフォード大学の学位授与式で大学院生が着る赤地に青のガウンのことです この留学記は、学習院大学在学中の1年間の短期留学(2001年)の思い出を振り返りながら、彬子女王がオックスフォード大学で 目標であり励みとなる「赤と青のガウン」を着るまでの5年間(2004~08年)を書き綴ったエッセイです

そもそも私が本書を読もうと思ったのは、一般人ではなく皇室メンバーの留学記であることから「面白そう」と直感したからです その観点から、皇室独特の制度や習慣についていくつか教えられたことがあります

①皇族の側にいて守る人たちを側衛官(そくえいかん)という。警視庁の附属期間である皇宮警察本部に所属している皇宮護衛官で、国家公務員である 政府要人などに付くSPとは違う。皇族を守ることを「警衛」、要人を守ることを「警護」、モノを守ることを「警備」という。皇宮護衛官はEU圏内における2週間以上の滞在の場合は付かない。アメリカや中東地域に行くときなどは期間の長短に関わらず常に付いてくる 国内ではどこに行くにも側衛官が付いてくるので、生まれて初めて一人で街を歩いたのは、日本ではなくオックスフォードだった

②皇族は「日本国民」ではない 戸籍や住民票はないし、国民健康保険には加入できない。海外へ行くときのパスポートも普通の赤や紺の表紙のものではない。表紙には「外交旅券」と書いてある茶色のパスポートで、外交官の持つものと同じ。海外渡航の際には基本的に1回限りしか使えない「外交旅券」を渡される。留学に際しては、留学期間中有効で、どの国にも渡航可能な外交旅券を作ってもらった

さて、本書を読んで感じるのは、彬子女王はもともと賢いうえに頑張り屋さんであるということです 最初のうちは、英国皇室と交流のある日本の皇室の人だからオックスフォード大学でも特別扱いして博士号を授与したのではないか、と思って読み始めましたが、とんでもない誤解であることが分かりました 学習院大学で彼女を指導した元学長の福井憲彦氏が巻末の「ご留学記に乾杯」というタイトルで「解説」を書かれていますが、彼女は「学習院大学成績優秀者表彰」を受けるほど優秀な学生だったのです オックスフォード大学では、当初「修士課程」だけで修了する予定だったのが、オックスフォード大学や大英博物館などの関係者から「もったいない。もっと突き詰めてみたら」という声に押されて「博士課程」に挑戦します 彼女は孤独感と厳しい指導に”博士論文性胃炎”に罹りながらも、友人たちに励まされ、新しい壁を乗り越えるべく努力を重ねます それだけに「合格」と告げられた時の嬉しさは何にも代えがたいものだったことが伝わってきます

本書ではエリザベス女王に謁見を許された「アフターヌーン・ティー」での半端ない緊張や、格安航空券を利用した時の失敗談など、勉強を離れた生活の様子も生き生きと描かれています また、本文に入る前に、オックスフォード大学の校舎や見取り図、友人たちとの写真がふんだんに掲載されています    どの写真も彬子女王の笑顔が印象的です

400ページに近い大書ですが、われわれ一般人にとっては新鮮で面白く、あっという間に読み終わりました    お薦めします


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