人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ピエール・ルメートル著「天国でまた会おう」(上・下)を読む ~ フランスで最も権威ある文学賞ゴンクール賞に輝く超面白小説 ~ 映画化され本日(3月1日)から全国ロードショー!

2019年03月01日 07時29分29秒 | 日記

3月1日(金)。米朝会談が物別れに終わるとともに2月も終わり、落語で米朝でも聞きたい気分です トランプは元顧問弁護士マイケル・コーエン氏の下院監視・政府改革委員会の公聴会での証言に、したたかな金正恩を相手にお話し合いをしているどころではなかったでしょう 犯罪関与の疑いの強いトランプを大統領に持つアメリカ国民は恥ずかしいでしょうね

 

  諸般の事情により昨日の夕食作りはお休みしました  

 

         

 

ピエール・ルメートル著「天国でまた会おう(上・下)」(ハヤカワ文庫)を読み終わりました ピエール・ルメートルは1951年パリ生まれ。2006年に「悲しみのイレーヌ」でデビュー、2011年に発表した「その女アレックス」はリーヴル・ド・ボッシュ読者大賞、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞を受賞、さらに2013年に発表した本書はフランスで最も権威ある文学賞ゴンクール賞を受賞しました

 

     

 

物語は1918年11月、第一次世界大戦の休戦が近いと噂されていた西部戦線。上官ブラデルは最後の手柄を立てようと 部下を犠牲にして自分だけ生き残ろうと企み、味方の背中を撃って闘争心を煽り立てようとするが、その現場を部下のアルベールに見られてしまう そこでブラデルはアルベールを生き埋めにする しかし、年下の青年エドゥアールに救い出されかろうじて命拾いする しかし、助けた側のエドゥアールは爆撃の余波で顔の半分を失いモルヒネがなければ生きていけない身体になってしまう アルベールは命の恩人エドゥアールのためモルヒネを求めて東奔西走する。父親に反感を持つエドゥアールが家に帰りたくないと言うので、アルベールは彼が死んだものとして家族に手紙を書く 抜け目のないブラデルはエドゥアールの姉マドレーヌに接近し結婚に漕ぎつけるが、そんなことを弟のエドゥアールは知る由もない エドゥアールは美術の才能を生かして、復員兵に冷たい戦後のフランス社会に復讐するため、あるアイディアをアルベールに打ち明ける

 

     

 

そのアイディアとは戦没者追悼記念碑詐欺作戦だった 戦争で亡くなった兵士たちを追悼するための記念碑を製作・販売するとして、記念碑は製作せずにカタログのみ作成し申し込みを受け付けて、銀行に振り込まれたお金を持って海外に逃亡するという大胆なものだった いわば、今はやりの「振り込め詐欺」の先駆け的な作戦である

一方、抜け目のない悪漢ブラデルは、前線に埋葬されている兵士の遺体を掘り起こし戦没者追悼墓地に収容するという国の仕事を落札する しかし、経費節減のためサイズを縮小した棺桶、無能で貪欲な作業員、フランス語の話せない外国人労働者たちなどが原因で、埋葬名簿通りに遺体が指定の棺桶に納められなかったり、遺体の代わりに土が入れられていたり、遺体から貴金属が盗まれたり、といったトラブルが相次ぎ、ブラデルは責任を追及され追い詰めらる 結局 彼は子供を身ごもった妻マドレーヌから離婚され、刑務所に送られて出所後は独り寂しく亡くなる

さて、2人の主人公の他にこの物語を面白くしているもう一人の人物がいます ブラデルが手掛けた3つの戦没者追悼墓地の現地調査をして墓地管理の杜撰さを調査報告書にまとめあげた 定年間際の役人ジョゼフ・メルランです   彼はブラデルから年収の10年分に相当する10万フランで買収されそうになりますが、彼はその現金を贈賄の証拠として3つ目の報告書に張り付けて提出したので、これがブラデルにトドメを刺すことになります 「エピローグ」では主人公のアルベールとエドゥアールをはじめとする登場人物のその後の行方を描いていますが、最後の最後にメルランについて触れています 正義感の強い彼は定年後、ある戦没者追悼墓地の管理人として採用されたそうです。めでたしめでたし

ところで、ピエール・ルメートルは相当のクラシック通らしく、下巻では「アイーダの凱旋行進曲」(ヴェルディ)、モーツアルト「クラリネット協奏曲」、リュリ「トルコ人の儀式のための行進曲」、「サロメの7つのヴェールの踊り」(リヒャルト・シュトラウス)などの作品名が出てきます 他の作品はとにかく、リュリの曲に至ってはどれほどの人が知っているでしょうか? フランス人の小説家ならではの選曲だと思います

読む手が止まらない超面白小説です が、「上巻」の途中まで読んでいて Déjà Vu (デジャヴ)を感じました 「この小説、以前読んだことがあるのではないか???」。さらに読み進めていくと、「間違いなく読んだことがある!」に変わりました しかし、ほとんど内容を忘れていた(廊下現象というか、剣棒症というか、忘却力が強いというか)ので、初めて読むようなつもりで読み進めました (ここで2か所変換ミスがあると指摘しないでください、いつもの確信犯ですから・・って いちいち説明しなきゃならないなんてブツブツ・・・)

この作品は映画化したら面白いだろうな と思っていたら、アルベール・デュポンテル監督による作品が本日からTOHOシネマズ・シャンテ他で公開されるようです 是非観に行きたいと思います

なお、この小説に出てきたマドレーヌ・ぺリクール(エドゥアールの姉)は、ピエール・ルメートルの次作「炎の色(上・下)」の主人公となって登場します こちらも楽しみです

 

     

     

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