今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO 新10B型のケース交換の巻

2015年05月09日 22時01分07秒 | ブログ

カメラ関係は到着のタイミングが開きましたので、先日取り上げましたセイコー・新10Bをもう1台やらせて頂きますね。1950年代の機械ですから、これも全くの不動状態で入手しました。前回の教訓で、通常よりも時間を掛けて超音波洗浄をしてあります。

応急的にテンプや輪列に注油をして作動をするか様子を見ました。動き出しはしましたが、ノソノソです。香箱のゼンマイを分解して確認すると、例の先端部の回り止めのスポットが外れて空転していることが分かりました。現在入手可能なの汎用の新品ゼンマイは所有していますが、スポット部を穴開けしてリベット留めとしました。これで組み込んでみます。

前回はアンクル爪石の頑固な油固着がありましたので、入念に洗浄してあります。

 

古い機械で無給油で使われた個体は、丸穴車に摩耗があってガタガタなものがありますが、この個体は比較的良い方です。

 

入念に組み立てた結果、意外に最初から快調に動き出しましたよ。テンプの振りも大きく安定しています。

 

で、元々部品ストック用として入手した個体ですので、ケースの状態は最悪です。材質がステンレスではなく真鍮にメッキですので、裏側は完全に真鍮地が出ています。文字盤のサイズは大型ですので、生産後期の個体なんですけどね。これはちょっと使うのをためらいますね。

ということで、ストックケースから探してきました。風防のサイズが実測で26.5mmと小径ですので、裏蓋内側を確認すると1955年製と分かりました。ベゼルのみ14Kで本体はステンレスの組み合わせ。当時の流行りみたいで、良く見かけます。急きょなので風防は手持ちから使います。

文字盤が汚れていましたので清掃してみました。かなり目立たなくなりました。意外にレンズクリーナーがニスを侵さずに調子が良いです。

 

このケースは、製造№などは裏蓋の内側に打刻されています。

 

 

ラグ幅は16mmなのでベルトには困りません。新品のバネ棒で取り付けます。

 

あまりきれいに写せないので見にくいですが、となりは先日組み立てたオリエントスターで、これもベゼルが14Kで本体はステンレスです。但し、ラグ部分は金メッキ。この頃の流行りなんでしょうね。全部金メッキのケースですと、まず現存で状態の良いものは少ないですが、本体がステンレスなので意外に劣化が少なく助かります。結構好きな取り合わせです。

ちょっと小ぶりのケースですが、金と銀のコンビは高級感もあって良い感じですね。当時としては、かなりお洒落なモデルだったのでしょうね。

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連休疲れかな? PEN-FTの巻

2015年05月06日 20時52分07秒 | ブログ

連休も最終日で、旅行に出掛けられた皆さんも、少しお疲れかもしれませんね。私は、風邪の回復が思わしくなく、予定していたもてぎのサーキットにも行けず仕舞い。普段できない部屋の片づけをして、ヤフオクに出品しましたら、捨てる神あれば拾う神あり。すでに入札があるようです。活用して頂ければいくらでも良いので・・で、遊んでばかりはいられないので、ご常連の歯科医さんからのPEN-FT #2573XXを始めています。と、そのオーナーさんからお電話を頂きました。長話をしてしまってすみません。この個体は、特に故障はしていませんね。アイビース枠が割れているのと、巻き上げがちょっとゴリ感。露出計の感度が低下しているのが気になります。メモから、この個体は3回ほどプロの修理を受けているようですが、前板は未分解で、露出計とハーフミラー周辺の分解だけです。露出計の基板の抵抗が2つ共交換されています。なのにアンダー。

特にドラマのある個体ではないですから、みなさんもお疲れでしょうし、サラッと書くことにしますね。洗浄後、モルト貼り、2軸を組み立てていきます。

 

古いモリブデングリスが付着している部品ですから、すべて洗浄をした後組み立てていきます。巻上げレバーユニットも洗浄注油で組み立てます。

 

シャッターユニットに特に問題はありません。25万台ですから、すでにシャッターバネは条数の多いタイプです。スローガバナーの歯車を点検しましたが、損傷はありませんね。

 

洗浄注油をしたリターンミラーユニットを組み立てます。

 

 

プリズムの状態は最高ですね。コーティングも完全です。

 

 

シャッターユニットは素晴らしく巻き上げがスムーズですが、リターンミラーユニットの方が若干こすれ感がありますかね。巻き上げの感触は、この2つのユニットの合成なんです。まぁ、スムーズな方です。

 

露出計のアンダー傾向を調整してあります。アイビース枠は一緒に来たメディカル故障機から調達しました。

 

アイビース枠が破損したので、アクセサリーシューを瞬間接着剤で貼り付けたようでFTの文字に接着剤が付着しているとのお訴え。はいはい、入れ直しておきます。

 

付属の38mmは、設計変更後のタイプ。このタイプは分解が厄介なんです。マウント部を取り外すとヘリコイドグリスが流化しています。

 

油の付着した絞りユニットを分離して洗浄します。アルミの本体は設計変更前と全く異なりますので、部品の相互互換は出来ません。

 

絞りカムと絞りリングを連動させるカムマワシがカムの薄い板厚に切られたネジによってねじ込み固定されますが、清掃のたびに分離組立はネジ山が破損をして困難です。一度組んだら分解しないのが前提の設計。何のために設計を変えたのでしょう? 技術屋さんの考えることなど想像も出来ませんが・・

ということで組立完成。なかなか調子の良い個体に仕上がりましたよ。みなさんも連休疲れでしょうけど、明日1日でまた週末ですから頑張りましょうね。#2573XX (1968年2月製)

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SEIKO 新10B型の不動は生き返るのかの巻

2015年05月02日 20時54分07秒 | ブログ

世の中、ゴールデンウィークに突入ですね。旅行に出掛けていらっしゃる方も多いでしょう。あっ、そう。昨日、八王子の道路で私の前をヒュンダイのJM200という車が走っていましたよ。日本にもあるんだぁ。珍しいものを見ました。フュンダイはアメリカではホンダよりも売れているらしいですが、国内では在日の方も買わない(ベンツ)のだそうですね。で、連休だし、ちょっと遊んで古い時計をやります。セイコー、新10Bですが1948年(昭和23年)から製造されたモデルですが、この個体は裏蓋の彫刻から昭和26年に製造された製品のようです。10型でケースも余分に厚くないので非常に小さいですが、一般的なケースではなく、ウォーター・プロテクトなんだそうです。二重になっているだけで、汗に対しては若干の効果はあるかも知れませんが、防水効果はないと思いますけどね。二重ケースの隙間にワラのような枯れた植物が挟まっていました。風防の劣化は激しいですが、ケースはステンレスのため比較的良好です。ただし、巻いても振っても全く動きません。さて、動くようになるのでしょうか?

裏蓋には「贈 三橋委員 昭和二六、三 山武農調」と彫刻されています。カメラと同じで、名入は評価が下がりますので、私でも入手が出来るわけです。贈られた方の当時の年齢にも寄りますが、恐らくご存命ではないのではと思います。古い機械を治すということは、その方の人生に接するような気持ちがします。

百円玉より少し大きいというサイズですね。初期らしく、受けにきれいなコートドジュネーブの化粧加工がされています。

 

10型のスモールセコンドの秒針は抜くのに気を使います。分解歴はあるようですが、針には致命的なダメージはないようです。

 

すべて分解をして洗浄したところ。

 

 

では組んでいきますよ。幸い、あまり摩耗はしていないようです。

 

 

香箱は分解されて香箱フタの合わせ位置が合っていないのと、完全に嵌っていない状態でした。その他、地板と輪列関係の摩耗は思ったほど進んでいません。一度、分解掃除に出してそれ以後は使われなかったのかも知れません。とすると、50年ぐらいは動いていなかったことになりますね。

受けもきれいでしょ。さて、このぐらい古い時計は行き成り快調には動き始めてくれないのです。長いこと自分が時計であることを忘れていたかのように、ガンギやアンクルに注油をしていくうちに、ノソノソと動き始めます。超音波洗浄をしてもホゾに微細な腐食があるでしょうし、油も少しずつ回るうちに元気に動き出します。「あぁ、そうだ、俺は時計だったんだぁ」

調子が安定してテンプの振りも力強くなったところで文字盤と針をつけます。スモールセコンドは、短針と秒針の衝突を考慮してクリアランスを大きめに取っておく必要があります。

 

真鍮のインナーリング。特にメッキは施されていないようです。腐食を研磨してあります。

 

風防ガラスはペナペナなタイプを二重ケースで挟み込む構造です。いつも使っているVERLUXは肉厚なので、deluxe(インド製とか?)を使いますが、26.1mmが欲しいのですが規格にないので26.2mmを使います。

 

時代的には違うのでしょうけど、ラグ幅15mmのベルトが無いので、パリス環式ベルトに取り付けてみます。

 

冬になると洗浄で手が荒れて手湿疹のきたない手です。文字盤が古い10型と同様ですので馴染んでいますね。

 

おそらく農業関係の方の所有品だったのでしょう。戦後の食糧難のころで、農産物の増産は国策でしたからね。永い眠りから覚めて、これから少しずつ調子を取り戻していくと思いますよ。機械は羨ましい。次の修理の時には私はいないのでしょうね。

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