北海道のINOBOOさんは珍しいカメラを沢山所有していますね。これはCanon demi RAPID です。アグファのラピッドシステムを採用したカメラで専用のカートリッジを使用しますが、枚数制限などで普及せずに消えていったシステムですね。各社取りあえず参戦したというところでしょう。現在でも工夫をすれば撮影は出来るようですけど、INOBOOさんは展示用なので脱落したCds窓のガラスを接着して欲しいとのご依頼です。そうは言っても、デミ特有の最中構造のため、トップカバーを分離するためにはシボ革を剥離して前カバーを外さなくてはなりません。デザイン優先のカメラは整備性は良くないです。
電池蓋が液漏れで固着していましたので、内部にも腐食が広がっています。やっと前カバーを分離してガラスを再接着しておきます。
接着しろが少ないので、外側から接着剤が見えないようにします。きれいに貼れていますね。
ちゃんとカートリッジも付いています。現在は入手は難しいようです。
デミはデザインは素敵ですよね。オリンパスとは個性が違います。当時、修学旅行で女生徒が持っていたのが羨ましかった記憶があります。
これも通好みのカメラ。Minoltina-P 。シボ革を交換して欲しいとのご依頼ですが、一見きれいに見えますけどね。
よく観察すると、過去の修理の時に破れて接着をしてありますね。
サイドもこのように破れています。
このモデルは裏蓋がフラットでないので接着が難しいのですが、取りあえず前面から。数種から選んで頂いたシボ革をカットします。すでに寸法は収縮していますので、0.5mm幅を大きく取ります。右上端にわずかなトップカバー用の突起があるので再現します。
シボ革を切り出したら、接着の前にお団子の串で癖を着けておきます。シボ革の中にはガラス繊維が入っていますので、平面の状態で接着をすると剥がれやすくなるのね。
接着剤を着けなくても形状が安定していますね。
向かって左側。セルフタイマーの小判穴と吊環の逃げを正確に加工しておきます。
このカメラでシボ革を交換する場合の問題点。裏蓋がフラットではなく、中央が盛り上がっていますね。単純な直線的なカットではピタッと合いませんし、工場のような強力な糊でジュラコン棒で圧着をしてやっと接着が可能なのですね。私、昔貼っていましたので・・乾燥糊をケトンで部分的に溶かしながら貼って行くもので、全面に糊を塗布して一気に貼るものではありません。
シボ革に予め貼られている両面テープでは何の役にも立ちません。すべて剥離をして接着をして行きます。平面のシボ革を弱い糊で三次曲面に近い形状に貼ることは困難があります。
何とか貼り終えて一安心。シボ革が新しくなるとカメラがスカッとしますね。オリジナルの雰囲気は壊していないと思います。