レンズが2本来ています。FTにセットのレンズは38mm f1.8 で、右が25mm f2.5ですが、両方ともオーナーさんが清掃している時におかしなことになったようです。38mmはヘリコイドが抜けてしまったようで(どんな清掃なの?)オーナーさんが再組立をされたようですが、ピントが来ていませんね。距離の彫刻文字を見てください。下半分が隠れているでしょ。ヘリコイドネジの入る位置が間違っているのですね。25mmの方は絞りリングがクルクル回ってしまって、絞りと連動していません。普通はこうはならないのですけどね。じゃ、治しておきましょうかね。
距離リングと内径のアルミ部品の隙間を良く見てくださいよ。隙間が同じではないでしょ。このことから、過去に距離リングのネジを緩められたことが分かります。ここは、工場で調整してある部分ですから緩めてはいけません。
内部を見ていくと・・・下部の真鍮部品はヘリコイドのコマですが、片方のビスは頭が壊れていますね。ここはネジロックで強力に接着されています。この部品を取り去ると内側部分が回ってしまいます。この部品にはヘリコイドを直進させるために強い力が掛かりますので、一度分離をすると緩みやすくなってしまいます。また、38mmや40mmの持病である、ピントのガタはこの部分の磨耗によるクリアランスの増大です。
レンズの清掃も含めて再組立してあります。ご覧のように38万台の設計変更後の後期レンズですから、状態は悪くないのですね。最後に、前面の化粧プレートには、過去の分解時に付けた工具によるキズがありますので、タッチアップをしてから取り付けます。どちらにしても、みなさんはレンズの分解はされない方が良いと思いますね。
25mm f2.8の方ですけどね。こちらも距離リングのイモネジが緩んでいますね。だからお止めなさいって言ったでしょ。絞りリングのストッパーが利かず、絞り羽根と連動しない。の原因は、カムとの連動をさせるピンが折れていたものです。予備の部品も在庫しておりませんので、幸い真鍮製であるため、旋盤で一品作りをします。
ピンを取り付けましたが、そもそもカム側の孔も拡大しており、本来は交換でしょう。今回は接着と併用で組立ます。
このように絞り羽根は完全に絞り込まれています。元々、ピンの強度が弱い設計と思われますが、絞りリングをストッパーを超えて無理な力を加えた結果でしょう。2つのレンズ共、普通の清掃では故障しないと思うのですが・・