先日、PEN-FTブラックをO/Hされたマニアさんが、またまたブラックを送って来られましたよ。#3116XXと良い頃の個体で、しかも塗膜の磨滅が少ないきれいな個体です。私は使い込まれたボロっちいのしか持ってませんが・・
分解の前に、一通り点検していきます。まず気がついたのは裏蓋のラッチの飛越し。これ、知らずに使っている方もいるのです。ラッチの先端部が削れていますね。
裏蓋側のラッチ強度が弱く、曲がってしまうと飛び越しが始まります。
後期のきれいな個体ですが、現役当時に露出計が不良となり(珍しい)SSなどで露出計ユニットの交換を受けています。私の言う基板別体タイプです。このユニットは、生産の末期頃に工場生産にも使用されているのを確認していますが、31万台では後天的に交換を受けたものです。
シャッターダイヤルのスベリコ(ジョイント)の形が変ですね。
両サイドがヤスリ掛けされています。??
では、いつものように洗浄組立をしていきます。グリスは場所によって使用する種類が異なりますから使い分けて塗布します。
巻き上げレバーが上側に曲がっているのが分かりますか? ジュラ製ではないので、あまり曲げて戻すと折れることがあります。
シャッターユニットの分解。テンションスプリングは条数が増えた変更後のタイプ。
チャージギヤは、まだカシメタイプですので分解は出来ません。全体的には摩耗の少ない良いユニットです。
チャージギヤと下の#2ギヤのバックラッシュは大きめに取られていますね。PEN-F発売時の雑誌での分解検証でガタを指摘されていましたが、メーカーはこれで適正というような説明をしていたと思います。技術者にしか分からない高度な計算があるのでしょう。素人は余計なことは言わない。
この個体は、巻上げの途中で逆転してしまう時があります。原因は、逆転防止爪のスプリングの掛け位置が間違っているのです。ピンセットの下が正解。上に掛かっていました。しかし、熟知していないと上が自然に見えるのは確か。SSかそれに準ずる修理屋さんの作業だと思うのですが・・
ルーペのモルトは交換されているのですが、ベトベトに劣化をしていることから、相当に昔、まだ現役時代の作業だと思うのですよね。しかも下手っぴい。
これが問題の基板別体タイプのCds部分。売りのスリットはありませんね。私が米谷さんに直接お伺いをしましたが、このようなユニットは無いと断言されました。だってあるじゃん。
シャッターダイヤルを取り付けて回転させると2秒の位置で固着して露出計とも連動していない。それで分かりました。前回のリペアマンさんは、スベリコが引っかかると解釈して削ったのでしょう。残念でした。これはウォームギヤが悪いのです。
ウォームギヤを交換して正常に作動するようになりました。あまりこのカメラを理解していないようです。
基板別体タイプの露出計ユニットなので、いつもと眺めが違いますね。
ピント精度を確認していると、ファインダーのピントが無限を少し超えます。調整ポイントの範囲は狭いのですが、調整用のイモネジがありません。確かに調整範囲ぎりぎりが無限なのでイモネジが無くても極端な誤差が出なかったので不具合とならなかったようですが、イモネジは最初から無かったの? 過去に再調整をされた形跡も無いような・・しかし、精密な調整には必要なので、イモネジを追加して調整をしてあります。
付属の40mmですが、絞り羽根に油が回っていますので、清掃をします。
この個体は、前面のネームリングが緩んでいましたが、クリック用のベアリングが無くなっていました。画像はテンション用のバネ。
ベアリングを追加して組み立てます。
もう1本同梱の60mmです。かなり汚れとレンズカビ、曇りがあります。過去に分解清掃を受けていますね。
特に後玉が良くありません。2枚張り合わせの両面コートですが、コーティングの劣化と周辺曇りがあります。
まぁ、出来るだけ清掃をして、本体と絞り羽根も清掃しました。
基本的には良い個体でしたが、チマチマとありましたね。最後にトップ面のPEN-FTとシリアルの色が変色していましたので入れ直して完成です。1969-10月製。