最初から見にくい画像ですみません。北海道のINOBOOさんからグランドセイコー5646-7010が届きました。外観は小キズは多いが風防ガラスは交換されたようでキズがありません。しかし、裏蓋を開けて見ると・・竜頭部分より水の侵入があって、回転錘など、かなり腐食が進んでいます。
状態は全くの不動です。テンプをアシストしても、トルクが伝わっていませんね。
当然アンクルにもトルクが掛かっていません。ゼンマイ切れは無いため、途中の輪列に問題がありそうです。
ここで気になったのは、アンクル受です。アンクル部の切り欠きがパーツリストの絵と違い、LMロードマチック(6振動)に似ています。留めネジのスリ割りにキズがあるのでちょっと心配です。
パーツリストによれば、KSとGSのアンクルは共に301561で共通となっています。LMは301560と異なります。腐食汚れやホコリが多数付着しています。
ガンギ車251561の状態も良くありません。腐食とホコリの付着。
分解のうえで部品の摩耗具合をチェックしました。摩耗が進んでいるようです。その他、ハック規正バネの紛失がありました。
同じような画像が続きますけど・・GSだからと言って、良好なメンテナンスを受けて来たとは限りませんね。この個体は過去に1度ぐらいのO/Hでしょう。とにかく、汚れ方が半端ではなく、何度も超音波洗浄を繰り返してやっと画像の状態。致命的な欠点は無いのですけど、ホゾは摩耗気味ですね。油切れのまま使用されていたということ。輪列をすべてセットしたところ。
受けを載せました。これが欠品していたハック機能のための規正バネ。手持ちから追加しておきます。
腐っても鯛。けな気にテンプを載せた瞬間に再び動き始めました。あ~良かった。
ひっくり返し。56系の欠点である曜日早送りの揺動レバーは珍しいことに生きていました。その他も特に問題は無く、注油をしながら組み立てて行きます。
天真の摩耗がありますね。まぁ、このぐらいが精一杯のところでしょう。
機械は一段落なのでケースに掛かります。一見、そこそこに見えたケースですがダメですね。風防ガラスがきれいなので程度が良く見えたのでした。ということは風防ガラスは交換されているということ。
ベゼルは何度も開けられた形跡があるので、風防ガラスは数回交換されているのでしょう。しかし、ベゼルの嵌合部が錆付いていて簡単には外れませんでした。ステンレスでも、汚れが詰まって酸素が遮断すれば、酸化膜が形成出来ず錆が発生してしまいます。
電動のリューターを使いにくいケースなので、一日掛けて手磨きをしました。荒研磨を終えた状態。
研磨を終えて洗浄をしたところ。ゴムパッキンは少し粘っています。
ベゼルを圧入して風防ガラスを取り付けたところ。元の状態よりは良いと思います。さて、機械に文字盤と針を取り付けなければ・・
セイコーに多いシルバー系の文字盤ではなく、アイボリー系の文字盤は品を感じます。細くて黒い長針がシャープな印象です。ただし、秒針は軸部は高級機の作りで良いのですが少し短い気がしますね。オリジナルかは不明。
最後に自動巻きの一番仲介車を付けます。仲介車押エの裏表に組まれていました。
一番腐食が激しかったのが回転錘です。腐食を研磨して洗浄とベアリングへの注油をして取り付けました。
諏訪精工舎製の56系グランドセイコーは当時の発売価格は44.000円だったようですね。(高っ)5姿勢を調整して出荷された個体番号入りの機械ですが、残念ながら天真の摩耗があって表裏の姿勢差は大きめに出ます。しかし、日差は数秒以内には入ると思います。1972年7月製と、クォーツ時計も発売されつつ機械式自動巻腕時計の最後を飾る最高級機です。裏蓋のメダリオンは完璧に残っているのはラッキーですね。