今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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お父様の形見のPEN-Fを復活させるの巻

2013年10月18日 23時09分52秒 | インポート

Img_283531_2 お父様の形見のPEN-F #2292XXだそうです。前回のFとほぼ同時期の製造ですね。お父様はニコン党だったそうですが、PEN-Fだけはデザインが好きで別格だったとのことです。このパターンは多いでしょうね。グッドデザイン賞受賞ですからね。状態は、大切に所有された個体で、程度はよろしいですが、フリクションの増大でレンズを装着するとフリーズしてしまいます。

Img_283655_2 ご覧のように、リターンミラーが止まった状態ですね。

Img_283744 観察すると、基本的に内部は未分解ですが、何故か、ファインダーのピント再調整を受けています。

Img_283857 全て分解洗浄で組立てて行きます。PEN-Fでは、スプロケットはアルミ製の黒アルマイトが多いですが、この個体はFTと同じ樹脂製が使われています。分解交換を受けた形跡はありませんので、工場で組まれたものと思います。

Img_283988 巻上げ関係の組立が終りました。スムーズに作動していますね。

Img_2842461 ちょっと時間が空きました。いえね、スローガバナーの調子が出ず、低速が不調だったのです。PEN-F(FT)は組み立てには知恵の輪のような部分がありますが、シャッターユニットをダイカスト本体に出し入れする時には↓のコネクティングロットが干渉してスムーズにセット出来ません。ちょっとした入れ方なのですが、この頃のダイカスト本体は、干渉する部分を少し削って、組立しやすいように改良されています。それでも干渉しますが・・

Img_2848661 で、低速不調ですが、画像はハンマーが↑のレバーに当って停止しているBの状態です。ハンマーに叩かれたレバーがスローガバナーを作動させます。しかし、ガバナーは時計と同じ構造なので、中には調子の出ないユニットもあります。この個体は、ハンマーを分離した形跡がありますので、過去にシャッターに関する不具合で修理をした可能性があります。スローガバナーの一番下の部分がガンギ車とアンクルで、正確な秒時を生み出す部分です。

Img_284949 付属のレンズはF用38mmと100mmですが、まず、38mmをメンテナンスします。マウントベース部を分離すると、ヘリコイドグリスが変質して流化したものが接合部やシャッター羽根にも付着しています。

Img_285157 こちらの接合部にも流れていますね。絞りレバー部から羽根に浸透して行きます。

Img_285252 結局、これらの部品をすべて洗浄脱脂することになります。レンズはあまり使用されてはいませんが、後群前のコーティングは劣化しています。

Img_285317 本体と38mmが完成。殆ど使用感はない大切にされた個体ですね。快調な作動を回復しています。

Img_285426 最後に残った100mm f3.5ですが、こちらの状態はかなり良くないです。ご自身でも分解されていた形跡があります。レンズ曇り、ヘリコイドグリス抜けと画像のように絞り羽根に油だけでなく、絞りが正五角形にならず、これ以上に絞ることが出来ません。何か問題があるのです。

Img_285575 絞り羽根をセットしているビスが内部で脱落していました。これでは正確な絞りになりません。その状態で使われたようで、絞り羽根の1枚に偏磨耗があります。すべて分解して脱脂をします。

Img_285639 絞り機構を洗浄して清掃したレンズを組み込んであります。ヘリコイドグリスを交換した鏡胴部を取り付けます。

Img_285877 100mmは非常に良い状態に回復しました。当時は、カメラ本体と38mm+100mmの組合せで使われることが多かったようですね。私は、腕時計の修理も行っていますが、両方とも息の長い機械ですから、適切なメンテナンスをすれば、世代を超えて使えるということは素晴らしいことだと思っています。お父様が感じたと同じシャッターを押す緊張感を味わって頂きたいと思います。

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